アジア ウィングス

前半だけで球団記録に並びました──6日前に指揮官から突き放されたクイエルが、7ブロックでウィングスを救った夜

 

8月20日にアメリカン・エアラインズ・センターで行われたウィングス対フィーバーは、ダラスが91対85で競り勝ちました。この試合の話題はケルシー・ミッチェルの21試合連続20得点というWNBA新記録に集まりましたが、勝敗を分けた働きをしたのは別の選手です。11得点8リバウンド4アシスト、そして7ブロック。アワク・クイエルが積み上げたこの7本は、ウィングスの球団新記録でした。しかもこの選手は、わずか6日前に自軍のヘッドコーチから公の場で突き放されたばかりでした。速報として飛び込んできた記録の裏側に、これほど落差のある物語が転がっているケースはそう多くありません。

前半だけで5本、最終的に7本というブロックの中身

クイエルはフィールドゴール8本中4本で11得点、8リバウンド、4アシストを記録しました。数字の主役はやはりブロックです。従来のウィングス球団記録は1試合5本で、クイエルはそれを前半だけで達成しました。1つのハーフで5ブロックを記録したのは球団史上初めてです。第3クォーターを終えた時点で11得点5リバウンド3アシスト6ブロックに到達し、最終的に7本まで伸ばしました。

効いたのはウィークサイドからのヘルプでした。フィーバーのガード陣が最初のディフェンダーを抜いてペイントに入っても、そこにはクイエルが先回りしている。この夜のフィーバーのペイント内得点は28点にとどまりました。今季ここまでの2度の対戦では、2試合合計でフィーバーがダラスをペイント内112対80と圧倒していたことを考えると、数字の変わりようは劇的です。攻撃でも第2クォーターに3ポイントを沈め、ダラスにこの試合初めてのリードをもたらしました。

試合後、ホセ・フェルナンデスは「彼女は素晴らしかったです」と語っています。ウイングでプレーしてきた身体能力と汎用性が相手の攻撃を混乱させた、というのが指揮官の見立てでした。クイエル本人は、相手にドライブの得意な選手が多いからこそ、間に合うようにペイントへ入ることを意識したと説明しています。

6日前、同じ相手に敗れた夜に指揮官が口にしたこと

この称賛が驚きをもって受け止められたのには理由があります。8月14日、ウィングスは同じフィーバーに87対98で敗れました。その試合でもクイエルは3ブロックを記録し、守備で存在感を示していました。ところが試合後の会見でクイエルの働きについて問われたフェルナンデスは、数秒間の沈黙のあとに「アワクについて聞いたの?」と聞き返し、続けてゴールデンステートへ行けばリバウンドを取ってゴール下を守る良い機会があるだろうという趣旨の発言をしたと、ハイポストフープスが報じています。事実上、うちでは出番を約束できないと受け取れる言葉でした。

クイエルの経歴を振り返ると、この扱いの重さがわかります。2021年のドラフト全体2位でウィングスに指名され、フィンランド出身として初めてWNBAの舞台に立った選手です。3シーズンを過ごしたあとヨーロッパへ戻り、2025-26シーズンはトルコのガラタサライで12.9得点6.3リバウンド2.0ブロックを残し、ユーロリーグの最優秀守備選手賞の最終候補にも名を連ねました。ダラスが彼女を呼び戻したのは2026年4月11日です。復帰後の起用は平均16.3分と限定的で、その中で1試合平均1.2ブロック。出場時間あたりの生産性は明らかに高い水準でした。

チーム事情も後押しします。エイジャ・ウィルソンと最優秀守備選手を分け合ったアラナ・スミスは今季0.7スティール0.5ブロックと2021年以来の低い数字にとどまり、14.2得点11.4リバウンドと数字を残すジェシカ・シェパードのブロックはシーズン通算で2本です。リムを守れる選手が足りないという課題は、シーズンを通してダラスにつきまとってきました。その穴を埋められる可能性がある選手を、ベンチに置き続けていたことになります。

スイッチできる長身が、残り試合のダラスに何をもたらすか

この7ブロックが単なる一夜の爆発で終わらない理由は、フェルナンデス自身の言葉の中にあります。指揮官はクイエルが1番から3番、3番から5番までスイッチできる点を挙げ、この夜に試した新しいラインナップが機能する根拠だと説明しました。つまり記録そのものよりも、彼女がいることでディフェンスの設計図が広がるという話です。リムプロテクターを置きながらスイッチもできる布陣は、プレーオフの短期決戦でこそ価値が出ます。

ウィングスはこの勝利で連敗を止め、21勝16敗としました。今季全体1位指名のアジー・ファッドを膝の負傷で失い、攻撃面の上積みが難しくなった今、残り試合で順位を上げる現実的な手段は守備の改善です。平均16.3分という起用をどこまで伸ばすのか。指揮官が6日前の自分の言葉をどう修正するのか。7ブロックの夜は、ダラスの残りシーズンの設計そのものに問いを突きつけたと言えます。

今後の見どころ

レギュラーシーズンは残りわずかで、ウィングスは西の中位からプレーオフの椅子を争う位置にいます。注目したいのは、クイエルの出場時間と、彼女とスミス、シェパードを組み合わせたフロントコートの守備数値です。ペイント内失点をこの試合の28点に近い水準で抑えられる夜が続くなら、ダラスはポストシーズンで嫌な相手になります。逆に出場時間が元の水準に戻るようなら、この球団記録は「一夜の花火」として片づけられてしまうかもしれません。

引用:https://dallassportsjournal.com/awak-kuier-dallas-wings-blocks-record-indiana-fever/

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