ケイトリン・クラーク

ボールはベッカーズの頭のすぐ横を通り抜けました──残り10秒の「ファウル・トゥ・ギブ」に激高したクラーク、大学からの因縁は9月のワールドカップへ

 

8月20日にアメリカン・エアラインズ・センターで行われたウィングス対フィーバーで、コート上の主役はスコアボードではなく、クラークとベッカーズの数秒間のやりとりでした。第2クォーター終盤、ファウルを1つ余らせていたウィングスが時間を殺しにいった、それ自体はごく平凡なバスケットボールの作法です。ところが受け手がクラークだったことで、この平凡な作法は一晩でWNBA全体の話題になりました。筆者の第一印象は「ようやくこの2人らしいシーンが出てきた」というものです。大学時代から比較され続けてきた2人が、初めて感情をむき出しにして正面からぶつかった夜でした。

残り10秒、2度つかまれた左腕

状況を整理します。第2クォーター残り10秒を切った場面で、ボールを持っていたのはクラークでした。ウィングスにはファウルを1つ与える余裕があり、マッチアップしていたベッカーズがクラークの左腕をつかみにいきます。しかし笛は鳴らず、ベッカーズはファウルを成立させるためにもう一度つかみました。ここでクラークが感情を爆発させ、腕を振りほどいたうえでボールをコートの反対側へ叩きつけるように投げます。米スポーツ・イラストレイテッドは、そのボールがベッカーズの頭の近くを通ったと伝えています。判定はベッカーズのパーソナルファウル、それだけです。

その後もクラークは数秒間いらだちを見せ続け、ベッカーズが「落ち着け」と手で制する場面まで映像に残りました。緊張は後半にも持ち越されます。第3クォーターで再びクラークにファウルをした直後、ベッカーズは審判への抗議の仕方をとがめられてテクニカルファウルを取られました。試合はウィングスが91対85で勝ち、フィーバーの5連勝が止まっています。得点はミッチェルが両チーム最多の36点、ウィングスはオグンボワレが32点、うち25点を後半に集中させました。

6日前は「29点対29点」で称え合っていた2人

この一件が興味深いのは、わずか6日前の対戦の空気とまったく違うからです。8月14日の前回対戦ではフィーバーが98対87で勝ち、クラークとベッカーズがそろって29点。試合後のクラークはベッカーズについて「彼女は本当に守りにくい相手です」という趣旨の言葉で相手を称えていました。称賛から不快感まで、6日で振り幅がここまで大きくなるのは、それだけ両者が勝ちにこだわっている証拠でもあります。

今季の数字を並べると、この日の試合の背景がよりはっきりします。クラークは平均22.1点8.3アシスト3.8リバウンド、フィールドゴール成功率44.9%、3ポイント成功率35.8%、フリースロー成功率85.5%。ベッカーズは平均20.5点5.8アシスト、3ポイント成功率37.8%。得点力ではクラークがやや上、効率面ではベッカーズが上という、非常に近い位置にいる2人です。しかもこの試合のウィングスはファッドが今季絶望、フィーバーはリーグ屈指の得点力を持つミッチェルを擁して首位争いの真っただ中。順位表の重みが、平凡なファウル1つを事件に変えたと言えます。

怒りの正体は「ベッカーズ」ではなく「時計」だった可能性

ここからは筆者の見方です。クラークが怒った相手は、おそらくベッカーズ個人ではありません。ファウル・トゥ・ギブは、残り時間を削って相手の最後の攻撃を潰す守備側の正当な戦術で、クラーク自身も何度も使ってきたはずの手です。それでも激高したのは、クォーター終了間際の1本を狙っていた自分の意図が完全に断ち切られたからでしょう。実際、彼女が最初にやったのは抗議ではなく、ボールを別の審判に向かって投げるという行為でした。矛先は判定と時計に向いていたように見えます。

そして皮肉なことに、この2人は来月のワールドカップではアメリカ代表として同じユニフォームを着ます。ベンチで隣に座り、同じハドルに入る相手と、8月にコートで腕を引っ張り合う。これはライバル関係の終わりではなく、むしろ健全な成熟の入り口だと考えます。過去のWNBAで最も語り継がれる対立は、たいていお互いを認め合った選手同士の間で起きてきました。今回の一件が制裁や処分に発展する気配は今のところなく、それもまた、この2人が線を越えなかったことの証明です。

次に確かめるべき試合

フィーバーは8月22日にリバティ戦、8月23日にスカイ戦と連戦が続きます。連勝が止まった直後の2試合で、クラークがどんな表情でボールを運ぶのかは見どころです。ウィングスはファッドを欠いたままプレーオフラインを争う立場で、ベッカーズの負担はさらに増えていきます。そして9月のワールドカップでは、この2人がついに同じ側に立ちます。8月20日の数秒間を覚えておくと、その光景はずっと面白く見えるはずです。

引用:https://www.si.com/onsi/womens-fastbreak/news/caitlin-clark-paige-bueckers-have-heated-exchange-after-arm-grab-in-fever-wings-game

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