スパーズの再建を語るとき、話題はどうしてもビクター・ウェンバンヤマに集まります。ただ、この2年でチームの背骨になりつつあるのは、もう一人の若手ではないかと思っています。ステフォン・キャッスル。ルーキーイヤーには3ポイントが入らず、どの局面で自分が主導権を握るべきかも定まっていなかった21歳が、2年目に一気に別人の輪郭を持ち始めました。スパーズ専門メディアのポンディング・ザ・ロックが9月6日、彼の変化を「面白い素材から勝てる選手へ」という枠組みで取り上げています。
1年でほぼ全項目が伸びた2年目
同メディアが挙げた数字が、変化の大きさを端的に示しています。得点は平均14.7から16.7へ、リバウンドは3.7から5.3へ、アシストは4.1から7.4へ。効果的フィールドゴール成功率も47.6%から52.1%まで改善しました。特筆すべきはアシストの伸びで、1年で3.3本という増え方は、単に出場時間が増えたという説明では足りません。ボールを持たされる時間が増えたのではなく、持ったときの判断が速くなったと見るのが自然です。
効率の改善も見逃せません。得点が2得点伸びながら、eFG%が4.5ポイント上がっている。これは打つ本数を増やして数字を積んだのではなく、打つべき場所を選べるようになったことを意味します。ルーキーイヤーの弱点だった外角が最低限のレベルに届いたことで、リムへ切れ込む道が開き、その結果としてキックアウトのアシストが増える。数字の並びから逆算すると、そういう連鎖が起きていたと読めます。
評価が実力に追いついた瞬間、あるいは追い越した瞬間
2025-26シーズンの投票結果は、彼の立ち位置の曖昧さをそのまま映し出していました。キャッスルはオールスターに選ばれず、西カンファレンスの投票スコアでは17位にとどまっています。ところがオールNBAの投票では、サードチームに2票、セカンドチームに1票を集めました。セカンドチーム相当と評価されたということは、ジェイレン・ブラウンやカワイ・レナード、ドノバン・ミッチェルと同格に置いた投票者がいたということです。
平均16.7得点という数字だけを見れば、この評価は明らかに過大でしょう。実際、当時は「なぜこの成績で票が入るのか」という驚きとともに話題になりました。ただ、票を投じた人物が何を見ていたのかを考えると、話は少し変わってきます。オールスター投票では17位、オールNBA投票では一部から一桁評価。この落差は、彼の価値がボックススコアに載りにくい種類のものであることを示唆しています。相手のエースを消す守備、外れたときのカバー、走らなくていい場面で走る。そういう仕事の積み重ねは、平均得点には現れません。
3年目に問われるのは「拡張」ではなく「維持」
コネチカット大学時代から、キャッスルには身体能力と勝負度胸が備わっていました。プロで足りなかったのは技術と判断です。2年目でそこが埋まった以上、3年目のテーマは新しい武器を足すことではなく、伸びた水準を82試合維持できるかどうかだと考えます。アシスト7.4という数字は、チームの中でボール運びと組み立ての相当量を任されていることを意味します。ウェンバンヤマが本格的にエースとして機能するチームで、その役割をどこまで背負い続けられるか。
もう一つの焦点は、外角の再現性です。eFG%の改善が本物なら、ディフェンスは彼を放置できなくなり、ウェンバンヤマ周辺のスペースがさらに広がります。逆に3ポイントが元の水準へ戻れば、スパーズの攻撃は再び窮屈になる。チーム全体の天井が、キャッスルの外角一つに左右されかねない構造になっているわけです。派手ではないものの、今季のスパーズを追ううえで最も実利的な観測点だと思います。
この先の注目ポイント
2026-27シーズンは10月に開幕します。スパーズの試合を追うなら、キャッスルの3ポイント試投数と成功率、そしてターンオーバーの推移をセットで見ると変化がつかみやすいはずです。ウェンバンヤマとのピック&ロールが何本組まれるかも、チームの設計思想を読み取る手がかりになります。素材から戦力へ、そして戦力から柱へ。その途中経過を確かめる1年になりそうです。

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