ソフィー・カニンガム

「あなたたちは正気じゃない」共同オーナーがコートサイドのファン2人に詰め寄り、シアトル・ストームが球団として謝罪した異例の一夜

 

WNBAの試合会場で、球団の共同オーナーがコートサイドの観客2人に詰め寄ったとされる一件が表面化し、シアトル・ストームが球団として謝罪する事態になりました。舞台は日本時間7月29日午前に行われたフィーバー戦。コート上ではクラークが32得点を挙げ、フィーバーが105-95で勝ち切った試合でしたが、翌日に話題をさらったのはスコアではなく客席で交わされた言葉でした。第一印象を正直に言えば「ここまで来てしまったのか」という重さです。選手やコーチではなく、球団を所有する側がファンと衝突したという構図は、リーグの歴史でもそう多くありません。

コートサイドの手作りボードと、共同オーナーの一言

問題になったのは、クライメット・プレッジ・アリーナのコートサイドに座っていた女性2人が掲げた1枚のボードです。そこには、フィーバーのカニンガムに向けて「女の子たちのために声を上げてくれてありがとう」という趣旨の言葉が書かれていました。2人は番組『Undivided』のホストであるブランディ・クルーズに対し、ある女性から「あなたたちは正気じゃない」と言われたと説明しています。クルーズはその女性を、ストームの少数株主オーナーであるセレステ・キートンだと特定しました。

これを受けて動いたのは筆頭オーナーのジニー・ギルダーです。Front Office Sportsに寄せた声明で「昨夜の試合に来場していた2人のファンに対し、当球団の共同オーナーの1人が発言したことを把握しています」と事実関係を認め、起きたことについて謝罪しました。ストームの試合に来る人は誰もが歓迎されていると感じるべきだ、という趣旨の言葉も添えています。同メディアによれば、NBAとWNBAの広報はコメント要請にすぐには応じていません。

発端は1週間前のESPN記事、そしてアリーナの外で起きていたこと

そもそもの発端は、1週間前に公開されたESPNのカニンガム特集でした。この記事の中でカニンガムは、トランスジェンダーの女性が女子スポーツに参加することに反対する立場を示しています。本人は「トランスを憎んでいると言われるが、一度もそう言っていない」と反論しており、この発言には批判と支持の両方が集まりました。

そして試合当日、アリーナの外には数十人規模の人が集まっていました。カニンガムを支持するとともに、ワシントン州でトランスジェンダーの生徒が女子競技に参加することを禁じる州民発議638号と011号を推進する目的だったと報じられています。試合中、カニンガムは出場した瞬間と、その日最初のフリースローの場面でブーイングを浴びました。一方でコートサイドには「この合衆国に憎しみはいらない」と書かれたボードを掲げるファンもいて、客席そのものが二分されていた形です。

フィーバー側は試合後、クラークとカニンガムを取材に出しませんでした。球団は広報を通じて、この集まりについて事前に把握しておらず、主催者との接触もなかったという説明を出しています。

「オーナーがファンに詰め寄る」ことの重さと、これから

整理しておきたいのは、政治的な争点そのものの是非と、今回の一件の性質は別だということです。州民発議の中身をどう評価するかは人によって違いますし、この記事で結論を出す話でもありません。ただ、チケットを買って会場に足を運んだ観客に対して、球団の所有者側が詰め寄ったとされる構図は、スポーツビジネスの観点では明確にまずいものです。だからこそギルダーは即日で謝罪に動いたのだと考えられます。

気になるのは、キートン本人への処分や本人からの説明が、現時点で何も示されていない点です。リーグの広報が沈黙している以上、この件が球団レベルの謝罪で幕を閉じるのか、それともリーグの手が入るのかはまだ読めません。ストーム側は会場運営や警備と連携して全員が安心して来場できる環境を整える姿勢を強調していますが、具体的な再発防止策までは公表されていません。

もう一つの論点は、選手が社会的な発言をした後、その選手が訪れる会場までが主張の「場」として消費されていく流れです。カニンガムは指差しのミームで一気に知名度を上げた人気者でもあり、彼女の言葉は良くも悪くも遠くまで運ばれます。フィーバーが「事前に知らなかった」とわざわざ声明を出したのは、選手個人の意見と球団の立場を切り離しておきたいという強い意思の表れでしょう。今後、他の会場でも同じような掲示や集まりが起きる可能性は十分にあり、リーグとしての線引きが問われる局面が来るかもしれません。

関連情報

フィーバーはこの試合で105得点を挙げ、今季何度目かの100点超えを記録しました。リーグ全体では日本時間8月3日未明に迫るトレード期限に向けて動きが加速しており、各球団のロースター編成が佳境を迎えています。カニンガムとクラークが今回の件について口を開くのか、キートンへの対応が示されるのか。次のフィーバー戦の会見が一つの節目になりそうです。

引用:https://frontofficesports.com/seattle-storm-apologize-owner-comments-sophie-cunningham-fans/

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