ペイジ・ベッカーズ

20.5得点と史上最速52試合、ウィングスが仕掛けたMVPaigeという執念

 

ダラス・ウィングスが、球団公式アカウントで異例の投票キャンペーンを始めました。ペイジ・ベッカーズを今季のMVPとオールWNBAに、という真正面からの売り込みです。投稿に添えられたキャッチコピーは「MVPaige: The best sports movie still being written」。まだ書かれている途中の最高のスポーツ映画、という言い回しに、球団がこの24歳をどう見ているかが凝縮されていました。ファンの反応も熱く、彼女は替えの利かない唯一の存在だという趣旨の書き込みが並びました。レギュラーシーズン閉幕まで残りわずかというこのタイミングで球団が動いたこと自体が、今季のMVPレースの混戦ぶりを物語っているように思えます。

20.5得点5.9アシスト、球団が並べた数字の中身

ウィングスが投稿で強調したのは、2つの数字でした。1つは平均20.5得点という得点力です。米メディアの集計では、ベッカーズは今季38試合に出場し、平均20.5得点4.1リバウンド5.9アシストを記録しており、リーグ得点ランキングでは6位につけています。もう1つは、通算1000得点250アシストへの到達スピードです。彼女はこれをキャリア52試合目で達成しており、WNBA史上最速という記録が残りました。

この2つは、性質の違う数字です。20.5得点は「今季どれだけ点を取ったか」という単年の評価軸であり、52試合という数字は「入って2年でどこまで来たか」というキャリア全体の速度を示します。球団があえて両方を並べたのは、単年の成績だけでは他の候補に競り負けかねないという計算が働いた結果ではないでしょうか。1年目にプレーオフを逃した新人王が、2年目に得点とアシストを両立させながらチームを押し上げた。その物語ごと投票者に届けたい、という意図が透けて見えます。

24勝16敗という順位表、そしてタイブレークの残酷さ

ベッカーズの評価を語るうえで避けて通れないのが、チーム順位です。9月12日時点でウィングスは24勝16敗。数字だけ見れば勝率6割の好成績ですが、順位表では8位に置かれていました。同じ24勝16敗のワシントン・ミスティックス、ニューヨーク・リバティとタイブレークで並ばれ、そこで下に回ったためです。一方でウィングスはすでにプレーオフ進出を確定させており、残り試合の結果次第では2位まで浮上する可能性も残されています。同じ勝敗数で2位にも8位にもなり得るという、極端に圧縮された順位表の中に彼女は立っています。

ここが難しいところです。MVP投票は個人成績とチーム成績の綱引きで決まる傾向が強く、順位表で下位に見える選手は票を取りこぼしやすいのが実情です。ウィングスにとって不運なのは、実力ではなくタイブレークの都合で8位に見えてしまうことでした。逆に言えば、残りの数試合で順位が上がれば、同じ内容の働きが違う色に見える可能性があります。球団がこの時期にキャンペーンを打った理由の一つは、そこにあるのかもしれません。なお、1年目にプレーオフを逃したチームを3年ぶりのポストシーズンへ連れ戻したという事実は、順位が何位であっても消えないものです。

エイジャ、クラーク、ミッチェル。壁は厚く、しかし

今季のMVPレースには、複数回受賞のエイジャ・ウィルソンをはじめ、ケイトリン・クラーク、ケルシー・ミッチェルといった名前が並びます。実際、ファンの中にも今年の受賞は難しいが将来は十分にあり得ると冷静に見る声がありました。エイジャは攻守両面で毎晩のように高い水準を保ち、クラークはダブルダブルを量産している、という指摘です。この評価は妥当だと思います。ベッカーズの20.5得点は立派ですが、リーグ6位という位置は受賞ラインとしてはやや物足りません。

それでも今回の動きに意味があるとすれば、2つあります。1つは、投票が終わった後も残る「印象」です。オールWNBAの選出はMVPより枠が広く、球団のキャンペーンが効いてくる余地があります。もう1つは、来季以降への布石です。ベッカーズはまだ2年目、24歳で、すでに2度のオールスターに選ばれています。今季のMVP票を1票でも多く積むことは、彼女が本格的に候補として扱われる土台づくりになります。球団が「まだ書かれている途中」と表現したのは、今年の結末を必ずしも金字塔として描いていないからではないでしょうか。

付け加えるなら、ベッカーズはFIBA女子ワールドカップ2026でアメリカ代表として金メダルを獲得しています。米メディアは、本来オフェンス型とされる彼女が今大会では守備面でも評価を高めたと伝えました。WNBAのMVP投票とは直接関係しませんが、代表の舞台で見せた姿がリーグに戻ってからの見られ方を変えるということは、これまでにも起きてきたことです。

プレーオフは9月27日開幕、残り試合の行方

2026年のWNBAレギュラーシーズンは9月24日に閉幕し、プレーオフは9月27日に開幕します。ワールドカップの中断を挟んだ後の数試合が、そのままシード順を決める勝負になります。ウィングスにとっては、ベッカーズの数字を積み上げる場であると同時に、タイブレークで沈んだ位置から這い上がる最後の機会でもあります。MVPの結果がどうであれ、3年ぶりのポストシーズンをどこまで戦えるかが、この「まだ書かれている途中の映画」の次の章になりそうです。順位表の動きとあわせて、残りの数試合を追いかけてみてください。

引用:https://www.hitc.com/one-of-one-what-fans-are-saying-as-paige-bueckers-nominated-for-mvp-by-the-wings/

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