NBAのオフシーズンに、選手生命そのものを考えさせられるニュースが届きました。血栓症のために31歳でコートを去ったクリス・ボッシュが、同じ血栓を経験したウェンバンヤマに向けて言葉を送ったのです。単なる先輩からの激励ではありません。ボッシュ自身が今年1月に命に関わる状態へ陥っていたことを併せて明かしたうえでの発言でした。移籍や契約の話題が飛び交う夏のNBAにあって、これほど重さの質が違うニュースも珍しいと感じます。
「あと一度起きれば終わる」ボッシュが選んだ言葉
ボッシュはHoopsHypeのインタビューでウェンバンヤマへの助言を求められ、「薬を飲むんだ」と切り出しました。そのうえで、再発を防ぐために治療の管理を徹底してほしいと促し、その理由を「もう一度起きるだけで十分だから」という趣旨で説明しています。自分の場合は二度目が起きてプレーできなくなった、と自身の結末をそのまま重ねました。
ボッシュは現在42歳。オールスター選出は11回、マイアミ・ヒートではレブロンとドウェイン・ウェイドと組んで2度の優勝を経験した殿堂入り選手です。その経歴が31歳で途切れた原因が血栓でした。だからこの助言は、経験談ではなく、実際に起きた結果の報告に近いものだと言えます。
2015年2月から2026年1月まで、11年続いている戦い
ボッシュに最初の異変が起きたのは2015年2月でした。脚にできた血栓が肺へ移動する肺塞栓症を発症し、2014-15シーズンの残りを欠場しています。翌2016年に二度目の血栓が見つかると、ヒートの医師団からキャリア継続は難しいと告げられ、2016-17シーズン前のフィジカルにも不合格となりました。復帰を模索した末に正式な引退を表明したのは2019年です。
そして今年2月、ボッシュはSNSで「自分の血にまみれて目を覚ました」と医療上の危機を明かしていました。ただし当時は、それが新たな血栓の診断だったことまでは公表していません。今回の取材で1月に危うく命を落としかけていたことと、再び肺塞栓症を起こしていた事実が明らかになった形です。血栓は一生付き合うもので、乗り越えたと思っていたが実際は違った、という趣旨の言葉も残しています。引退から7年が経った今も、この戦いは終わっていないということになります。
ウェンバンヤマの「1回」が持つ重さ
ウェンバンヤマは2025年2月に右肩の深部静脈血栓症と診断され、2024-25シーズンの残りを欠場しました。2025年7月に競技復帰の許可が下り、昨季は64試合に出場。スパーズを西カンファレンス制覇とファイナル進出に導き、MVPファイナリストに名を連ね、3年目にして最優秀守備選手賞を受賞しています。血栓から戻った選手の稼働として、64試合という数字はむしろ驚くべき水準です。
そのうえでボッシュの言葉が刺さるのは、ボッシュが「二度目」で終わっているからです。つまりウェンバンヤマはすでに一度を使っています。抗凝固薬を服用しながらコンタクトの激しい競技を続けるという、医学的にはかなり難しい綱渡りを、22歳の選手がこの先10年以上続けなければなりません。2メートル20センチを超える体格と、シーズン中に繰り返す長距離移動は、血流の観点では明らかに不利な条件です。
一方で、2015年当時と現在では抗凝固療法の選択肢も、球団側のモニタリング体制も同じではありません。ボッシュが「薬を飲め」という具体的で地味な行動を最初に挙げたのは、劇的な治療法ではなく日々の管理こそが分かれ目になると知っているからでしょう。称賛でも同情でもなく、実務的な助言を選んだところに重みがあります。
今後の予定と関連情報
ウェンバンヤマはこのオフ、フランスでスパーズの一部チームメイトを迎えて合同ワークアウトを行う予定と報じられています。秋に開幕する2026-27シーズンでは、ファイナルで敗れたスパーズがどう再挑戦するかが西の最大の見どころになります。ウェンバンヤマの出場試合数は、成績以上に注視されることになりそうです。
なお血栓症は競技者に限った話ではなく、長時間の移動や脱水などが誘因になり得るとされています。試合観戦や遠征のために長く座り続ける機会が多い方も、水分補給や適度な体の動かし方には気を配りたいところです。

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