現地時間8月10日、ミネソタ州セントルイスパークのブラックストーン・パークに集まった子どもたちが、いっせいに声を上げました。目の前に現れたのは、前日までターゲットセンターでミネソタ・リンクスと戦っていたダラス・ウィングスのペイジ・ベッカーズです。この日お披露目されたのは、ベッカーズがゲータレードと組んで4万5000ドルを投じて改修した公営バスケットボールコートでした。しかもそのコートには、彼女自身の名前が刻まれていました。トレードやテクニカルの話題が続いた8月のWNBAで、これはずいぶん静かな、それでいて強いニュースだと感じます。
4万5000ドルが動いたのは、彼女が毎日通っていた公園でした
改修されたのはブラックストーン・パークのコートで、費用は4万5000ドルです。仮に1ドル150円で換算すれば、およそ675万円という規模になります。金額そのものは、球団の補強費やスポンサー契約と比べれば大きくありません。ただ、投じられた場所を知ると印象が変わります。
ベッカーズが育ったのは、この公園のすぐ横に建つタウンハウスでした。地元局WCCOの取材には、夏はほぼ毎日この公園に来ていたこと、冬は自宅のガレージでドリブルをついていたことを明かしています。そのうえで「ここが本当に、私がこの競技に恋をした場所です」と語りました。つまり4万5000ドルは、抽象的な地域貢献ではなく、自分のキャリアの起点そのものに向けて落とされたお金だということになります。
お披露目はウィングスがリンクスと対戦した翌日の月曜日でした。さらに前夜、試合の前にも彼女は一人でこの場所を訪れていたそうです。遠征日程のなかで二度も同じ公園に足を運んでいる事実は、この企画が広報都合の一日仕事ではなかったことを示しています。
ホプキンス高校での5年間と、州3度の最優秀
ベッカーズはミネソタ州のホプキンス高校でバーシティ(1軍)を5シーズン戦い、ゲータレードのミネソタ州最優秀選手に3度選ばれました。その集大成が2019-20シーズンの全米女子最優秀アスリート賞です。今回のコート改修がゲータレードとの共同事業になっているのは、この10年近い縁が下敷きにあると読むのが自然でしょう。
高校卒業後はユーコン(コネチカット大)で全米屈指のガードとなり、2025年のWNBAドラフトで全体1位指名を受けてウィングスに入りました。24歳になった現在、リーグ上位のガードとして扱われる立場になりました。地元の子どもに憧れられる側に回るまで、高校卒業からわずか6年です。
0勝7敗という数字と、50-40-90に届きかけている今季
一方で、コートの外の温かい話とは対照的な数字もあります。ベッカーズはリンクス戦の通算成績が0勝7敗です。日曜の一戦でも敗れ、地元での勝利にはまだ手が届いていません。憧れて見上げていたチームに、プロとして一度も勝てていないわけです。
ただ、個人としての今季は明確に上積みがあります。平均20.1得点4.1リバウンド5.8アシスト、フィールドゴール成功率51.1%、3ポイント39.3%、フリースロー85.0%です。3ポイントがあと0.7ポイント、フリースローがあと5ポイント伸びれば、いわゆる50-40-90に手が届く水準です。20得点前後を取りながらこの効率を維持しているガードはリーグでも限られており、2年目にして得点効率の面では完成に近づいている、と見ています。
だからこそ、リンクス戦0勝7敗という数字はチーム力の問題として読むべきでしょう。個人の伸びと勝敗が噛み合っていない現状は、ウィングスがこの先どこまで整備できるかという課題そのものです。
プレーオフ最後の1枠を争うウィングス
ウィングスは現地8月11日時点で19勝14敗、プレーオフ圏の8位につけています。8位ということは、最後の1枠を他球団と分け合っている状況で、残り試合の1敗が順位に直結します。ベッカーズ本人が地元で語った「投資」という言葉が、シーズンの結果と結びつくかどうかは、ここからの数週間で決まります。
コートに刻まれた名前は、勝敗に関係なく残ります。ただ、その名前を見て育つ子どもたちが将来ベッカーズをどう語るかは、これからの試合が決めるはずです。ウィングスの今後の試合日程はダラス・ウィングス公式サイトで確認できます。今回のコートお披露目の様子はBring Me The Newsの記事でも写真つきで報じられています。

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