黒いフェイスマスクをつけた27歳が、ようやくペイントの真ん中に戻ってきました。シアトル・ストームのエジ・マグベゴアです。開幕前の足の負傷、そして復帰4試合目での鼻骨骨折。2度の離脱でシーズンの大半をベンチから眺めていた選手が、8月10日のスカイ戦ではクライメート・プレッジ・アリーナのファンの前でブロックを叩き込みました。The IX Sportsが8月13日に伝えた復帰後の詳報を読むと、これは単なる「戦力が戻った」という話では終わらないと感じます。
20試合欠場から復帰、その4試合後に鼻を折るまで
マグベゴアの今季は、3月のFIBA女子ワールドカップ予選でオーストラリア代表としてプレー中に足を負傷したところから始まりました。ここで20試合を欠場し、コートに戻ってきたのは7月2日のフェニックス戦です。出場時間制限つきでベンチから3試合を消化し、迎えた復帰4試合目のアトランタ戦で顔面に衝撃を受け、鼻を骨折します。
さらに6試合とオールスターブレイクを失い、2度目の復帰戦は7月31日。負傷したのと同じアトランタの地で、今季残りずっと着け続けることになるマスク姿での再スタートでした。そして8月10日のスカイ戦、第4クォーターにディジョナイ・キャリントンのレイアップを弾き飛ばし、ホームのファンを沸かせています。シアトルでその姿が見られたのは今季わずか2試合目、7月4日以来のことでした。
チームメイトのジョーダン・ホーストンは「エジは私たちのディフェンスの支柱だと感じています」と話し、ガードを意図的にマグベゴアの方向へ追い込むことがあるとまで明かしています。
2020年優勝メンバー最後の生き残りに、球団最大の投資
数字で見ると、この復帰の重みがはっきりします。マグベゴアはオフシーズンに3年総額375万ドルという球団史上最大の契約を結びました。2020年の優勝メンバーで唯一チームに残っている存在であり、当時はまだ20歳のルーキー。それが今や27歳、シアトル7年目の中堅ベテランです。
再建期に入ったチームにとって、彼女は「若いのに経験がある」という稀有なコア。ソニア・レイマンHCは復帰と同時に迷わず先発起用へ踏み切り、身長193センチのマグベゴアと198センチのドミニク・マロンガを並べ、同じく193センチのルーキー、アワ・ファムをベンチに回しました。リーグ屈指の長さと機動力を持つビッグが3枚。レイマンは「彼女はリーグを知っています」と、リム保護と同じくらいその経験値を評価しています。
一方で、今季の平均スタッツはキャリア平均を下回っているのも事実です。本人も試合勘の回復途上であることを認めたうえで、ドライブとトランジションから調子を上げていく手応えを語っています。
プレーオフ圏外のチームが、それでも9月を見ている理由
ストームはすでに今季のプレーオフ進出の可能性が消えています。11連敗を止めたばかりのチームにとって、残り試合の意味をどこに置くかは難しい問題です。それでもマグベゴアは、勝てないと分かっていても毎試合競り合うことに意味があると割り切っています。
ここに独自の視点を加えるなら、シアトルの残りシーズンは「2027年の予行演習」と「9月のFIBA女子ワールドカップの調整期間」が二重写しになっている、と見るのが自然でしょう。マグベゴアとジェイド・メルボルンはオーストラリア、マロンガはフランス、ファムはスペインでの出場が見込まれています。つまりストームのフロントコートは、そのまま3カ国の代表フロントコートでもあるわけです。負けが込んだ日々にどれだけ質の高い40分を積めるかが、そのまま代表の秋につながります。
離脱中のマグベゴアが取り組んだのがリーダーシップだったという点も見逃せません。これまで背中で見せるタイプだった彼女が、ベンチから試合を見る時間を使って個別に声をかける役割を覚えたと語っています。20歳のマロンガが急成長した今季のストームにとって、これは負傷が生んだ数少ない副産物かもしれません。
観戦情報
ストームは残り試合をすべて消化したあと、9月のFIBA女子ワールドカップへ選手を送り出す形になります。マスク姿のマグベゴアがどこまでキャリア平均に近づけるか、そしてマロンガとの2ビッグがどんな守備の絵を描くのか。順位表からは意味が薄れた試合でも、見どころは確実にあります。

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