ブリトニー・グライナーがSNSのThreadsに投稿した1本の動画が、ファンの間で大きな話題を呼んでいます。フィーバー対スカイ戦の映像を見ながらインディアナのポストプレーヤーの動きを分析し、「コーチングの道には進みたいと思っている。こうした細かいことが自分を呼んでいる気がした」と自らの口で語ったのです。35歳、WNBA13年目のシーズン真っ只中での発言だけに、その言葉には特別な重みがあります。米メディアも相次いでこの動画を取り上げ、グライナーの「次のキャリア」を巡る議論が一気に広がりました。
筆者の第一印象は「ついにこの日が来たか」ではなく、「現役でこれだけの数字を残しながら、もう次の準備を始めているのか」という驚きでした。というのも、今季のグライナーは衰えるどころか、リーグの歴史を塗り替え続けているからです。
歴代最多ブロックを更新した13年目──数字が示す「まだ終わらない」現在地
今季のグライナーは平均13.9得点、5.6リバウンド、2.6アシスト、1.8ブロックを記録しています。そして6月22日のスカイ戦では、長年マーゴ・ジデクが保持してきたWNBA歴代最多ブロック記録をついに更新し、リーグの歴史にまたひとつ名前を刻みました。ブロックという数字は瞬発力と読みの両方が求められるスタッツであり、35歳でこの領域に到達したこと自体が異例です。
さらに直近では、負傷欠場から戻った7月14日のファイア戦でいきなり20得点を挙げ、チームの90-87の勝利に大きく貢献しました。プレシーズンの段階で浮上した引退説についても本人はきっぱりと否定しており、プレーヤーとしての炎はまったく消えていません。だからこそ、映像分析の動画を自ら公開しながらコーチングへの意欲を語る姿は、「引退準備」ではなく「二刀流の助走」に見えるのです。
フェニックスからアトランタ、そしてコネチカットへ──「若いチームへの恩返し」という選択
グライナーは2013年のドラフトで全体1位指名を受け、マーキュリーで11年間プレーしました。2025年にドリームへ移籍し、今季からはサンでプレーしています。実はこのサン移籍の決め手のひとつが、若い選手の多いロスターで自分の経験を還元できる環境だったと報じられています。本人も「ゲームに恩返しがしたい」と語っており、コーチングへの関心は今に始まったものではありません。
現在のサンはリーグ最下位に沈んでいますが、若手中心のチームにとって、歴代最多ブロッカーが日常的に隣にいる価値は勝敗以上のものがあります。ポストの守り方、スクリーンの角度、ファウルをもらわないブロックのタイミング──こうした言語化しにくい技術を現役のレジェンドから直接学べる環境は、リーグ全体を見渡してもほとんど存在しません。
「プレーイングメンター」がリーグにもたらすもの──コーチ人材問題への一石
タイミングも示唆的です。つい先日、ベッカーズがWNBAに黒人女性ヘッドコーチが不在である現状に苦言を呈したばかりでした。リーグを築いてきたレジェンドたちが指導者としてベンチに戻る道筋は、いままさにWNBAが問われているテーマです。元選手がヘッドコーチとして成功した例としては、エーシズを2連覇に導いたベッキー・ハモンが挙げられますが、選手としての実績でハモンを上回るグライナーが指導者の道を歩み始めれば、そのインパクトは計り知れません。
注目すべきは、グライナーが「引退後に考える」のではなく、現役のいまから他チームの試合映像を分析し、それを公開している点です。コーチングの適性は情熱だけでなく、ゲームを構造として見る目に表れます。自チームではなくフィーバーのポストプレーの動きを教材に選ぶあたり、すでに視点が「選手」から「分析者」に広がっている証拠だと筆者は見ています。数年後、サンのベンチ、あるいはどこかのチームのコーチングスタッフに彼女の名前があっても、まったく驚きません。
いまのグライナーを見られる時間は、思っているより短いかもしれません
歴代最多ブロック記録は、彼女が出場するたびに更新され続けています。コーチ転身への助走が始まったいま、「選手グライナー」の全盛期の続きを見られる残り時間は、私たちが思っているより短い可能性があります。最下位に沈むサンの試合は決して注目カードではありませんが、だからこそ、歴史上最高のショットブロッカーが若手を導きながら戦う姿を、いまのうちに目に焼き付けておきたいところです。
引用:https://sports.yahoo.com/articles/brittney-griners-coaching-move-stirs-034642804.html

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