NBAのオフシーズンに、コートの外から重いニュースが飛び込んできました。米下院の中国特別委員会を率いるジョン・ムーレナー委員長(共和党・ミシガン州)が、ネッツのオーナーであるジョー・ツァイをリーグに留めておくべきかどうか、NBAとオーナーたちは検討すべきだと発言したのです。スター選手の移籍話とは次元の異なる、リーグの根幹に関わる問題提起といえます。
背景には、ツァイが会長を務める中国EC大手アリババを巡る米政府の判断があります。順を追って整理していきます。
発端は国防総省による「中国軍事企業」指定
米国防総省は先月、アリババが中国の軍と防衛産業を支援しているとして同社を「中国軍事企業」に指定し、国防関連の契約を禁止しました。ツァイはそのアリババの共同創業者であり、現在は会長を務めています。ムーレナー委員長は「これはNBAとオーナーたちが、米国の利益に反して活動するオーナーを仲間に置いておきたいのかを決める時だ」という趣旨の厳しい言葉で、リーグに判断を迫りました。
一方のアリババは指定に根拠がないと真っ向から反論し、リストからの除外を求めて国防総省を提訴しています。ESPNによれば、NBAとツァイ本人はコメントの求めに応じておらず、ツァイ側の代理人はアリババの声明を提示するにとどめています。
ウィザーズオーナーへの要求に続く「第2弾」
実はこの動きは突然ではありません。同委員会は6月にも、ウィザーズやWNBAミスティクス、NHLキャピタルズを保有するテッド・レオンシスに対し、アリババとのマーケティング提携を解消するよう求めていました。今回のツァイへの言及は、スポーツ界と中国資本の関係に切り込む一連の圧力の「第2弾」と位置づけられます。
NBAと中国の関係は、2019年に当時ロケッツGMだったダリル・モリーの香港デモ支持ツイートを機に中国国内での放映停止へと発展して以来、常に微妙な緊張をはらんできました。中国はNBAにとって放映権とスポンサー収入の面で北米に次ぐ重要市場であり、リーグは長年、政治問題との距離の取り方に苦慮してきた経緯があります。台湾生まれでカナダ国籍のツァイは2019年にネッツの完全オーナーとなり、リーグと中国市場をつなぐ象徴的な存在と見られてきただけに、今回の批判は構図として非常に重いものがあります。ムーレナー委員長がツァイについて、米国への忠誠心は金銭的な契約以上のものではないと踏み込んだ点も、議論の激しさを物語っています。
NBAに残された選択肢は多くない
筆者の見立てでは、短期的にツァイの立場が揺らぐ可能性は高くありません。オーナー資格の剥奪は規約上のハードルが極めて高く、議会側の要求にも法的な強制力はないからです。ただし、政治からの圧力が今後も続くのはほぼ確実で、中国市場との関係修復を模索するリーグにとって、経済的利益と政治的リスクの板挟みは一段と深刻になります。
なお、ツァイ夫妻はWNBAのリバティのオーナーでもあります。バスケットボール界全体のガバナンスに関わる話として、WNBAファンにとっても決して無縁ではない問題です。
今後の注目ポイント
アリババと国防総省の訴訟の行方、そしてNBAが何らかの公式見解を出すのかどうかが当面の焦点です。オフシーズンの移籍市場の裏で進む、もう一つの重要なストーリーとして注視していきます。
引用:https://www.espn.com/nba/story/_/id/49376013/congressman-calls-nba-review-joe-tsai-position-league

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