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「このリーグほどコミッショナーを必要としている場所はない」──ビル・シモンズがWNBA首脳陣に突きつけた一言と、来季エンゲルバートはいないほうに賭けるという予言

 

リーグの外から飛んできた一言が、週明けのWNBAをざわつかせています。ポッドキャスト「ザ・リンガー」を率いるビル・シモンズが、いまのWNBAに最も足りないものはコミッショナーだと言い切りました。現地8月10日にクラッチポインツが伝えた内容で、名指しは避けているものの、矛先が現職のキャシー・エンゲルバートに向いていることは誰の目にも明らかです。第一報を読んで感じたのは、これが単なる外野の暴言ではなく、この夏のWNBAで起きた出来事を一本の線でつないだ指摘だということでした。

「リーグは本当に面白いのに、話題になるのは別のことばかり」

シモンズの不満は大きく三つに分かれます。一つ目は、WNBAがいつのまにかSNSの言い争いの場になってしまったという指摘です。二つ目は、これほど深い選手層と面白い物語を抱えているのに、リーグ自身がスターを押し出そうとしないという批判です。三つ目は、その結果として運営側が次々と地雷を踏んでいる、という見立てでした。

なかでも刺さったのが「いまWNBAほどコミッショナーを必要としているリーグはない」という一文です。しかも、来季このコミッショナーはいないほうに何でも賭けると言い添えています。外部の評論家がここまで踏み込むのは珍しいことです。

皮肉なのは、商品としてのWNBAが絶好調だという点です。リーグは7月末の時点で今季を史上最も見られたシーズンだと発表しており、シーズン折り返しでユニーク視聴者数は7300万人に到達しました。1試合平均の視聴者数は全放送局合計で74万2000人、前年比では12%増です。観客動員も16%増で、29試合が視聴者100万人を超えました。シカゴで開催されたオールスターには1万9783人が詰めかけ、観客数でNBAのオールスターを初めて上回っています。7月10日にはトロント・テンポがモントリオールのベルセンターで2万996人を集め、レギュラーシーズンの最多入場記録を塗り替えました。

7月から宙に浮いたままのエンゲルバートの去就

シモンズの発言が空振りに聞こえないのは、下地がすでにできあがっているからです。エンゲルバートはオールスター期間の会見で2027年以降も職にとどまるのかと問われ、明言を避けました。契約は2026年シーズン後に満了する見込みで、ESPNは複数の球団関係者が今季を最後と見ているという内容を報じています。上司にあたるNBAのアダム・シルバーも、現状の評価は口にしつつ、将来については継続して話し合うという言い方にとどめています。

選手側からの視線も厳しいものでした。リンクスのナフィーサ・コリアーは昨季の総括の場で、リーグのフロントオフィスを世界最悪のリーダーシップだと表現しています。批判の材料は審判の質、オンライン上の誹謗中傷への対応、選手の安全と、ここ二年で確実に積み上がってきました。

ただし、功績を無視するのはフェアではありません。今年3月に大筋合意し5月に発効した新しい労使協定は、2026年から2032年までの7年契約で、6年目にオプトアウトが設定されています。サラリーキャップは今季700万ドル、最高年俸は140万ドルで、2032年には240万ドル超まで伸びる設計です。平均年俸は58万3000ドル、最低年俸も27万ドルから30万ドルの水準まで引き上げられました。7年間で選手の報酬と福利厚生に投じられる総額は10億ドルを超える見込みで、女子プロスポーツで初めての本格的なレベニューシェア型のモデルでもあります。数字だけを見れば、リーグは間違いなく史上最良の位置にいます。

良い商品と悪い物語が同居している、というのが今季の実像

ここからは筆者の見立てです。シモンズの批判が的を射ているとすれば、それは経営の失敗を突いているからではなく、注目の使い道を突いているからだと思います。視聴者7300万人という数字は、裏を返せば「WNBAについて語る人」がそれだけ増えたということです。そのなかにはバスケットボールを見ていない人も当然含まれます。パイが大きくなるほど、リーグの物語を自分の目的のために使いたい外部の声も増えていきます。この構造は、注目度が上がった競技が必ず一度は通る道でしょう。

その現実を象徴していたのが、この週末でした。8月9日にリンクスのケイラ・マクブライドが1試合で3ポイントを10本沈め、WNBA史上誰も届かなかった数字に到達しています。試投14本で10本という常識外れの内容でしたが、タイムライン上での扱いは、コート外の騒動のほうがはるかに大きいものでした。シモンズが言う「面白い話が埋もれている」とは、まさにこういう状態を指しているはずです。

だとすれば、次のコミッショナーが誰になるかという人事の話よりも、リーグが何を主語にして語るのかという設計のほうが重い課題になります。エイジャ・ウィルソン、ケイトリン・クラーク、ペイジ・ベッカーズ、オリビア・マイルズと、押し出せる名前は十分すぎるほど揃っています。それでも押し出せていないのだとしたら、原因は素材ではなく編集方針の側にあります。7年契約の労使協定で選手への分配は確保されました。次に確保すべきは、その選手たちが何で語られるかという部分なのだと思います。

今後の見どころと関連情報

リーグは30周年シーズンの終盤に入り、プレーオフ進出争いも佳境を迎えています。エンゲルバートの去就がいつ、どのような形で明らかになるのかは、レギュラーシーズン終了後からオフシーズンにかけての最大の関心事になりそうです。今後の試合日程や中継予定はWNBA公式サイト(https://www.wnba.com/)の公式記録で確認できます。

少なくとも今回は、リーグの外側にいる人間が「中身はこんなに面白いのに」という前置きから入った批判でした。その前置きが消える前に手を打てるかどうかが、分かれ目になる気がします。

引用:https://clutchpoints.com/wnba/wnba-stories/wnba-news-bill-simmons-delivers-blunt-message-about-the-leagues-leadership

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