アジア ウィングス

家族を狙った1通のメッセージで、ウィングス番記者が現場から消えました──「ファンを名乗る人物」が女子バスケに残した最悪の前例

 

WNBAの取材現場から、1人の記者が静かに姿を消しました。Ballislifeなどでダラス・ウィングスを追い続けてきたグラント・アフセスが、家族の安全を脅かすメッセージを受け取り、WNBAの取材から離れることになったのです。送り主はアジー・ファッドのファンを名乗る人物で、アフセスの報じ方が厳しすぎるというのが動機でした。この1年、私たちは選手が中傷される話を何度も扱ってきましたが、今回は「書く側」が現場から退場させられています。リーグの成長を最前線で伝えてきた人間が減るという事実は、ファンにとっても他人事ではありません。

何が起きたのか、事実だけを並べます

きっかけは8月11日でした。アフセスが受け取ったメッセージの内容が表に出ると、女子バスケット界隈は一気にざわつきました。脅迫は本人だけでなく家族にも向けられており、内容は公の場で引用するのがためらわれる水準です。所属するTake Flight Mediaはその後、アフセスがウィングス担当から外れることを発表しました。取材歴10年以上のベテランが、担当を1つ失った形です。

本人はこの件について「これまで多くのスター選手を取材してきましたが、こんなことが起きたのはこの1件だけです」と述べています。裏を返せば、NBAを含む長いキャリアの中でも前例のない異常事態だったということになります。

支援の声はすぐに広がりました。編集長のサラ・ジェーン・ガメリは、アフセスが年間ほぼ365日移動しながら取材していること、そして隠れた思惑なしにバスケットボールそのものを書ける数少ない書き手であることを強調しています。TCUを担当するメリッサ・トリーブワッサーは、記者への反応として到底容認できず正気とも思えないと投稿し、別媒体でウィングスを取材してきたボビー・カララも、この種の行為が社会に存在してよい余地はないと書き残しました。さらに13日には、ウィングスのホセ・フェルナンデスHCがアフセスを支持する姿勢を示したとClutchPointsが報じています。

なお、ファッド本人がこのメッセージを知っていた、あるいは支持したという事実は一切確認されていません。ウィングスにもBallislifeにも、そしてリーグにも落ち度はない、というのが取材した各媒体に共通する見立てです。

「選手への中傷」から「関係者すべてへの攻撃」に広がっています

今季のWNBAは、この種の問題を繰り返し突きつけられてきました。チェルシー・グレイに人種差別的なDMを送った男が勤務先から即日解雇された件、ソフィー・カニンガムのストーカーが訴追された件、そしてケイトリン・クラークが10分間にわたって憎悪とハラスメントを否定した会見。リーグとWNBPAはオンライン上の中傷に対する共同声明を出し、今月13日には反ヘイト作業部会の会合を受けた声明も発表しています。

ただ、これまで議論の中心にあったのは常に選手の保護でした。今回はその外側にいる記者が対象になっています。High Post Hoopsはこの構図を、ファンが一方的に築く「パラソーシャル」な関係が限度を超えた例だと整理しました。SNS上で日々発信に触れていると、相手を知っているような感覚が生まれます。その感覚が選手だけでなく、選手を批評する人間にまで向けられ始めたということです。

WNBAの観客動員と視聴数がここ2シーズンで急拡大した副作用と見ることもできます。人が増えれば、極端な行動を取る人の絶対数も増えます。問題は、その増加スピードに対して守る仕組みが追いついていないことです。

記者が1人減ると、損をするのはファンです

ここからは私見です。アフセスの離脱で最も痛手を負うのは、実はウィングスのファンだと考えています。練習後の一次情報、ローテーションの背景、フロントの意図。こうした地味な情報は、毎日現場に立つ記者がいて初めて世に出ます。彼の担当外れは、ダラスの情報の解像度がそのまま落ちることを意味します。

さらに深刻なのは、後に続く記者への萎縮効果です。批判的なことを書けば家族が狙われるかもしれない。そう学習した書き手が増えれば、記事は当たり障りのないものへ寄っていきます。それは長期的にリーグの信頼を削ります。

現実的な打開策があるとすれば、球団とリーグがメディア関係者を保護対象に明記することでしょう。反ヘイト作業部会の枠組みに記者の安全を組み込み、クレデンシャル規約の中で悪質なファン行為への対応窓口を用意する。地味ですが、選手だけを守る現行の設計では今回のような事案は拾えません。

関連情報

ウィングスは8月12日、トロント・テンポを94-88で下し、ペイジ・ベッカーズが後半だけで22得点を挙げて連敗を止めました。一方、ファッドは右膝の状態が上向かず3試合連続で欠場しています。W杯開幕まで残り3週間、リーグはレギュラーシーズン終盤の重要な時期に入ります。試合を追うのが楽しい季節だからこそ、その周りで起きていることからも目を離さずにいたいところです。

引用:https://highposthoops.com/dallas-reporters-story-is-proof-parasocial-wnba-relationships-are-going-too-far

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です