女子バスケットボール界がかつてない投資ブームに沸くさなか、ひとつのリーグが立ち止まりました。アスリート・アンリミテッド・プロバスケットボール(AUPB)が7月31日、2027年シーズンを休止すると発表したのです。市場は拡大しているのに、そこで戦っていたリーグが止まる。この一見矛盾した出来事は、WNBAの選手たちを取り巻く「冬の環境」がこの2年で決定的に変わったことを物語っています。最初に受けた印象は、敗北というより、時代の速さに追い抜かれた、というものでした。
初開催から5年目、契約選手ゼロでの発表
AUPBは公式SNSで、リーグ全体の長期的な成長に集中するため2027年シーズンのAUプロバスケットボールを休止すると告知しました。声明ではその理由をこう説明しています。「女子バスケットボールが投資と拡大の刺激的な新時代に入るなか、アスリート・アンリミテッドが最大の長期的インパクトを生み出せる方法を、丁寧に見極めるべき時期だと考えています」。
母体のアスリート・アンリミテッドは2020年設立で、ソフトボールやバレーボールのリーグも運営しています。チームオーナーを置かず、選手が直接リーグの利益を分け合う独特の仕組みが特徴です。バスケットボールは2022年に初開催で、ラスベガス、ダラスを経て直近2シーズンはナッシュビルが舞台でした。2022年には3000万ドルの資金調達ラウンドを実施し、ケビン・デュラントの投資会社35V、デビッド・ブリッツァー、アンジェラ・ルジェーロらが名を連ねています。
Front Office Sportsによれば、2027年シーズンに契約していた選手は1人もいませんでした。発表に先立ち、レキシー・ブラウン、シドニー・コルソン、テリーサ・プレザンス、イザベル・ハリソン、ドリー・ハリソンの5人で構成される選手エグゼクティブ委員会には事前に伝えられていたといいます。
最低年俸27万ドル──新CBAが「冬に稼ぐ理由」を消した
休止の背景を理解する鍵は、数カ月前にWNBAと選手会が合意した新CBAにあります。今季のWNBA最低年俸は27万ドル。これは昨季の最高年俸を上回る金額です。つまり、リーグの控え選手ですら1年前のトップ選手より多く稼ぐ構造に変わりました。
AUPBが立ち上がった2022年当時、WNBA選手にとって冬は「海外に行くか、国内で稼ぐか」の選択でした。AUPBは後者の受け皿として機能し、アリーシャ・グレイやケルシー・ミッチェルといった主力級も参加しています。ところが本業の年俸が跳ね上がった今、選手が冬に体を張る動機は「生活のため」から「より魅力的な条件があるなら」へと変質しました。AUPBのロスターがこの2年で明らかに薄くなっていたのは、その必然的な帰結だったと言えます。
空いた枠を奪い合うアンリミテッドとプロジェクトB
冬の主役はすでに入れ替わっています。ナフィーサ・コリアーとブレアナ・スチュワートが共同創設した3人制のアンリミテッドは1月から3月に開催され、全選手に6桁の年俸を保証。最初の2シーズンでエンジェル・リースやペイジ・ベッカーズを迎え入れました。ただし2027年も8チーム・レギュラー48枠を維持する方針で、オリビア・マイルズやギャビー・ウィリアムズの獲得によりすでに9割超が埋まっています。育成6人枠を足しても54人で、AUPBから流れる数十人を吸収できる余白はほとんどありません。
もうひとつが12月開幕予定のグローバルリーグ、プロジェクトBです。一部のスター選手には数百万ドル規模のオファーを提示し、ンネカ・オグウミケ、ジョンクェル・ジョーンズ、ミッチェルら十数人の契約をすでに発表しています。ただ当初構想の66人枠にはまだ遠く、ここが最大の受け皿になる可能性はあります。
ここで見落とせないのは、AUPBの休止が「女子バスケの縮小」ではなく「上位集中の副作用」だという点です。冬の市場は明らかに大きくなりましたが、その資金はトップ層に厚く配分され、キャリアの土台を作りたい中堅や若手の出場機会は逆に減りかねません。AU側は2028年以降の復活の可能性を閉ざしていないと説明していますが、戻ってくるとしても求められる役割は今までとまったく違うものになるはずです。
今後の見どころ
WNBAは日本時間8月3日未明にトレード期限を迎え、そこからレギュラーシーズン終盤に突入します。冬の去就がどう決まるかは、この夏の各選手のパフォーマンスと契約状況にも密接に絡んできます。プロジェクトBの追加契約発表とアンリミテッドの残り枠の行方は、シーズン中から少しずつ見えてくるはずです。
引用:https://frontofficesports.com/athletes-unlimited-cancels-2027-season-despite-womens-hoops-surge/

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