ケイトリン・クラーク

クラークから贈られた未発売の1足で18得点9アシスト0ターンオーバー──11連敗を止めたハイドマンに本人が返した一言は「Auraaaaa」

 

WNBAの話題は、コート上の記録だけで動くわけではありません。今回リーグの内外で一気に広がったのは、まだ店頭に並んでいない1足のスニーカーをめぐる、ごく短いやり取りでした。シアトル・ストームのナティーシャ・ハイドマンが、ケイトリン・クラークの初のシグネチャーモデル「ナイキ ケイトリン1」を公式戦で履き、そのままチームの11連敗を止める勝利の中心に立ったのです。クラーク本人以外がこのシューズを公式戦で着用したのは、これが初めてでした。

最初に面白いと感じたのは、贈った側と贈られた側の距離感です。所属チームが違い、順位表でも立ち位置がまるで違う二人の間を、未発売の1足がごく自然に行き来しています。しかもその1足が、リーグ最下位に沈んだチームの数少ない歓喜の夜に立ち会っているのです。数字の派手さとは別のところで、いまのWNBAの空気が伝わってくる出来事でした。

18得点9アシスト、そしてターンオーバーはゼロ

舞台は月曜日のシカゴ・スカイ戦です。ストームは97対88で勝利し、長かった11連敗にようやく終止符を打ちました。その中心にいたのが、身長5フィート8インチのハイドマンです。18得点9アシストを記録し、さらにターンオーバーはゼロでした。9本のアシストを配りながらミスがひとつも出ないという内容は、ガードとしてこれ以上ない出来だったと言えます。

足元にあったのが、市販前の「ケイトリン1 レーサーブルー」でした。青系のカラーリングは、この日のハイドマンの青い髪とそのまま揃っていて、コート上ではよく目立ったはずです。

もっとも、ストームの現状は依然として厳しいままです。7勝28敗でリーグ最下位に位置し、今季のプレーオフ進出の可能性はすでに消えています。実はストームが11連敗を止めるのは、今季これが2度目です。6月25日にもニューヨーク・リバティを本拠地で破り、12試合ぶりの勝利を手にしています。あの日はフロージェイ・ジョンソンの28得点が目立ちましたが、ハイドマンも11得点2スティールを記録していました。連敗を止める日にこのガードが絡んでいるのは、偶然というより役割に近いのかもしれません。

贈られたのはオールスターウィークエンド

ハイドマンが履いたレーサーブルーは、2026年のWNBAオールスターウィークエンドで、クラーク本人から手渡されたものです。ケイトリン1は2026年6月に正式発表されたクラークの初のシグネチャーモデルで、世界発売は10月1日が予定されています。価格は北米で140ドル、北米以外では135ドルです。グレードスクールサイズが100ドル、プリスクールサイズが90ドルと、子ども向けまで含めたファミリーサイズ展開になる点も、このモデルの性格をよく表しています。

つまりハイドマンが履いたのは、一般のファンがまだ買うことのできない1足です。彼女は火曜日にインスタグラムのストーリーズでその写真を公開し、クラークをタグ付けしたうえで「Broke out my gifted CC’s and got the dub.(もらったCCを下ろして、勝ちを持ち帰った)」と書き添えました。

これに反応したのがクラークでした。投稿をリポストし、返した言葉はたった一つでした。「Auraaaaa」。オーラ、という英語のスラングを伸ばしただけの短い一言ですが、贈った相手が自分の靴で結果を出したことへの反応としては、これ以上ないくらい素直だったように見えます。

本人以外が履いた瞬間に、シグネチャーは製品になる

ここからは筆者の見方になりますが、シグネチャーシューズというものは、本人が履いているうちはまだ記念品に近い存在だと考えています。それが本当にプロダクトとして立ち上がるのは、別の誰かが公式戦で履き、しかも結果を出した瞬間です。バスケットボールシューズの歴史を振り返っても、名作と呼ばれるモデルにはたいてい「本人以外の名場面」が紐づいています。

その意味で、今回の一戦は発売のおよそ1カ月半前に届いた最良の実戦データでした。18得点9アシストでターンオーバーゼロという内容は、広告のコピーよりよほど説得力があります。しかもその舞台が、優勝争いをしている強豪ではなく、11連敗中の最下位チームだったことに個人的な価値を感じます。勝つべくして勝ったチームではなく、勝てなかったチームがようやく笑えた夜に、その靴がありました。物語としては、こちらのほうがずっと強いはずです。

一方でクラーク自身も、同じ火曜日に新色を投入しています。ニューヨーク・リバティ戦で「ケイトリン1 ライムグリーン」を初めて履き、22得点、3ポイント8本中4本、4リバウンド10アシスト1スティールという内容でインディアナ・フィーバーの106対92の勝利を導きました。この試合で、1シーズンにおける20得点10アシスト以上の試合数をWNBA記録となる9試合まで伸ばしています。贈った靴も、自分の靴も、同じ週に勝っています。プロモーションとしては出来すぎと言っていい流れです。

今後の焦点は、ハイドマンに続く2人目、3人目が出てくるかどうかでしょう。ナイキの契約選手であれば履くこと自体は難しくありませんが、対戦相手の名前が入ったモデルを自分の足元に置くというのは、選手にとって決して軽い選択ではありません。それでも履く人が増えていくなら、ケイトリン1は「クラークの靴」から「ガードの靴」へと性格を変えていくはずです。10月1日以降の1年が、その分かれ目になると見ています。

関連情報

ナイキ ケイトリン1は10月1日に世界発売が予定されており、レーサーブルーが最初のカラーとなります。日本のファンにとっても、クラークのプレーを追う楽しみとは別の入り口ができることになります。ストームは今季のプレーオフ進出こそ消えましたが、20歳のドミニク・マロンガをはじめ若手の成長を確かめる試合が続きます。フィーバーはプレーオフ争いの真っただ中で、クラークの記録更新がどこまで伸びるかにも注目です。

引用:https://athlonsports.com/wnba/indiana-fever/indiana-fever-caitlin-clark-one-word-wnba-player-move

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