“シューター”の看板を自ら塗り替える新人ファッド、ベッカーズ不在の敗戦でも際立った守備──ガードでアラナ・ビアード以来の希少領域へ

 

WNBAのルーキー・オブ・ザ・イヤー候補として名前が挙がるとき、アジー・ファッドはまず「UConn仕込みの高精度シューター」として語られてきました。ところが2026シーズンが進むほどに、その評価軸は静かに、しかし確実に変わりつつあります。7月20日、ダラス・ウィングスはニューヨーク・リバティにオーバータイムの末に98-99で敗れましたが、この一戦でも際立ったのは、彼女の得点ではなく守備でした。エースのベッカーズを欠く苦しい台所事情のなかで、新人が示したのは「二刀流」という言葉すら物足りない守備の存在感でした。

ベッカーズ不在の接戦で15得点、それでも語り草になった守備

この日のファッドは15得点を挙げ、リバティとの競り合いをオーバータイムへ持ち込む原動力になりました。頭部への接触で欠場が続くベッカーズがいないなか、得点の中心はオグンボワレ(29得点)でしたが、勝負どころで相手に的を絞らせなかったのは、ファッドのボールへの寄せの速さでした。敗れはしたものの、彼女の名前が試合後も語り継がれたのは、スコア以上に守備の場面だったのです。

数字が雄弁です。ファッドはウィングスでスティールとブロックの両方でチーム最多を記録し、1試合平均のブロック数はリーグの全ガードのなかでトップに立っています。ガードでありながらインサイドにまで影響を及ぼすこの異質さこそ、彼女を今季屈指の「守れる新人」に押し上げている理由にほかなりません。

アラナ・ビアード、そしてキャッチングス──積み重ねてきた“希少な記録”

ファッドの守備は、単発の好プレーではなく、歴史の文脈に載り始めています。6月には、通算25スティール・15ブロックへ到達する速さで、2度の最優秀守備選手(DPOY)に輝いたアラナ・ビアードが2004年に打ち立てた記録を更新しました。ビアードが17試合を要したこの節目を、ファッドはわずか16試合でクリアし、その時点で26スティール・18ブロックを積み上げていました(Yardbarker)。

さらに7月には、「20試合のスパンで3ポイント35本・スティール35・ブロック20」という条件を満たしたルーキーは、あのタミカ・キャッチングス(2002年)と彼女だけ、という記録も加わりました。開幕直後はベンチスタートで精彩を欠き、初戦はわずか3得点。そこから先発に定着し、守備で存在価値を証明してきた過程を思えば、この積み重ねの重みはいっそう際立ちます。

指揮官のホセ・フェルナンデスは、かねて「彼女のサイズと守備のプレッシャーが試合を変える」と、スタッツに表れない貢献を高く評価してきました(Sports Illustrated)。

「守れるシューター」は新人王・DPOY争いをどう動かすか

ここからは筆者の見立てです。ファッドの価値は、得点力のあるウイングが「守備でも計算できる」点に凝縮されています。昨季のウィングスは失点リーグ12位の守備難でしたが、今季は守備効率5位、被得点も1試合88点台から83点台へと改善しました。この変化の中心にファッドがいるという事実は、ルーキー・オブ・ザ・イヤー投票において「攻撃スタッツ」だけでは測れない説得力を持っています。

ガードのブロックは目立ちにくく、票にも直結しにくい指標です。だからこそ、ビアードやキャッチングスといった名前と並ぶ記録は、彼女の守備を「なんとなく上手い」から「歴史的」へと引き上げる材料になります。オールスターを目前に控えたいま、ファッドが“シューター”という枠を自ら壊しにいっているのは間違いありません。

次戦とオールスターへ

ウィングスにとっては、ベッカーズの状態が当面の最大の焦点です。UConn仕込みのコンビが再び揃えば、ファッドは守備でさらに自由度を増すはずです。オールスターウィークを控えたこの時期、得点表に載らない価値をどこまで積み上げられるか。次の一戦は、彼女の“完成度”を測る格好の答え合わせになります。

引用:https://clutchpoints.com/wnba/dallas-wings/wings-news-azzi-fudd-latest-wild-feat-puts-her-on-dpoy-track

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