MVPレースが最終盤に入ったこのタイミングで、少し変わった角度から一石が投じられました。元WNBAプレーヤーのシドニー・コルソンが、Yahoo Sportsの番組で今季のMVPにエイジャ・ウィルソンを挙げ、その理由として「greatness fatigue」、直訳すれば「偉大さへの飽き」という言葉を持ち出したのです。数字でも実績でも文句のつけようがない存在が、なぜ毎年のように議論の的になるのか。この一言は、票を投じる側の心理そのものを突いた指摘だと感じました。
26.0得点9.5リバウンド、数字は5個目を後押ししています
ClutchPointsが伝えた内容によれば、ウィルソンの今季平均は26.0得点9.5リバウンド3.2アシスト2.0ブロック、フィールドゴール成功率52.1%、3ポイント成功率40.7%です。得点とリバウンドの水準もさることながら、注目したいのは3ポイントの40.7%という数字でしょう。インサイドを主戦場にするビッグマンがこの成功率で外を打てるということは、相手の守備をゴール下から引き剥がせるということでもあります。ペイントを空けられるかどうかは、そのままチーム全体のオフェンス効率に跳ね返ります。
コルソンの発言はシンプルでした。「私のMVP? たぶんエイジャです」と切り出したうえで、WNBAには偉大さに対する飽きのようなものがあり、それが評価をゆがめているのではないか、という趣旨のことを語っています。
4度の受賞が生んだ、静かな逆風
ウィルソンはすでにMVPを4度受賞しています。今季もし選ばれれば5個目です。これだけの回数を重ねると、有権者の側に「今年こそは別の誰かに」という空気が生まれやすくなります。コルソンが言う飽きとは、おそらくこの空気のことです。実際、今季のMVP論争ではリンクスのルーキーであるオリビア・マイルズ、フィーバーのケイトリン・クラーク、そして得点を量産し続けるケルシー・ミッチェルの名前が並び、議論は完全に多極化しています。
ただしコルソンは、対抗馬たちを否定したわけではありませんでした。ミッチェル、クラーク、マイルズといったガード陣はこれから何度も受賞するチャンスがあるとしたうえで、それはウィルソンを候補から外す理由にはならない、という立場を取っています。将来の受賞見込みと今季の働きを混同してはいけない。これは投票の議論として、かなり本質的な整理だと思います。
ガード全盛の時代に、センターの働きをどう測るか
ここ数年のWNBAは、外角の精度とハンドリングを備えたガードが試合の主導権を握る流れが強まっています。マイルズの台頭もクラークの存在感も、その流れの上にあります。一方でウィルソンのような、ゴール下で守り、リバウンドを制し、そのうえで外まで打てるビッグマンの価値は、スタッツシート上では派手に見えにくいところがあります。ブロック2.0という数字が、20点台後半の得点と同じ熱量で語られることは少ないはずです。
さらにエーシズには、ナリッサ・スミスがシーズン残りを欠場するという痛手が重なりました。インサイドの手駒が減れば、ウィルソンにかかる負担は当然増えます。残り試合でその負担を引き受けながら数字を維持できるなら、それはむしろMVP論争における最も強い材料になるのではないでしょうか。条件が悪くなった状態でのパフォーマンスこそ、価値の証明になりやすいからです。
残り1か月、判断材料はコートの上にあります
2026年のレギュラーシーズンは9月24日に終了する予定です。つまりMVPの議論に影響を与えられる時間は、残り1か月ほどしかありません。ウィルソンがエーシズをどこまで押し上げるのか、マイルズがルーキーイヤーの勢いを保てるのか、クラークとミッチェルがフィーバーをどの順位で終えるのか。順位表の並びは、最後の数試合で簡単に入れ替わります。
コルソンの「偉大さへの飽き」という指摘が的を射ているかどうかは、投票結果が出るまで分かりません。ただ、この言葉が出てきたこと自体が、今季のMVPレースの難しさを物語っています。まずはエーシズの残り試合を追いかけるところから、答え合わせを始めたいところです。

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