現地時間8月3日、ブルックリンのバークレイズ・センターで行われたリバティ対ストームの一戦で、サブリナ・イオネスクが静かに大きな線を越えました。この日のアシストはわずか5本です。トリプルダブルでも40得点でもなく、スタッツシートの上ではごく平凡な数字に見えます。それでもESPNインサイツによれば、この5本によってイオネスクは「キャリア最初の200試合で記録したアシスト数」がWNBA史上最多の選手になりました。派手さのない記録ですが、7年かけて積み上げてきたものが一瞬だけ可視化されたようで、筆者にはこれこそイオネスクというプレーヤーの本質を言い当てた数字に思えます。
29分で18得点5アシスト、リバティは95-83でストームを退ける
この試合のイオネスクは29分の出場で18得点5アシスト2リバウンド。フィールドゴールは10本中7本、3ポイントは6本中4本と、効率の面でも文句のつけようがない内容でした。試合はリバティが立ち上がりから主導権を握り、第1クォーターを28-18とリードして折り返します。ストームも食い下がりましたが、後半に地力の差が出て最終的に95-83で勝ち切りました。
チームでは二桁得点が4人並びました。ブリアナ・ステュワートが24得点8リバウンド6アシスト2ブロックとほぼ全部門で貢献し、ジョンケル・ジョーンズが20得点7リバウンド、ポーリーン・アスティエも12得点2アシストを積んでいます。この勝利でリバティは18勝13敗となり、東地区3位。ドリームとフィーバーの背中を追いながら、ミスティックスとスカイを引き離す位置につけました。
記録を伝えたESPNインサイツの投稿はこんな一言で始まっています。「アシストが必要? サブリナ・イオネスクに電話を」。軽い言い回しですが、200試合という長い物差しで測ったときに彼女ほど安定してアシストを重ねてきた選手がいなかった、という事実の方は決して軽くありません。
オレゴンで1000アシスト、プロで200試合──配る才能は最初からあった
イオネスクのパス能力は今に始まったものではありません。オレゴン大学時代には通算26回のトリプルダブルを記録し、これは現在もNCAAの歴代最多記録として残っています。さらにNCAA史上初めて通算2000得点・1000アシスト・1000リバウンドに到達した選手でもあります。得点とリバウンドの間に「1000アシスト」が当たり前のように並んでいるところに、彼女のバスケット観がそのまま出ています。
2020年のドラフト全体1位でリバティに指名されてからの7年は、しかし平坦な道のりではありませんでした。今季にしても、ESPNの報道によれば足と背中の状態に悩まされ、開幕から出場が限られる時期がありました。シーズン序盤の平均得点は本来の水準からかなり落ち込み、復調を待つ声が続いていたのも事実です。それでも200試合という区切りで振り返ると、リーグの誰よりも多くのアシストを配ってきた計算になります。故障で失った時間を差し引いてなお最多という点にこそ、この記録の重みがあると思います。
打てるから配れる──今のリバティにこの記録が効く理由
筆者が注目したいのは、記録が出たタイミングです。18勝13敗という位置は、近年のリバティの強さを知るファンからすれば物足りない数字でしょう。ステュワートとジョーンズという強力なフロントラインを抱えるチームにとって、シュートを打てるガードがどれだけボールを循環させられるかは、そのまま勝敗に直結します。
この日の10本中7本、3ポイント6本中4本という数字は、イオネスクがシュートで警戒される状態を作れていた何よりの証拠です。ディフェンスが彼女に寄れば、ステュワートやジョーンズの周りにスペースが生まれます。5アシストという控えめな数字の裏には、そうした「打てるから配れる」という因果関係が隠れています。逆に言えば、シュートタッチが戻らない時期のリバティが得点に苦しんだ理由も、まったく同じ構造で説明がつきます。
残りシーズン、東地区の3位争いは依然として混戦です。プレーオフのシード順ひとつで初戦の相手が変わることを考えれば、8月の1勝1敗が9月以降の景色を大きく変えます。イオネスクがこのコンディションを維持できるかどうかは、そのままリバティの上限を決める要素になりそうです。
次戦は8月5日、同じストームとホームで再戦
リバティは8月5日、東部時間19時から再びホームでストームと対戦します。同一カードの連戦は片方が修正を加えてくる分だけ内容が変わりやすく、相手が今度はイオネスクにどう当たってくるのかを見る格好の機会になります。記録の翌戦でどんなパフォーマンスを見せるのか、そして復調の流れを本物にできるのか。ブルックリンの8月から目が離せません。

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