オグウミケ

6年連続でプレーオフを逃した夏に、女子スポーツ史上最大の1億5000万ドルが骨格を現す転機

 

8月26日、ロサンゼルス郊外のエルセグンドで、スパークスの新しい練習施設に最後の鉄骨が据えられました。建物の骨格が組み上がったことを祝う「トッピングアウト」の儀式です。プレーオフ進出の可能性がその6日前に消えたばかりのチームが、同じ週に女子スポーツ史上最大となる1億5000万ドルの建物を見上げています。この対比こそ、いまのスパークスという球団を一枚で説明していると感じました。負けている現在と、莫大な額が投じられた未来が、同じ敷地の上に並んでいるのです。

1億5000万ドルと5万5000平方フィートに詰め込まれたもの

球団が2025年9月に公表した計画によれば、施設の延べ床面積は5万5000平方フィート、およそ5100平方メートルです。設計は世界的な建築事務所ゲンスラーが担当し、内装とビジネス部門のスペースは女性が率いる設計事務所スタジオ・ブリッツが手がけます。土地の取得と開発管理にはトランスウェスタンのスポーツ・エンターテインメント部門が入りました。1億5000万ドルという金額は、女子スポーツにおける単一チームへの投資額として史上最大です。

中身も数字以上に踏み込んでいます。WNBA公式規格のコートが2面、チームの一体感を意図した円形のロッカールーム、ハイドロセラピーとスパスイート、リカバリーと予防・リハビリのための屋外スパプール、専用の仮眠室、ヨガや瞑想に使えるウェルネススペース。全面的に開く可動式のドアと大きな窓で外光を取り込み、太平洋と山並みを望むパノラマまで用意されます。屋内と屋外をつないだ選手専用のサンクチュアリはリーグ初とされ、完成は2027年シーズンに間に合う見込みです。

エーシズ、ストーム、マーキュリーに遅れた10年

3度の優勝を誇る名門でありながら、スパークスは長く自分たちの練習拠点を持てずにいました。その間にエーシズ、ストーム、マーキュリーが先に施設を整え、差は年々見えやすくなっていきます。球団社長のステイシー・ジョンズはこの日、女子スポーツでは試合会場も練習施設も自前で持てないチームが多いと前置きしたうえで、「私たちのものである家を持てば、使い方も使う時間もすべて自分たちで決められます」と語りました。設備の話ではなく、決定権の話だという整理です。

儀式で最後の鉄骨を上げる前にスピーチしたのがネカ・オグウミケでした。選手が自分たちの未来の家の壁の形に意見を反映できたことが何より意味を持つ、という趣旨の言葉を残しています。そのオグウミケは8月19日、今季限りでの引退を表明しました。15年間で11度のオールスター、通算7879得点はリーグ歴代4位、3565リバウンドは歴代3位、2016年からはWNBPA会長として選手側の交渉を率いてきた人です。皮肉なことに、彼女がこの建物で選手として練習する日は来ません。それでも壇上に立ったという事実が、この施設の性格をよく表しています。

2027年という開業時期が持つ意味

今季のスパークスは8月20日のドリーム戦での大敗でプレーオフ進出が消え、2020年のバブル以来6年連続で秋を迎えられなくなりました。リン・ロバーツHCは就任1年目に21勝23敗と勝ち星を大きく伸ばしましたが、2年目は主力の離脱とディフェンスの崩れが重なり、内容を積み上げられないまま夏を終えます。

その状況で2027年の開業が意味を持つのは、フリーエージェンシーの現場です。選手が移籍先を選べる時代になったいま、リカバリー環境と練習時間の自由度は年俸と並ぶ判断材料になりつつあります。仮眠室や屋外プールは贅沢品に見えて、実際には過密日程を戦い抜くための可用性そのものです。開業を2027年に置いた時点で、球団はその年のオフの勧誘までを射程に入れていると読むのが自然でしょう。もっとも、建物は1勝も運んできません。骨組みが立った同じ週に負けが込んでいるという現実は、施設が完成した後も別の課題として残ります。

WNBAはこの後、FIBAワールドカップのため数週間の中断に入ります。施設のコンセプト動画とレンダリングは球団公式サイトのスパークス・パフォーマンスセンターのページで公開されており、完成予想の内部まで確認できます。骨格が立った今、次に見るべきはこの空間で誰がユニフォームを着るのかという点になりそうです。

引用:https://www.thesportingtribune.com/2026/08/26/sparks-facility-coming

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です