WNBAはリーグ創設30周年という節目のオールスターウィークエンドを、シカゴのユナイテッドセンターで盛大に開催しました。ところがコート上の華やかなお祭りムードとは裏腹に、週末を通じて最大の話題をさらったのは、リーグを率いるキャシー・エンゲルバートの去就でした。現地時間7月25日に行われた恒例の記者会見で、「2027年シーズンの開幕時もコミッショナーの職にとどまっているつもりか」という直球の質問に、彼女ははっきりとした答えを返さなかったのです。約2分にわたって職務の継続を語りながら、イエスともノーとも口にしなかったその姿は、かえってリーグ内でくすぶる不信を際立たせてしまいました。
会見で語ったこと、そして語らなかったこと
エンゲルバートは去就を問われると、「私はこの驚異的な成長期にリーグの舵取りを任されていることを、本当に幸運に思っています」と切り出し、選手たちがコートで体現してきた価値観を称えたうえで、これまで通り職務を全うし戦略を実行していくと述べるにとどめました。数字だけを見れば、その実績は決して悪くありません。2019年の就任以降、2度の労使協定(CBA)交渉をまとめ、直近の合意では選手年俸の歴史的な引き上げを実現しました。放映権契約も11年総額でおよそ31億ドル、年平均2億8100万ドルと従来の約6.5倍にまで膨らみ、今季は観客動員・視聴数ともに記録を更新しています。オールスター当日のチケットは開催前に完売し、ユナイテッドセンターの最安値は355ドルと、前年インディアナポリスの約5倍まで高騰しました。会見では2027年から集中管理型のリプレイセンターを導入する方針や、ラスベガス・エーシズのサラリーキャップ違反疑惑に関する独立調査が「証拠不十分」で処分なしと結論づけられたことも発表されています。
好調な数字の裏で強まる「適任ではない」の声
それでも去就が繰り返し問われるのは、ビジネス面の成功と現場の信頼が必ずしも一致していないからです。ESPNは20人以上のオーナーや幹部、選手、関係者に取材し、事業を成長させた手腕は認めつつも、いまリーグが直面する課題を乗り越える適任者ではないという空気が広がっていると報じました。複数の球団首脳は、2026年シーズンがエンゲルバート体制の最後になる可能性が高いとの見方を示しているといいます。この質問をかわすのは今回が初めてではありません。今年4月のドラフトでも同じ問いを受け、その際は「同じことを男性にも尋ねますか」と反発してみせました。上司にあたるNBAコミッショナーのアダム・シルバーも続投について明言を避け、引き続き話し合っていくと述べるにとどめています。NBAはWNBA株式の42%を保有しており、その影響力は無視できません。アリッサ・トーマスがケイトリン・クラークへの行為で受けた出場停止処分は、シルバーが働きかけたものだと一部で報じられ、リーグの主導権をめぐる不透明さを印象づけました。
CBA後の主導権争い、30周年リーグの分岐点
筆者が最大の焦点だと考えるのは、新CBA後のリーグを誰の手で動かすのかという点です。エンゲルバートはデロイトのCEOから転身した経営のプロであり、収益面ではリーグを別次元へと押し上げました。その一方で、選手を主役としてきたWNBAにおいて、当の選手たちとの距離感が繰り返し問題視されてきたのも事実です。4度のMVPに輝くエイジャ・ウィルソンが、エンゲルバートとの関係を「賞を手渡してくれるときだけ」と語ったことは、両者の温度差を象徴しています。選手会長のネカ・オグウミケは中立的な立場を崩さず、決めるのは自分たちではないとしつつも現体制を受け入れる姿勢を見せました。去就を明言しない今回の対応は、リーグが好調だからこそ、かえって「このままでいいのか」という問いを大きくしているように映ります。オフシーズンにかけて、NBA側との協議がどう着地するのかが最大の見どころになりそうです。
オールスター明け、後半戦の焦点
オールスターの熱狂が過ぎれば、リーグはすぐにレギュラーシーズンの後半戦へと戻ります。プレーオフ進出争いが本格化し、トレード期限も近づくなかで、コート上の勝負とコート外のガバナンス問題が同時並行で進んでいくことになります。エンゲルバートの去就がいつ、どのような形で決着するのか──30周年を迎えたWNBAにとって、この夏は節目の分岐点になりそうです。今後の試合日程や中継情報は、リーグ公式サイトや各中継局の案内をあわせてご確認ください。
引用:https://www.espn.com/wnba/story/_/id/49451109/embattled-wnba-commissioner-engelbert-mum-job-status-27

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