日本時間8月10日未明にブルックリンで行われたリバティ対エーシズは、111対71という一方的なスコアで終わりました。ABCの全米中継が組まれた今季屈指のカードにもかかわらず、エーシズはエイジャ・ウィルソン、チェルシー・グレイ、ジャッキー・ヤングの3人をそろって欠場させています。しかも理由は故障ではなく、休養でした。試合後、ベッキー・ハモンHCはこの判断をまったくぶらさずに擁護しています。プレーオフの順位争いが最も熱を帯びる時期に「負けを受け入れる」と言い切った指揮官の言葉は、単なる一敗の言い訳ではなく、拡大を続けるWNBAの日程そのものに向けられた問題提起だと感じました。
先発3人で合計8得点、40点差は球団史上2番目に大きい敗戦タイ
エーシズは主力3人が抜けたことで、1試合平均にして57得点分の戦力を失った状態で試合に入りました。代わりに先発したブリアナ・ターナー、ダナ・エバンス、ジュエル・ロイドの3人は合計8得点にとどまりました。リバティは立ち上がりの5得点を連取すると、第1クオーターを24対15、前半を50対39で折り返します。第3クオーターに入っても最初の7点を奪い、うち5点はレベッカ・アレンでした。ラスベガスは第3クオーターの立ち上がり5分37秒間まったく得点できず、ようやく点が入ったのはナリッサ・スミスのレイアップです。
リバティ側の主役はベンチから出たマリーン・ヨハネスで、3ポイント13本中7本を沈めて自己最多の27得点を挙げました。ジョンクェル・ジョーンズが15得点8リバウンド、ブレアナ・ステュワートが14得点を挙げた一方、サブリナ・アイオネスクは10本中2本の5得点にとどまりました。それでも第3クオーター残り3分48秒に16点差がついた時点で、クリス・デマルコHCはステュワートを除く先発全員をベンチに下げています。エーシズ側はタニヤ・ラトソンの20得点、山本麻衣の16得点と、ベンチ組が得点源になりました。ESPNリサーチによれば、この40点差は球団史上2番目に大きい敗戦のタイ記録です。
3人同時欠場は2024年最終戦以来、日程は32試合から50試合へ
ウィルソン、グレイ、ヤングが同じ試合をそろって欠場したのは、2024年のレギュラーシーズン最終戦だったウィングス戦以来のことでした。その試合はエーシズが98対84で快勝しています。つまり今回は、勝敗を捨てる覚悟が伴う点で意味合いがまるで違います。
背景にあるのは日程の密度です。エーシズは5連戦のロードトリップの最終戦としてブルックリンに入り、前日の土曜は東部時間13時開始でミネソタと戦っていました。日曜のブルックリンは12時30分開始ですから、試合開始の間隔は24時間を切っています。新しい労使協定は、バックトゥバックの1試合目と2試合目の開始予定時刻の間に少なくとも20時間を空けるよう「合理的かつ誠実な努力」をすると定めており、リーグ側はNBAと同様に最低22時間・移動は1タイムゾーン以内というガイドラインで運用しています。同じ日曜にバックトゥバックを戦ったリンクスが、本拠地で15時30分開始だったことと比べると、条件の差は明白です。
試合数そのものも増え続けています。2021年の32試合が2022年に36試合、2023年と2024年は40試合、そして昨季と今季は44試合となっています。2027年には50試合へ拡大する予定です。ハモンは「選手の健康と安全が最優先です」と述べたうえで、大きな試合であることは理解しているが公平さは担保されるべきだ、という趣旨の注文をリーグに投げかけました。
1回戦でいきなり再戦の可能性、そしてワールドカップという事情
この敗戦でエーシズは22勝11敗となり、26勝7敗の首位リンクスとは4ゲーム差の3位です。一方のリバティは20勝13敗で6位に浮上し、4連勝、直近8試合で7勝と調子を上げています。日曜終了時点の順位のままシーズンが終われば、プレーオフ1回戦の組み合わせはエーシズ対リバティになります。つまりこの日の40点差は、そのままシリーズの前哨戦になり得たカードでした。
それでも休ませた理由として、ウィルソン、グレイ、ヤングの3人が来月のFIBAワールドカップに参加する見込みで、リーグが中断する期間も休養にはならない点が指摘されています。ここが今回の判断の肝だと考えます。従来なら中断期間が回復に充てられましたが、代表活動が入る選手にとって夏の中断は休みではありません。だとすればレギュラーシーズンの中で休養日を確保するしかなく、その皺寄せが全米中継の看板カードに出てしまいます。リバティのジョーンズも、チケットを買ったファンの前でプレーしたい気持ちと体を守る必要のはざまで揺れる胸中を語り、対戦相手として主力と当たれなかったことへの残念さを口にしています。44試合でこの状況なら、50試合になる2027年には何が起きるのでしょうか。放映権とチケットの価値を守りたいリーグにとって、これは順位表よりも重い宿題ではないでしょうか。
山本麻衣の16得点と、火曜からの日程
日本のファンにとって見逃せないのは、山本麻衣の16得点です。この試合の前まで、山本のWNBAでの通算記録は2試合・出場5分・3得点でした。まとまった出場時間を得た初めての試合で、いきなり2桁得点に到達した形になります。主力3人の休養がなければ生まれなかった数字ではありますが、与えられた時間で結果を出した事実は変わりません。
なお、この日は30周年を記念してリバティが往年の選手を表彰し、かつてリバティでプレーしたハモンも紹介されて、元チームメイトたちがラスベガスのベンチまで歩み寄る場面がありました。次戦は火曜、エーシズがホームでミスティックスと、リバティは敵地でフィーバーと対戦します。休養が「back endで配当を生む」というハモンの読みが正しかったかどうかは、この火曜から始まる終盤戦で答えが出るはずです。
引用:https://sports.yahoo.com/articles/becky-hammon-defends-load-management-214602320.html

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