ケイトリン・クラーク

なぜ3951点の名前だけが消えたのか──NCAA公式がクラークを外した動画の裏側

 

NCAAディビジョン1女子バスケットボールの公式アカウントが8月26日に投稿した1本の動画が、思わぬ波紋を広げています。「大学で名を刻み、いま最大の舞台で記録を作っている」という趣旨で並べられたのは、エイジャ・ウィルソン、ベッカーズ、オリビア・マイルズ、エンジェル・リースの4人でした。そこにケイトリン・クラークの姿はありません。筆者の第一印象は、称賛のための投稿がここまで燃えるのは珍しい、というものです。映った4人の実績はどれも本物で、誰ひとり批判されるいわれはありません。問題になっているのは、そこにいるはずの5人目が抜けていた一点だけです。

5度目の30得点10アシストを挙げた直後の不在

反発が大きくなった理由は、クラークの直近の数字を並べるとすぐに見えてきます。クラークは日曜のスカイ戦で、キャリア5度目となる30得点10アシストの試合を記録しました。これはWNBA歴代最多で、しかもリーグのほかの選手全員を合わせても4試合しかありません。1人で残りの全員を上回っている項目です。

さらに今季は、WNBA史上初となる40得点10アシストの試合も達成しています。ストーム戦での45得点10アシスト4スティール2リバウンド2ブロックがそれで、リーグの歴史で誰も届かなかった領域でした。ルーキーイヤーには769得点337アシストという新人記録を作り、大学時代には3951得点で男女を通じたNCAAディビジョン1の歴代得点王になっています。記録を軸に動画を作るなら、真っ先に候補へ挙がる名前だったはずです。

同じアカウントは7月に単独投稿で称えていました

ここで押さえておきたいのは、NCAA側がクラークを一貫して無視してきたわけではないという事実です。7月に40得点10アシストを達成した際、同じアカウントはクラーク単独の投稿で快挙を祝っています。つまり今回の件は「方針」ではなく、1本の動画の人選の話に収まる可能性があります。

それでも反応が強かったのは、この一件が過去の似た出来事と重なって見えたからでしょう。スポーツコメンテーターのベイレスは自身のXで「これは意図的としか思えません」と書き、誰がどんな理由で選んだのかを公開で問いただしました(該当ポスト)。アイオワ州を拠点とするスポーツキャスターのキース・マーフィーも、動画に映った4人はいずれもふさわしいと認めたうえで、NCAA史上最多得点者をなぜ外せるのかという趣旨の疑問を投げかけました。スポーツ記者のオーウェン・シーブリングは、陰謀論的に考えないよう努めているが今回は無視するのが難しいという趣旨の投稿を残しています。

陰謀論に振れる前に、運用の問題として見ています

ここからは筆者の見方です。今回の件を「意図的な排除」と断定するには材料が足りません。7月の単独投稿という反証がある以上、素直に読めば選定基準の緩さと編集判断の甘さが招いた事故に近いと考えます。ただし、緩さで済まされない環境になっているのも事実です。今週はフィーバー対スカイ戦が1997年以来最多の視聴者数を集めたばかりで、リーグの一挙手一投足が以前とは比べものにならない数の目に触れています。

発信する側にとって、これは「誰を入れるか」より「誰を外したか」で読まれる時代に入ったということです。記録を主題に据えた投稿で歴代1位の名前が抜ければ、理由を説明しない限り憶測が埋めてしまいます。公式が沈黙するほど、話は本来の主題から遠ざかっていきます。ウィルソンもベッカーズもマイルズもリースも、こんな形で名前を消費されるのは不本意なはずです。

次の焦点は9月のベルリンです

WNBAはワールドカップによる中断期間に入り、クラークはアメリカ代表としてドイツ・ベルリンでの大会に臨みます。代表ではベッカーズと同じユニフォームを着る立場になり、動画をめぐる論争とはまったく違う文脈で並ぶことになります。中断が明ければ、待っているのはプレーオフです。今回の一件が尾を引くかどうかは、結局のところ、彼女が9月と10月にどんな数字を残すかで決まります。騒ぎを黙らせる手段を、クラークはこれまでも自分の手の中に持っていました。

引用:https://athlonsports.com/wnba/indiana-fever/ncaa-caitlin-clark-decision-spark-backlash

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