サンアントニオ・スパーズが、球団史上かつてない快進撃を見せています。2025-26シーズンの開幕から5連勝を飾り、これはティム・ダンカンやデビッド・ロビンソンといったレジェンドたちの時代にも達成できなかった記録です。その中心にいるのが、ドラフト1位指名のビクター・ウェンバンヤマ。わずか3年目にして、彼はスパーズの歴史に新たな1ページを刻み始めています。
ティム・ダンカン時代でも成し遂げられなかった快挙
スパーズといえば、1999年から2014年まで5度のNBAチャンピオンに輝いた名門です。グレッグ・ポポビッチHCのもと、ダンカン、トニー・パーカー、マヌ・ジノビリという「ビッグスリー」が王朝を築き上げました。しかし、そんな黄金期でさえ、開幕5連勝という記録は達成できませんでした。
1990年代にロビンソンが君臨していた時代も同様です。MVPを獲得し、ディフェンスの要として君臨した彼ですら、シーズン序盤にこれほどの勢いを生み出すことはできませんでした。つまり、今回のウェンバンヤマ率いるスパーズは、文字通りフランチャイズ史上「最高のスタート」を切ったのです。
10月31日時点で、5試合以上を戦って無敗を保っているのは、スパーズと前年度王者のオクラホマシティ・サンダー(6勝0敗)のみ。この事実は、スパーズが単なる「好調なチーム」ではなく、西カンファレンスの優勝争いに食い込む可能性を秘めた本物の強豪であることを示しています。
ウェンバンヤマの圧倒的な支配力
ウェンバンヤマは今季、全5試合でダブルダブルを記録しています。身長7フィート4インチ(約224cm)という規格外の体格を持ちながら、ガードのような器用さとセンスを兼ね備えた彼は、まさに現代バスケットボールの究極形です。
10月30日のマイアミ・ヒート戦では、27得点18リバウンド6アシストという圧巻のスタッツを残しました。しかし、それ以上に注目すべきは、開幕5試合を通じた平均値です。31.0得点、13.8リバウンドという数字は、リーグ全体を見渡してもトップクラス。得点とリバウンドの両方でチームを牽引する選手は、NBAでもごく限られた存在です。
ウェンバンヤマの真価は、ただスタッツが優れているだけではありません。彼はディフェンスでも相手チームの攻撃を抑え込み、トランジションでは自らボールを運んでチャンスを創出します。オフェンスとディフェンスの両面で、チームの核として機能しているのです。
過去のスパーズのエースたちと比較しても、ウェンバンヤマの多才さは際立っています。ダンカンは堅実なポストプレーとディフェンスで勝利を積み重ねましたが、ウェンバンヤマはそこにペリメーターからのシュート力と、コート全体を見渡すビジョンを加えています。まさに「次世代のスーパースター」と呼ぶにふさわしい存在です。
脇を固める若手たちの急成長
ウェンバンヤマだけがスパーズの強さではありません。今季のチームは、若手選手たちの台頭によって厚みを増しています。
ステフォン・キャッスルは、チーム2番目の得点源として平均18.3得点6.0アシストを記録。落ち着いたプレーで、ウェンバンヤマを支えています。デビン・ヴァッセルも平均16.8得点と安定した数字を残し、スパーズの攻撃に多様性をもたらしています。
さらに注目すべきは、ディラン・ハーパーの存在です。彼は最近、NBAの歴史に名を刻む記録を達成しました。ルーキーとして、これほど早い段階でインパクトを残せる選手は稀です。スパーズのフロントオフィスが、ドラフトや補強で若手を的確に獲得してきた成果が、今まさに花開いているのです。
過去のスパーズの黄金期は、ダンカンを中心としたベテラン主体のチームでした。しかし今のスパーズは、若さとエネルギーに溢れています。これは、ポポビッチHCがこれまで築いてきた「堅実なチーム作り」とは異なるアプローチです。しかし、その結果は明らかに成功しています。
西カンファレンスの勢力図を塗り替える可能性
今季の西カンファレンスは、サンダー、デンバー・ナゲッツ、ミネソタ・ティンバーウルブズなど、強豪がひしめき合っています。その中で、スパーズがどこまで戦えるかは、シーズン序盤の段階では未知数でした。
しかし、開幕5連勝という結果は、スパーズが単なる「プレーオフ進出を目指すチーム」ではなく、優勝争いに絡む可能性があることを証明しました。特に、ダラス・マーベリックスやニューオーリンズ・ペリカンズといった強豪を相手に勝利を重ねている点は、チームの実力を裏付けています。
ウェンバンヤマのようなスーパースターがいるチームは、プレーオフでさらに強さを発揮する傾向があります。彼がこのままのペースで成長を続ければ、スパーズは今季のダークホースとして、西カンファレンス全体に衝撃を与える存在になるでしょう。
もちろん、シーズンはまだ始まったばかりです。82試合という長丁場の中で、怪我や疲労、相手チームの研究など、乗り越えるべき壁は数多くあります。しかし、今のスパーズには、それを跳ね返すだけの勢いと自信があります。
新指揮官ミッチ・ジョンソンが導く新時代
今季のスパーズを率いるのは、ミッチ・ジョンソンHCです。2025年5月、29シーズンにわたってチームを率いたグレッグ・ポポビッチが健康上の理由でHCを退任し、バスケットボール運営部門の社長に就任。ジョンソンが正式にHCに昇格しました。
ジョンソンは2019年からスパーズのアシスタントコーチを務め、2024年11月にポポビッチが脳卒中で離脱した際には、シーズン残り77試合で代行HCとして31勝45敗の成績を残しました。スパーズ組織に10年在籍し、2018年にはGリーグのオースティン・スパーズでチャンピオンシップを獲得した実績があります。
ジョンソンHCのもと、スパーズは堅実なディフェンスとチームバスケットボールというポポビッチ時代の哲学を受け継ぎながらも、ウェンバンヤマという圧倒的な個の力を中心に据えた新しいスタイルを確立しつつあります。38歳という若さでHCに就任したジョンソンが、若手中心のチーム作りで開幕5連勝という快挙を成し遂げた点は、彼の指導力の高さを証明しています。
まとめ
サンアントニオ・スパーズは、ビクター・ウェンバンヤマという稀代のスーパースターを中心に、フランチャイズ史上初の開幕5連勝を達成しました。これは、ティム・ダンカンやデビッド・ロビンソンといったレジェンドたちですら成し遂げられなかった快挙です。
ウェンバンヤマの圧倒的な個人成績に加え、ステフォン・キャッスル、デビン・ヴァッセル、ディラン・ハーパーといった若手たちの成長が、チームに厚みをもたらしています。今季のスパーズは、西カンファレンスの勢力図を塗り替える可能性を秘めた、真の強豪へと生まれ変わりつつあります。
シーズンはまだ序盤ですが、この勢いが続けば、スパーズは久々のチャンピオンシップ争いに名乗りを上げるかもしれません。ウェンバンヤマが切り開く新時代のスパーズから、目が離せません。
引用: yardbarker.

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