ナカセHC

なぜリンクスは66点で止まったのか──ヴァルキリーズの守備が突きつける秋の脅威

 

ワールドカップによる中断を目前にして、今季のWNBAでいちばん語られるべきチームは、得点ランキングの上位にいる誰かではなく、相手の得点を削り取り続けているゴールデンステート・ヴァルキリーズかもしれません。拡張球団として参入した昨季にいきなりプレーオフへ進み、2年目の今季は2位争いの当事者になりました。しかも勝ち方が派手ではありません。相手が普段どおりのことをできなくなる、という地味で息の詰まる勝ち方です。ボストン・グローブが8月25日に伝えた内容を読んで、この守備は本当に厄介だと改めて感じました。

リンクスを66点に抑えた夜、守備の数字が語ること

象徴的だったのが、月曜に行われた敵地ミネソタ戦です。ヴァルキリーズは球団史上はじめてリンクスに勝ち、リーグ1位のチームを今季自己ワーストの66得点に封じました。ナタリー・ナカセは試合後、リンクスについて「彼女たちが1位なのには理由があります」と語っています。相手の質を認めたうえで、それでも66点に抑えたという事実だけが残る言い方でした。

数字を並べると異常さが見えてきます。今季ここまで、フィーバー、リンクス、ミスティックス、リバティの4チームが、シーズン最少得点をヴァルキリーズ戦で記録しています。さらに37試合のうち、相手がシーズン平均得点に到達できたのはわずか4試合で、内訳はエーシズが2度、マーキュリーとミスティックスが1度ずつです。裏を返せば33試合で相手を平均以下に押し込んだことになります。被得点は1試合あたり76.3点、ディフェンシブレーティングもリーグ1位です。

8月中旬時点のスポーツ・イラストレイテッドの集計でも、被得点76.9点、ディフェンシブレーティング101.4、ハーフコートでの1プレーあたり被失点0.85と、どの角度から切ってもリーグの頂点でした。同時にヴァルキリーズは1試合あたりの3ポイント成功数もリーグ最多です。守って、走って、撃つという設計がきれいに噛み合っています。

拡張1年目との差、そして時代への逆行

特筆すべきは、この守備が今季のリーグの流れに真っ向から逆らっている点です。今季はオフェンシブレーティングが歴史的な高水準にあり、リーグ史上トップ10に入るチーム攻撃効率のうち6つが今季のものだと報じられています。攻撃の時代に、あえて守備で頂点を取ったチームがヴァルキリーズだということになります。

昨季の彼女たちは、拡張球団としてWNBA史上初めて初年度にプレーオフへ到達したこと自体が話題でした。つまり「よく健闘した」という文脈です。今季はそこから一段跳んで、8月25日の記事掲載時点で26勝11敗、リーグ2位という位置につけました。中身も変わっています。ベロニカ・バートンは今季、アシスト対ターンオーバー比3.26というWNBA史上最高の数字を積み上げ、ギャビー・ウィリアムズやジャネル・サラウンといった国際色豊かな戦力が中軸に座りました。個の爆発力で押し切るのではなく、5人でボールを追う設計が2年目で完成に近づいた印象です。

2位シードの行方と、エーシズという唯一のねじれ

ただし、ここからが難しいところです。グローブの記事の時点で残り7試合、2位シードを確定させるには6勝が必要という状況でした。しかも直後を走るエーシズとは今季の対戦成績が0勝3敗で、同率になった場合のタイブレークを握られています。守備でリーグを支配しながら、特定の1チームにだけ勝てないというねじれを抱えたままポストシーズンへ向かうわけです。

一方で、相性の良さも明確です。ドリームは今季ヴァルキリーズに0勝3敗、リバティは0勝2敗で、リバティは5月に70点、6月に67点に抑え込まれています。プレーオフの組み合わせ次第で、この相性がそのまま結果に直結する可能性は低くありません。2位から8位までがおよそ4ゲーム半の中にひしめく今季は、シード1つの差が「戦いたくない相手」を回避できるかどうかを決めます。ヴァルキリーズにとっての最良の絵は、2位を確保して本拠地ボールハラの利を2回戦まで握り、決勝までエーシズと当たらない形でしょう。

もう一つ、独自に注目したいのは中断の使い方です。守備を軸にするチームは約束事が細かく、故障で1枚欠けるだけで効き目が落ちます。中断期間は代表招集組にとって休養にはなりませんが、残るメンバーにとっては体を戻す時間になります。守備の完成度をどこまで保ったまま再開日を迎えられるか。ここが2位シード争い以上に、彼女たちの秋を左右すると見ています。

再開後の見どころと観戦情報

WNBAは8月31日からFIBA女子バスケットボールワールドカップ2026のために中断に入ります。本大会はドイツ・ベルリンで9月4日から13日まで開催され、日本代表はグループAでマリ、ドイツ、スペインと同組です。ヴァルキリーズにも代表に招集される選手がおり、ベルリンでの出来映えがそのままリーグ再開後のコンディションに跳ね返ります。

レギュラーシーズンは9月下旬まで続き、ヴァルキリーズは9月24日に全日程を終える予定です。中断明けの数試合で2位が確定するのか、それともエーシズに逆転を許すのか。守備がリーグ最高であることは、もう疑いようがありません。あとはその守備が、最後まで戦い抜くだけの厚みを持っているかどうかです。

引用:https://www.bostonglobe.com/2026/08/25/sports/wnba-playoffs-golden-state-valkyries/

参考:https://www.si.com/wnba/deciding-contenders-and-pretenders-of-wnba-playoff-picture

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