金曜日のシカゴは、73対70という1ポゼッション差の緊迫した試合でした。ところが翌朝の見出しを占領したのは、その接戦のスコアではありませんでした。ウィントラスト・アリーナの第3クォーターで、コートに複数のアダルトグッズが投げ込まれ、試合が中断したのです。しかも前夜のロサンゼルスに続く2夜連続でした。第一印象を正直に書けば、またこれか、という徒労感でした。1年前にも同じことが繰り返され、リーグも選手も相当な時間をこの話題に割かされています。積み上げてきたシーズンが、数秒の悪ふざけに話題をさらわれる。その苛立ちをこの日いちばん率直な言葉にしたのが、ナターシャ・クラウドでした。
73対70の接戦を止めた、第3クォーターの数秒間
AP通信の報道によりますと、投げ込みが起きたのは第3クォーターです。選手はコート上にとどまったまま、アリーナのスタッフが投げ込まれた物を回収しました。試合はシカゴ・スカイがゴールデンステート・バルキリーズを73対70で振り切っています。そしてチーム最多の17得点を挙げたのが、試合後に会見場でマイクを引き受けたクラウドでした。
クラウドはこの行為を「奇妙だ」と切り捨てたうえで、こう言い切っています。「それを投げている男たちは、自分が弱いということを示しているだけです」。向けられている敵意は不当なものであり、標的にされた集団についてよりも、その個人が抱えている内面の問題についてこそ多くを語っている、という趣旨の言葉も残しました。試合を決める17得点を挙げた選手が、勝利の話ではなくこの話をさせられている。その構図自体が、この問題の本質を示していると感じます。
なおシカゴ・サンタイムズによれば、スカイは防犯カメラの映像を確認し、投げ込んだ人物の特定を進めているとのことです。
前夜のロサンゼルス、そして昨季から続く連鎖
これが単発の事件ではないところに、厄介さがあります。ニューヨーク・タイムズが伝えたところによると、木曜日にはロサンゼルスでも同じ理由で試合が中断していました。アトランタ・ドリームがスパークスを124対88で下した一戦です。ロサンゼルス市警によれば、男の容疑者がアリーナの警備によって身柄を確保され、違反切符を交付されたうえで釈放されています。
さらにさかのぼれば、昨季はアトランタ、ニューヨーク、ロサンゼルスで同種の行為が相次ぎ、逮捕に至ったケースもありました。シカゴ・サンタイムズは、この「流行」の発端が昨季の暗号資産のプロモーターであったと報じています。つまり純粋な悪ふざけではなく、注目を金銭的な価値に変換しようとする計算が、最初から混ざっていたということです。1年を経てまったく同じ手口が戻ってきたのは、その計算がいまだに成立してしまっている何よりの証拠でしょう。
皮肉なのは、木曜のロサンゼルス戦が、エンジェル・リースがフィールドゴール9本中9本成功で20得点10リバウンド8アシストという完璧な一夜を過ごした試合だったことです。ドリームの124得点は球団記録でした。歴史的な数字が刻まれた同じ夜に、タイムラインを埋めたのは投げ込みの映像でした。この非対称こそ、選手たちがもっとも我慢ならない部分ではないでしょうか。
抑止力はどこにあるのか
ここからは筆者の見立てです。木曜のロサンゼルスの処分が違反切符と釈放だったという事実は、抑止力の観点で明らかに弱いと言わざるを得ません。数秒でタイムラインを占拠でき、実際のコストは切符1枚。この収支が成立している限り、模倣は止まらないと考えるのが自然です。
有効なのは、金銭的・社会的なコストを跳ね上げることでしょう。実際、複数の米メディアは木曜の件について、当該人物がリーグ関連イベントから無期限で締め出されたと報じています。無期限追放に加えて、中断によって生じた損害の請求まで踏み込めるかどうかが、来季以降の分岐点になるはずです。加えて、今季からトロント・テンポとポートランド・ファイアが加わり、観客動員も注目度も広がった今のWNBAでは、ライトな来場者が増えるぶん警備の設計そのものを更新する必要があります。持ち込み検査の粒度を上げるのか、座席ブロック単位の監視を強化するのか。この議論を、シーズン終了後ではなく今から始めてほしいところです。
そして、投げ込む側が本当に狙っているのは「反応」です。選手が怒り、切り抜きが拡散し、それがまた次の投げ込みを呼ぶ。クラウドが会見で見せたのは怒りだけではなく、「私たちは気にしない」という突き放しでもありました。感情ではなく仕組みでコストを課す。ファンとしてできる最も現実的な支援は、投げ込みの映像を広めないことかもしれません。
今週末の見どころ
レギュラーシーズンは残りわずかで、プレーオフ争いは最終盤に入っています。土曜日にはドリームがフェニックス・マーキュリーと対戦する予定で、完璧な一夜を過ごしたリースがどんな続編を見せるかが注目されます。73対70で接戦をものにしたスカイにとっても、クラウドの17得点が示した勝負強さは、シーズンの残りを占う材料になるはずです。コートの外の話題ではなく、コートの中の数字でこの週末が語られることを願っています。

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