ミネソタ・リンクスのルーキー、オリビア・マイルズが、またひとつケイトリン・クラークの名前が刻まれていた記録を書き換えました。8月12日のポートランド・ファイア戦で13得点7アシストを積み上げ、シーズン通算が653得点200アシストに到達。650得点200アシストへの到達スピードとしてはWNBA史上最速で、クラークが2024年のルーキーシーズンに33試合を要したところを、マイルズは32試合で通り抜けています。
差はたった1試合です。数字の見出しとしては地味に映るかもしれません。それでも、この夏のリーグでいちばん静かに、いちばん確実に積み上がっている記録がこれだと感じます。派手な40得点でも劇的なブザービーターでもなく、毎試合20点前後と6アシスト前後を落とさずに続けた結果として、史上最速という言葉がついてきました。
32試合で653得点200アシスト、数字が語るマイルズの現在地
ポートランド戦のマイルズは13得点7アシスト。この日の数字自体は彼女の平均を下回りますが、通算653得点を32試合で割ると1試合平均は約20.4得点、200アシストは1試合平均約6.3アシストになります。ルーキーがこの水準を4か月近く維持していること自体が異例です。
今季のマイルズはすでにいくつかの記録に名前を残しています。6月4日には1試合で3ポイントを8本沈め、ルーキーの1試合3ポイント成功数としてWNBA新記録を樹立。この試合ではキャリアハイの28得点7アシストを記録しました。月間最優秀新人賞も複数回受賞し、新人王レースは早い段階で独走状態に入っています。
そしてチームも強い。リンクスは8月13日時点で27勝7敗、西地区の首位に立っています。ナフィーサ・コリアーが長期離脱していた期間に首位をキープしたのは、マイルズがゲームをコントロールできる本物のポイントガードだったからです。復帰後のコリアーが1試合平均18.3得点を戻してきたことで、チームの得点源はさらに厚くなりました。
クラークの2024年と何が違うのか──40試合と44試合という前提
比較対象となるクラークのルーキーシーズンは、40試合で769得点337アシスト、1試合平均19.2得点8.4アシストという内容でした。2026年のレギュラーシーズンは44試合制です。つまりマイルズには、クラークより4試合多く積み上げる機会があります。
この前提は無視できません。総得点の記録だけを見れば、マイルズが769得点を超える可能性は十分にありますが、それは試合数の増加に助けられた側面があります。一方で1試合平均という物差しに切り替えると、約20.4得点はクラークの19.2得点を上回っており、単純な「試合数のおかげ」では説明しきれない水準に来ています。
ただしアシストは話が別です。クラークの1試合平均8.4アシスト、通算337アシストという数字は、44試合制の今季をもってしても簡単には届きません。マイルズのペースだと通算260前後が現実的なラインで、ここは明確にクラークが上です。得点効率と組み立ての総量、どちらを重く見るかで評価が割れるのは当然だと思います。
元記事は「1試合だけでもクラークの記録を上回ったことは、彼女が誰かの後を追っているだけではないことを示しています」と書いています(HITC)。
新人王で終わらせない──コリアー復帰後に試される本当の価値
ここからのマイルズにとって重要なのは、記録そのものよりも役割の変化にどう適応するかです。コリアーが戻ったことで、マイルズがボールを持つ時間と自分で仕掛ける回数は確実に減ります。得点の積み上げペースは落ちる可能性が高く、総得点でクラークの769得点に届くかどうかは、残り試合の起用法次第という不確定要素が残ります。
逆に言えば、ここでアシスト数を伸ばせるなら、マイルズの評価はもう一段上がります。コリアーという明確なフィニッシャーが隣にいる状況で6アシストを7、8へと積み上げられるかどうかは、彼女が「得点できるルーキー」なのか「チームを動かせる司令塔」なのかを分ける分水嶺です。個人的には、記録の数字よりもこちらの推移のほうが来季以降を占う材料になると見ています。
もうひとつ触れておきたいのは、新人王の枠を越えたMVP級の評価が現実味を帯びている点です。リーグ最高勝率のチームで最も長くボールを持つルーキーというのは、過去を振り返ってもほとんど例がありません。エイジャ・ウィルソンという圧倒的な本命がいる今季、票が集まるかは別問題ですが、名前が挙がること自体がすでに事件だと言えます。
残り試合とプレーオフ、注目したいポイント
リンクスはすでにプレーオフ進出を決めており、ここからは西地区首位と全体1位シードの確保、そしてコリアーとマイルズを組み合わせた新しい形の完成度を高める期間に入ります。マイルズの記録更新ペースを追うなら、1試合平均20得点をキープできるかと、アシストが増えるかの2点を見ておくと変化がわかりやすいはずです。
そしてポストシーズン。レギュラーシーズンでどれだけ数字を残しても、ルーキーの真価が問われるのは短期決戦です。クラークもベッカーズも通ってきた道を、マイルズがどんな顔で歩くのか。リンクスの試合は今後も全国中継の対象になる機会が多く、日本からも配信で追いかけやすい状況が続きます。

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