ケイトリン・クラーク

「正直、少し気分が悪くなりました」──22得点10アシストのクラークが試合後に名指ししたのは、対戦相手でも審判でもなく自軍のファンでした

 

現地8月11日、ゲインブリッジ・フィールドハウス。インディアナ・フィーバーがニューヨーク・リバティを106対92で下した直後の会見で、ケイトリン・クラークが最初に語ったのは自分のスタッツでも相手の対策でもありませんでした。試合前、ヘッドコーチのステファニー・ホワイトが姿を見せた瞬間、ホームの観客席から飛んだブーイングについてです。

「あれは正直、少し気分が悪くなりました」

自分たちのファンに向かって選手が公の場で苦言を呈するのは、そう多い場面ではありません。しかもクラークは、このリーグの注目度を押し上げてきた中心人物です。その立場でホームの観客席に矛先を向けたという事実そのものが、いまフィーバーの周囲で起きていることの異常さを表しています。

106対92、22得点10アシスト──「彼女のために落とすわけにはいかなかった」

まず試合の中身です。ケルシー・ミッチェルが28得点、うち20点を前半だけで挙げ、クラークは22得点10アシストで続きました。チーム全体では106得点。フィーバーが今季100点を超えたのはこれで15度目で、1シーズンの最多記録だと伝えられています。

クラーク個人の数字も異様です。20得点10アシスト以上を記録した試合は通算19度目になりました。CBSスポーツのジャック・マロニーによれば、この19という数字を上回っているのは球団単位で21度のフィーバーだけです。つまりリーグの他球団は、歴史全体を通してもクラーク1人の到達点に届いていません。

試合後、クラークはこの勝利の意味をはっきり言葉にしました。「彼女のためにこの試合を落とすわけにはいきませんでした」。ソフィー・カニンガムも会見でロッカールームの状態は良好だと述べ、自分とホワイトの関係にも問題はないと明言しています。騒動の当事者とされてきた2人が、そろって同じ方向を向いたことになります。

ベンチでの口論から州副知事の解任要求まで、積み上がってきた3か月

この構図には前段があります。5月30日、クラークとホワイトがベンチで激しくやり取りする様子がカメラに捉えられ、不仲説が広がりました。ところが2日後、クラークは自分から否定に回っています。昨季コネティカット戦で負傷した際にホワイトの腕の中で泣いたことを挙げ、外から見える一場面と実際の関係は別物だという趣旨を語りました。

そして8月8日のシカゴ・スカイ戦です。ディジョナイ・キャリントンのファウルはフレグラント2に格上げされ退場となりましたが、試合直後のホワイトのコメントが「自軍の選手をかばっていない」と受け取られました。批判は競技の外側にまで広がり、インディアナ州副知事のミカ・ベックウィスがIndyStar紙上でホワイトの解任を公然と求める事態にまで発展しています。11日の試合前にホワイトが質問を受けずに2分15秒の声明だけを読み上げたのは、その流れの延長線上でした。

ブーイングが向いていたのは、戦術ではありません

ここで冷静に数字を見ておきます。ホワイトは2023年の最優秀ヘッドコーチであり、フィーバーは21勝12敗で2連勝中です。プレーオフのシード争いでも上位に位置しています。采配や成績を根拠に解任を語る材料は、率直に言ってほとんど見当たりません。

つまり、あのブーイングはバスケットボールの中身に向けられたものではなく、「監督が選手を守らなかった」という物語に向けられたものでした。クラークの反論が戦術論ではなく、人間には感情があるという一点に集約されていたのも当然です。彼女は、私たちの世界は憎み合い分断することを好みすぎると述べ、それを見るのはつらいとも語っています。

筆者が最も重く見ているのは、これまでSNS上のテキストとして流れていた議論が、初めてアリーナの音になった点です。タイムライン上の批判は匿名でも成立しますが、ブーイングはチケットを買って会場に来た人の行為です。抽象的だった敵意が、実在する音として選手やコーチに届く段階に入りました。その夜に106点という今季屈指の攻撃が出たことは、皮肉であると同時に、この球団が現時点で持っている耐久力の証明でもあります。

次は8月14日のウィングス戦、ベッカーズとの再戦です

フィーバーは現地8月14日の金曜、午後7時30分開始でダラス・ウィングスをホームに迎えます。中継はIONです。相手にはペイジ・ベッカーズがいます。

ワールドカップによる中断が近づき、1試合の重みが増していく時期です。ホームの空気がこの一件を経てどう変わるのか、そしてブーイングを浴びたコーチをアリーナがどう迎えるのか。金曜の入場シーンは、スコア以上に見られる場面になりそうです。

引用:https://awfulannouncing.com/wnba/caitlin-clark-torches-fever-fans-booing-stephanie-white.html

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