WNBAで負傷者の増加が止まりません。米メディアThe IX Sportsが7月9日(現地時間)に公開した調査によると、2026年シーズンの負傷件数と負傷による欠場試合数は、同メディアが集計を始めた2023年以降で最悪のペースで推移しているとのことです。リーグが球団拡張と過密日程のなかを走り続けるいま、この数字は単なる不運では片づけられない警告のように感じます。
発生率は昨季を約2割上回る──膝の負傷だけで欠場283試合
調査によれば、7月9日時点で今季の負傷は合計178件、負傷による欠場は延べ644試合にのぼります。選手出場試合1,000あたりに換算すると負傷55.7件・欠場201.5試合となり、いずれも過去最悪だった2025年の46.6件・178.8試合を約2割も上回るペースです(今季のリーグ全体の選手出場試合数は3,196)。
部位別では脚29件・膝29件・足首26件で全体の47.2%を占め、なかでも膝の負傷による欠場は283試合と全体の43.9%に達しています。膝以外で欠場90試合を超えたのは足(94試合)のみで、下半身への負担がいかに深刻かが分かります。チーム別では新設のポートランド・ファイアが最多の21件を記録。欠場試合数ではシカゴ・スカイの90を筆頭に、ミネソタ・リンクス86、シアトル・ストーム84と続き、この3チームはいずれも複数または重度の膝の負傷に見舞われているという共通点があります。
2年連続の増加、現場の指揮官たちも「原因不明」
見逃せないのは、負傷の増加が今季に始まった話ではないことです。2025年も総数252件・欠場967試合と当時の過去最多を更新しており、今季はその発生率をさらに塗り替えようとしています。トロント・テンポのサンディ・ブロンデロHCは「正直、私にも分からない」と率直に語り、ゴールデンステート・ヴァルキリーズのナタリー・ナカセHCは、ドラフトやトレーニングキャンプ前の日程が例年より詰まったことによる準備不足の可能性を推測として挙げました。ミネソタ・リンクスのシェリル・リーブHCも試合数の増加と負傷の関係を示唆するにとどまり、明確な答えを持つ関係者は見当たりません。
実際にここ数日だけでも、コネチカット・サンのサニヤ・リバースが足首の激しい捻挫で車いすに乗せられてコートを去り、背中の負傷から復帰したばかりのケイトリン・クラークには厳格な出場時間制限が課されるなど、負傷にまつわる話題が連日リーグを揺らしています。今季からポートランドとトロントの2球団が加わって15球団体制となり、リーグ全体の試合数が増えたことも、総数を押し上げる構造的な要因といえるでしょう。
「なぜ起きたか」より「どう予測するか」──非線形という新しい視点
この調査で特に興味深いのは、理学療法士でもある筆者ルーカス・シーハファーが提示した分析の枠組みです。従来の負傷予防は、日程・筋力・疲労・睡眠といった個々の要因を足し算で捉える線形的な発想が主流でした。しかし、同じカットの動作を何千回も繰り返してきた選手がある日突然ACLを断裂するように、負傷は無数の要因が複雑に絡み合った末に突然「創発」する非線形の現象だという見方です。気象予報や感染症の流行予測で実績のあるこの数理的手法は、スポーツの現場ではまだ理論段階にとどまります。
ただ、発生率が2年連続で悪化している以上、従来のアプローチだけでは限界が来ているのは明らかです。個人的には、データによる負傷予測の仕組みづくりと並行して、ロスター枠の拡大こそ最も現実的な緩和策ではないかと感じます。主力が欠けるたびに残った選手の負荷が跳ね上がる現在の構造では、負の連鎖は断ち切れません。この問題は今後の労使交渉や球団拡張の議論にも直結するテーマになるはずです。
今後の注目ポイント
7月後半にはオールスターが控えており、各チームにとって主力のコンディション管理はまさに正念場を迎えます。長期離脱中のケルシー・プラムの回復状況や、出場時間制限が続くクラークの起用法、そして負傷者が集中するスカイ、リンクス、ストームの戦いぶりに引き続き注目です。

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