ディジョナイ・キャリントン

第4クォーター残り8分47秒でコートサイドの男性が連れ出されました──キャリントンの申し立ては「根拠なし」と判断され、誰も理由を説明しないまま試合は再開しました

 

現地時間8月12日、サンフランシスコのチェイス・センターで行われたシカゴ・スカイ対ゴールデンステート・ヴァルキリーズで、試合が数分間止まりました。理由はファウルでもチャレンジでもありません。コートサイドに座っていた1人の男性客です。スカイのディジョナイ・キャリントンが審判に歩み寄って指を差し、警備がその男性を席から連れ出しました。ところが検証の結果、男性は同じ席に戻ってきます。申し立ては「根拠のないもの」と判断されたためでした。正直な第一印象を書くなら、誰も何が起きたのかを説明しないまま幕が下りた、後味の悪い数分間だったということです。

残り8分47秒で止まった試合、キャリントンは24分で3得点

第4クォーター残り8分47秒。キャリントンは審判のサラ・ウィリアムズのもとへ歩み寄り、コートサイドに座る男性客を指差しました。試合はそこで中断し、男性はスカイとアリーナの警備によって席から連れ出されます。しかし申し立てが検証されたあと、男性は席へ戻ることを許されました。ヴァルキリーズ関係者はClutchPointsに対し「協力的で、申し立ては根拠のないものでした」と説明しています。

キャリントンが具体的に何を訴えたのかは、いまも公表されていません。中継映像にも、その男性が何を言ったのか、あるいは何もしていないのかを判断できる場面は映っていませんでした。中継を担当したUSAネットワークのアナウンサーも中断中に、何が言われたのか自分には分からない、と率直に口にしています。スカイもWNBAもチェイス・センターも公には説明せず、キャリントン自身も試合後に詳細を語りませんでした。

試合そのものはヴァルキリーズが91対71で快勝し、24勝9敗として5連勝としています。キャリントンは24分の出場で3得点3リバウンド3ターンオーバーでした。2日前のストーム戦ではキャリアハイの26得点を挙げていただけに、この数字と中断の記憶だけが残ったのは本人にとっても不本意でしょう。

6日前にはヤングが、4日前にはフレグラント2がありました

似た光景は、この6日前にも起きています。8月6日、インディアナポリスのゲインブリッジ・フィールドハウスで行われたエーシズ対フィーバーです。第3クォーター残り4分38秒で試合が止まり、エーシズのベンチ近くに座っていた男性2人が警備によって席から連れ出されました。きっかけはジャッキー・ヤングが審判に伝えたことでした。ヤングは試合後、その観客が試合を通じて野次を飛ばし続け、一つ度を越したものがあったと語りましたが、具体的な言葉は繰り返していません。エーシズ側は不適切な発言があったとした一方、フィーバー側は警備が行動規範への違反を確認できなかったとし、当該のファンは自ら席を離れることを選んだと発表しました。試合はエーシズが86対84で延長を制し、エイジャ・ウィルソンが26得点13リバウンド、ヤングが22得点を記録しています(Just Women’s Sports)。

キャリントン本人をめぐる状況も穏やかではありません。8月8日のフィーバー戦では、速攻に走るソフィー・カニンガムを追いかけて顔から首にかけて腕を振り下ろし、当初のフレグラント1がリプレー検証でフレグラント2に格上げされて退場となりました。その後SNSに「WHITE PRIVILEGE」と投稿してフィーバーをタグ付けし、大きな論争を呼んでいます。本人はのちに、判定そのものを白人特権と結びつけたわけではないと説明し、カニンガムも人種とは関係ないと述べました(ESPN)。ただし、サンフランシスコのコートサイドにいた男性とこの一連の騒動を結びつける裏付けは、現時点で確認されていません。

「連れ出されたのに根拠がない」という結論こそが問題です

ここからは筆者の見立てです。今回の一件で最も引っかかるのは、男性が一度席から連れ出されたという事実と、申し立てが根拠のないものだったという結論が、同時に成立してしまっている点です。ヤングのときもまったく同じ構図でした。選手が指を差し、警備が動き、あとから違反はなかったと発表される。選手を守るために現場が素早く動くこと自体は正しいはずですが、事後の説明がないまま終わると、選手には過剰に反応したというレッテルが、観客には理由が分からないまま連れ出されたという不信が残ります。得をする人が誰もいない結末です。

WNBAが手をこまねいているわけではありません。7月にはシアトル・ストームの共同オーナーがコートサイドのファンに詰め寄り、罰金とホーム5試合の出場停止という異例の処分を受けました。8月13日には反ヘイト作業部会が声明を出しています。制度は確実に動いているのに、個々の現場で何が起きたのかは相変わらず外から見えません。必要なのは新しい罰則よりも、判断のプロセスと結論を最低限のかたちで開示する運用ではないでしょうか。不適切な発言があったのかなかったのか、その一点が公式に整理されるだけでも、こうした空白の数分間が毎週のように繰り返されることはなくなるはずです。

シーズン終盤に入り、コートサイドの距離の近さがWNBAの魅力であると同時に、リーグが向き合うべき課題にもなっています。観客との物理的な近さは他リーグにはない財産です。だからこそ、その距離を守る線引きを曖昧にしたままにはできません。

今後の見どころ

ヴァルキリーズは24勝9敗、直近5連勝と勢いに乗り、勝率7割超でリーグ上位につけています。一方のスカイは5試合で4敗と苦しい流れが続き、キャリントンはベンチからの出場が定着したまま役割が固まりきっていません。エーシズはミスティックス戦を制して8年連続となるプレーオフ進出を決めており、上位陣の顔ぶれは少しずつはっきりしてきました。残り試合が減っていくなかで、コート上の争いと同じくらい、こうしたコート外の一件がどう扱われるのかにも目を向けたいところです。

引用:https://www.hitc.com/dijonai-carrington-has-wnba-fan-removed-from-courtside-before-he-returns-after-unfounded-complaint/

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