アリッサ・トーマス

「殺害予告まで出ている」トーマスがエンゲルバートを公然批判、クラーク騒動が“選手の命”を脅かす異常事態に

 

WNBAで最も攻撃的なフォワードの一人が、コート上の接触プレーをきっかけに「命の危険」を訴える事態になりました。先週のフィーバー戦でクラークの喉元に拳を押し当てたとして1試合の出場停止処分を受けたマーキュリーのトーマスが、処分後に自身とチームメイトへ殺害予告や人種差別的な中傷が殺到していることを明かし、コミッショナーのエンゲルバートを名指しで批判したのです。バスケットボールの一プレーが、なぜここまで醜い憎悪に発展してしまったのか。リーグが長年抱える構造的な問題が、改めて浮き彫りになりました。

殺害予告と人種差別、処分の10分前まで知らされず

問題のプレーが起きたのは先週のフィーバー戦、第2クォーター残り6分52秒の場面でした。倒れ込んだクラークからボールを奪おうとしたトーマスが、その拳をクラークの喉に押し当てた形です。この時、審判は笛を吹きませんでしたが、WNBAは試合後に映像を検証し、これを「バスケットボール以外の行為」と判断。遡ってフラグラント2(悪質なファウル)を科し、規定により自動的に1試合の出場停止が言い渡されました。

火曜日、練習施設で報道陣の取材に応じたトーマスは、このプレーを「完全な事故」と説明したうえで、処分そのものよりも自分たちの安全が脅かされている現状に強い危機感を示しました。6度のオールスター選出を誇るベテランは、出場停止の決定を「発表される10分前まで知らなかった」とも明かしています。「バスケットボールのことでここまでになるのは残念だ」と語り、住所を晒されたり、プレーと無関係な画像を送りつけられたりしていると訴えました。

クラークを巡る“炎上”の系譜、繰り返される安全問題

今回の騒動は、決して突発的なものではありません。クラークが絡むプレーには、これまでも過剰なほどの反応が繰り返されてきました。2025年6月にはサンのシェルドンやメイブリーとの乱闘騒ぎがあり、クラークを守る形でカニンガムがフラグラント2を受けています。さらにさかのぼれば、ルーキーイヤーの2024年にはカリントンにより目を負傷する場面もありました。

こうした一連の出来事の背景には、審判の判定を巡る不信感が横たわっています。急成長を続けるリーグの人気と収益に、コート上の安全確保が追いついていないという指摘は根強いものです。かつてエンゲルバートは、クラークとリースの対立をバードとマジック・ジョンソンの構図になぞらえ、リーグ成長の“資産”と位置づけました。しかし、その「ライバル関係」が生む熱狂の裏側で、選手個人が浴びる中傷はもはや看過できない水準に達しています。

エンゲルバートは声明を発表、それでも残る根深い課題

トーマスの発言を受け、エンゲルバートは同日中に声明を発表しました。「WNBAはあらゆる形の憎悪を断固として非難する」とし、リーグとセキュリティチームがマーキュリー側と連絡を取り合っていると強調しています。ESPNによれば、両者は先週の段階でテキストメッセージのやり取りを交わしており、エンゲルバートは脅迫の情報を把握した後、リーグのセキュリティにフェニックス側との連携を指示していたとされます。

それでも、当事者であるトーマスが公の場でここまで踏み込んだ意味は小さくありません。処分の運用プロセスの不透明さ、そして選手を守る仕組みの脆弱さは、リーグが本気で向き合わなければならない宿題です。コート上の接触には迅速に処分を下す一方で、コート外で選手の命が脅かされる状況を放置しては、本末転倒との批判は免れないでしょう。

今後の見どころ、7月9日にフィーバーと再戦

トーマスは土曜日のトロント・テンポ戦で出場停止処分を消化し、すでにコートへ復帰しています。そしてマーキュリーとフィーバーは、7月9日にフェニックスで再び対戦する予定です。因縁の一戦がどのような雰囲気の中で行われるのか、そしてリーグが選手保護に向けて具体的な一歩を踏み出すのか。コートの内外から目が離せません。

引用:ESPN

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