2026年8月16日、フェニックスのアリーナはダイアナ・タウラシのためにあるはずの夜でした。ハーフタイムには背番号3がリング・オブ・オナーに迎えられ、3度の優勝と2度のファイナルMVPを刻んだ20年が改めて祝福されています。ところがコートで起きたことは、その祝祭と真逆でした。ポートランド・ファイアが9点差をひっくり返して88対85で勝ち、マーキュリーのプレーオフ進出はほぼ絶望的になりました。そしてこの敗戦は、アリッサ・トーマスが9年間守り続けてきた記録の終わりも意味しています。
あと1アシストだった17得点11リバウンド
この日のトーマスは17得点11リバウンド9アシスト。今季3度目のトリプルダブルまで、アシストがあと1本足りませんでした。残り6秒にはスティールからバンクショットで今季初めての3ポイントを沈め、86対85まで詰め寄っています。それでもレイトにフリースローを2本決められ、最後はサミ・ウィットコムの同点3ポイントがリングに弾かれました。
マーキュリーはデワナ・ボナーが3ポイント4本を含む23得点、カリーア・コッパーが19得点と数字自体は悪くありません。後半は一度もリードを譲らず、残り1分53秒にカーラ・レイトのレイアップで81対80と逆転されるまでは勝ち筋が見えていました。ファイアは第4クォーターだけでレイトが15得点、メガン・ディレオが15得点、ブリジット・カールトンは9得点に加えて残り15秒を切ってからコッパーのドライブをブロックしています。トレード期限で加入したケルシー・プラムは左下腿の負傷で2試合連続の欠場でした。
そしてこの夜のスコアシートには、もう一つ小さな事実が残りました。トーマスがシーズン最初の3ポイントを決めたのが、第4クォーター残り6秒だったということです。3ポイントをほとんど打たないスタイルを貫いてきた選手が、追い込まれた場面で初めてリングを狙い、それが今季唯一の1本になっている。データとしては些細でも、35試合を戦ってきたチームの現在地をこれ以上なく物語る1本でした。
2017年から途切れなかった9年が終わります
トーマスにとってプレーオフは日常でした。コネチカット時代の2017年から2024年まで8年連続で出場し、2019年と2022年にはファイナルの舞台にも立っています。2025年にマーキュリーへ移ってからも初年度でファイナルへ進み、連続出場は9年に伸びました。10年目を狙った2026年に、その線がここで切れます。
13勝23敗という数字は、昨季ファイナリストの成績としてはあまりに重いものです。一方で15勝20敗のファイアは直近5試合で4勝と勢いに乗り、8位のダラスとの差を5ゲームまで縮めてきました。拡張1年目のチームが最後の1枠を追いかけ、前年のファイナリストが先に脱落するという構図は、今季のWNBAの勢力図が1年でどれだけ動いたかを示しています。
象徴的なのは、この2026年がトーマスにとって栄誉の年でもあったことです。8月にはコネチカット・サンが背番号25を永久欠番として天井へ上げ、11年を捧げた球団から「レジェンド」として送り出されました。その2週間もたたないうちに、今度は移籍先で9年続いたプレーオフ出場が途切れる。同じ夏の中に最大級の敬意と最大級の落胆が同居しているというのは、キャリアの節目としてはあまりに残酷な巡り合わせです。
34歳のベテランに残された選択肢
ここから先、注目したいのはトーマスの残り試合の扱い方です。今季もトリプルダブルを2度記録し、この日も40分近い時間を戦い抜くだけの状態にあります。ただ、順位が動かない終盤戦で消耗を重ねる意味は薄いはずです。球団がタンキングの是非を含めて2027年のドラフトを見据える局面に入るなら、起用時間は自然に減っていくでしょう。
もう一つの焦点はプラムです。オフにフリーエージェントとなる彼女に対し、タウラシ本人が引き留めを口にしたと伝えられています。トーマス、コッパー、プラムという骨格を残すのか、それとも一度組み直すのか。背番号3が天井に上がった夜の敗戦は、マーキュリーにとって次の設計図を描き始める合図になったのかもしれません。
今後の試合情報
WNBAのレギュラーシーズンは9月上旬にかけて最終盤へ向かいます。最後の1枠を争うポートランドとダラスの勝敗は日々動くため、順位表はWNBA公式サイトの順位表で確認するのが確実です。マーキュリーの残り試合では、トーマスがどんな表情でコートに立つのかを見届けたいところです。

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