キャンディー・パーカー

「27年前に始まったラブストーリーでした」──ボールを抱えて壇上に立ったパーカーが涙、レスリーからウィルソンへ渡されたトーチと殿堂入りの夜

 

現地時間8月15日の夜、マサチューセッツ州スプリングフィールドでネイスミス記念バスケットボール殿堂の2026年クラスが正式に殿堂入りを果たしました。壇上に上がったキャンディス・パーカーは、片手にバスケットボールを抱えていました。演説の相手はマイクの向こうの観客ではなく、その手の中のボールでした。女子バスケの歴史を作った人たちが同じ夜に並んだこの式典は、数字の羅列よりも先に「27年」という時間の重さを突きつけてくる内容でした。

ボールに語りかけたパーカー、「27年前に始まったラブストーリー」

パーカーはスピーチの冒頭でこう切り出しています。「今日ここに立っている理由そのものを持たずにステージに上がるのは、変な感じがしました」。手の中のボールに向けた言葉です。そこから彼女は、UConnのホームでUConn相手にダンクを決めたこと、右肩越しにシミーを入れてからフェイダウェイを沈めたこと、自分のシグネチャーシューズを持ったこと、女性として初めてNBA 2Kの表紙を飾ったことを、ひとつずつボールに向かって並べていきました。そして「私たちは初回投票での殿堂入り者としてこの壇上に立っている」と締めています。

締めくくりでは涙をこらえきれず、27年前に始まったラブストーリーになる運命だった、という趣旨の言葉を残しました。キャリアの数字は圧倒的です。WNBA優勝3回、リーグMVP2回、テネシー大学でのNCAA制覇2回、五輪金メダル2個。2008年には新人でありながらMVPを獲得し、これはWNBA史上ただ一人の記録として今も残っています。ロサンゼルス・スパークスで13年を過ごして2016年に優勝、その後は地元のシカゴ・スカイを2021年に球団史上唯一の優勝へ導き、2023年にはラスベガス・エーシズでも指輪を得ました。ただし2023年のプレーオフには左足の骨折で出場していません。

もうひとつ印象的だったのが、世代のバトンに触れた一節です。ルーキーとしてリサ・レスリーの偉大さの隣で始まり、去り際にはGOATであるエイジャ・ウィルソンにトーチを渡すことができた、とパーカーは語りました。レスリーからパーカーへ、パーカーからウィルソンへ。WNBA30年の歴史が、たった数秒の言葉で一本の線につながった瞬間でした。

デレ・ドンヌの「姉」、ホールズクローの「サミット」

同じ夜に殿堂入りしたエレナ・デレ・ドンヌのスピーチも、やはりバスケットボールへのラブレターでした。彼女はMVPを2015年と2019年に受賞し、2019年にはワシントン・ミスティックスを球団唯一の優勝へ導いています。フィールドゴール50%超、3ポイント40%超、フリースロー90%超を同一シーズンで達成した「50-40-90」は、WNBA史上で彼女が最初でした。

そのデレ・ドンヌが演説で最も時間を割いたのは、目と耳が不自由な姉のリジーの話でした。「彼女は何千人もの前でプレーしたことはないし、スタンディングオベーションを受けたことも、大勝のあとにインタビューされたこともありません。それでも私は彼女より強い人に会ったことがない」。声を詰まらせながらの言葉です。一方で会場にいた俳優のラリー・デイビッドに触れ、自分のスピーチが彼の決め台詞になぞらえて「かなり、かなり、かなり良い」ものであってほしいと軽口を挟む余裕も見せていました。デイビッドを紹介したのは、同じクラスで殿堂入りしたドック・リバースだったそうです。

シャミーク・ホールズクローは、恩師パット・サミットへの思いを前面に出しました。プレゼンターとしてここにいてほしかったのは、厳しくて、そして素晴らしく支えてくれた大学時代のコーチであるサミットだった、と語っています。サミットは2016年にアルツハイマー病との闘いの末に亡くなりました。ホールズクローはテネシー大学で1996年から1998年にかけて3連覇を達成し、1997-98シーズンは39勝0敗の完全優勝でした。1999年のドラフト全体1位でミスティックスに入団し、同年の新人王、通算6度のオールスター、2002年には得点とリバウンドの二冠を獲得しています。

そのホールズクローが「高校時代、部屋の壁にポスターを貼っていた」と語った相手が、同じ日に殿堂入りした1996年のアメリカ女子代表でした。あのチームを起点に、アメリカ女子は五輪8連覇という30年の支配を続けています。憧れた側と憧れられた側が同じ夜に肩を並べる構図は、この式典でしか成立しない光景でした。

「WNBAの選手が殿堂の主役になる」ことの意味

今回のクラスは9枠のうち4枠を女子バスケが占めました。パーカー、デレ・ドンヌ、ホールズクロー、そして1996年の代表チームです。NBA側もドック・リバース(通算1194勝はリーグ歴代6位)、マイク・ダントーニ、アマレ・スタウダマイヤー、審判のジョーイ・クロフォード、ゴンザガ大のマーク・フューと重量級が揃っていましたが、それでも夜の中心に女子バスケがあったことは、ここ数年のリーグの立ち位置の変化を象徴しています。

個人的に注目したいのは、パーカーが「トーチを渡した」と表現したウィルソンが、いままさに5個目のMVPを争っている最中だという同時性です。殿堂の夜に語られた継承の物語が、翌日にはリアルタイムのMVPレースとして更新されていきます。パーカーが新人MVPを獲った2008年から18年、今季はオリビア・マイルズがその領域に迫っています。歴史が「懐かしむ対象」ではなく「更新される基準」として機能している点こそ、いまのWNBAの熱量の正体だと感じます。

今後の見どころ

WNBAはレギュラーシーズン終盤に入り、プレーオフ進出とシード争いが同時に進んでいます。パーカーが最後に指輪を得たエーシズ、彼女が最初に頂点に立ったスパークス、デレ・ドンヌが優勝を届けてホールズクローが1位指名を受けたミスティックス。この夜の主役たちにゆかりのある球団の残り試合を追うと、また違った景色が見えてくるはずです。

引用:https://www.espn.com/espn/story/_/id/49623875/basketball-hof-class-2026-honors-women-hoops-nba-icons

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