ヨキッチ ナゲッツ

たった1200万ドルがナゲッツを縛り上げた──サンダーの奇襲オファーをマッチして単独の第2エプロン入り、税負担は1億ドル級へ

 

7月27日、ナゲッツがサンダーの提示したスペンサー・ジョーンズへの2年1200万ドルのオファーシートをマッチし、制限付きFAの若手ウイングを引き留めました。金額だけを見れば、優勝を争うチームにとっては誤差の範囲に見えます。ところがこの1200万ドルは、デンバーをリーグでただ一つの「第2エプロン超え」球団へと押し上げてしまいました。王者サンダーが仕掛けたのは選手の引き抜きではなく、ライバルの財布そのものを縛り上げる一手だった、というのが筆者の第一印象です。

マッチされた1200万ドルの中身と、サンダーが狙った穴

ジョーンズは25歳、スタンフォード大から未ドラフトでナゲッツに拾われた苦労人です。2024-25シーズンは2ウェイ契約でスタートし、2026年2月に本契約へ切り替わりました。昨季は64試合に出場して37試合で先発、平均22分で5.5得点3.3リバウンドという数字自体は地味ですが、価値の核心は3ポイントにあります。144本を放って成功率40%。さらにプレーオフでは13本中9本を沈め、成功率は69%に達しました。ウルブズとの6試合では平均24分で6.5得点と、役割を確実にこなしています。

サンダーがこの伏兵に2年1200万ドル、しかも全額保証という条件を差し出した理由は明快です。オクラホマシティはこのオフに、3ポイントを支える主力を続けざまに放出しました。372本を試投したルー・ドート、270本のアーロン・ウィギンズはホークスへ、成功率42%のアイザイア・ジョーはピストンズへ。いずれも贅沢税ラインを下回るためのコスト圧縮でした。安価で撃てるウイングという穴を、まさに同じ条件で埋められる相手がジョーンズだったわけです。ナゲッツは54勝28敗で西カンファレンス3位に入ったチームであり、その控えの主力を奪う話でもありました。

1200万ドルが「3200万ドルの追加請求書」に化けた理由

マッチの決断が重かったのは、現行の労使協定における課税構造のためです。ESPNの報道によれば、ジョーンズを残したことでデンバーの想定税額はおよそ3600万ドルから6800万ドルへとほぼ倍増し、増加分は約3200万ドルに達します。年俸1200万ドルの契約を守るために、球団は倍以上の税を上乗せで払う計算になりました。しかもデンバーはリピータータックス(常習的な税超過への加算)の対象でもあり、NBC Sportsは最終的な税額が1億ドルを超える可能性にまで言及しています。

第2エプロンは金額の問題にとどまりません。サイン&トレードで他球団から選手を受け取れない、中間層例外が使えないといった編成上の縛りが一気にかかります。現在この線を越えているのはナゲッツだけです。昨夏にクリスチャン・ブラウンへ5年1億2500万ドルを投じ、ヨキッチを中心とした優勝ウインドウを維持するために積み上げてきた投資が、いよいよ制度の天井に触れたということでもあります。

次の火種はペイトン・ワトソン、そして「必ず来るサラリーダンプ」

デンバーにはもう一人、制限付きFAのペイトン・ワトソンが残っています。昨季は54試合で40先発、平均14.6得点4.9リバウンド2.1アシスト1.1ブロック、3ポイントは197本で41%。ジョーンズよりはるかに大きな役割を担った23歳です。マーク・スタインによれば球団の当初提示は4年7000万ドル規模で、本人側が求める年俸2500万ドル超とは大きな開きがあります。同じ球団が1年前にブラウンへ年平均2500万ドルを払った事実を思えば、本人が納得しにくいのは想像に難くありません。

ワトソンの対抗手段は、650万ドルのクオリファイングオファーを受けて1年だけ戦い、翌夏に完全FAとなる道です。スタインは本人がこの選択肢を検討中だと伝えています。ただし保証された数千万ドルを自ら手放す賭けであり、負傷リスクを考えれば代償は小さくありません。クリッパーズやバックスの関心も報じられていますが、第2エプロンを越えたデンバーはサイン&トレードで選手を受け取れないため、話を成立させるには先に給与を落とす必要があります。

筆者が注目したいのは、クロエンキー家がこれまで第2エプロン超えでシーズンを終えた前例を持たないという点です。つまり、どこかで必ず整理のトレードが動きます。ジョーンズを守ったこと自体は正しい判断でも、その代償は別の場所で支払われる。オフシーズンの静かな時期に、デンバー発の中規模トレードが飛び出す確率は決して低くないと見ています。

2026-27シーズンに向けて

サンダーは3ポイントの補充先を改めて探す必要があり、デンバーは第2エプロンからの脱出という宿題を抱えました。西カンファレンスの上位争いは、コート上より先に会計上の綱引きで動き出しています。日本からは各種配信サービスでの視聴が中心になりますが、開幕前の残り2カ月、ロスター整理の続報から目が離せません。

引用:https://sports.yahoo.com/nba/article/nuggets-match-2-year-12-million-offer-to-retain-spencer-jones-after-thunder-attempt-to-land-him-in-free-agency-173009048.html

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