満員のベオグラード・アリーナで、現役最高のビッグマン2人が真正面からぶつかりました。8月20日に行われた強化試合で、ニコラ・ヨキッチ率いるセルビアがウェンバンヤマのフランスを90対87で振り切っています。スコアだけ見れば3点差の接戦ですが、内容を追うと勝敗を分けたのは終始ヨキッチの手綱さばきでした。オフシーズンの親善試合という位置づけながら、これほど生々しい主導権争いが見られるのは代表ウィンドウならではです。
20得点9リバウンド8アシスト、PIR33という数字の意味
ヨキッチのスタッツラインは20得点9リバウンド8アシスト3スティールで、トリプルダブルまであと1リバウンド1アシストという内容でした。ヨーロッパの試合で使われる総合評価指標PIRは33に達しています。PIRは得点やリバウンドなどのプラス要素からミスを差し引いた数値で、ユーロリーグでも1試合30を超えれば圧倒的な支配と評価される水準です。親善試合の1つでその数字を積むあたりが、いかにもヨキッチらしいところでした。
対するウェンバンヤマは10得点5リバウンドにとどまり、6つのターンオーバーを喫しています。得点よりも、この6という数字のほうが深刻です。セルビアがヨキッチを軸にウェンバンヤマの周囲を厚くし、ボールを持った瞬間に手を出す設計をしていたことがうかがえます。身長で優位に立てない相手と組み合ったとき、ウェンバンヤマがどうボールを守るかという課題が、そのまま数字に出た形でした。
試合展開も終盤まで動きがありました。セルビアは第4クォーターに入る時点で72対62とリードし、残り3分すぎには12点差まで広げます。ところがフランスがそこから猛烈に押し返し、点差を3まで縮めました。最後は同点を狙ったウェンバンヤマのシュートが決まらず、セルビアがフリースローで逃げ切っています。3点差という最終スコアは、フランスの意地の産物でした。
主将就任の直後に突きつけられた宿題
この一戦には、もう1つの文脈があります。ウェンバンヤマは今回のFIBAウィンドウに向けて、フランス代表の主将に指名されたばかりでした。パリ五輪以来となる代表復帰であり、しかも今度は腕章を巻く立場です。その最初の実戦が、現役最高峰との真っ向勝負だったわけです。
ヨキッチとウェンバンヤマの対戦は、NBAでも代表でもたびたび注目を集めてきました。両者の比較でいつも話題になるのは、ウェンバンヤマの規格外の身体能力に対し、ヨキッチは体格でも跳躍力でも上回っていないという点です。それでもヨキッチが優位に立つのは、パスの角度とタイミング、そしてポジション取りという、数字に表れにくい部分の精度が段違いだからです。今回の3スティールも、読みの鋭さの表れといえます。
ウェンバンヤマ側から見れば、これは決して悲観すべき結果ではありません。むしろ本大会前に自分の弱点をはっきり突きつけられたことは、大きな収穫でした。ダブルチームを受けたときの初動、ハイポストでのボールの置き方、そしてヘルプが来る前にリリースする判断。修正すべき項目は明確です。
NBAシーズンへの伏線としての代表ウィンドウ
ここからは独自の見立てになります。この試合が興味深いのは、来季のNBAをめぐる評価と地続きだからです。ウェンバンヤマは開幕時点で最有力級のMVP候補に挙げられる存在ですが、そのシナリオが崩れるとすればターンオーバーとファウルトラブル、つまり自分でリズムを壊す類のミスからだと私は考えています。ベオグラードで出た6ターンオーバーは、まさにその予兆的なサンプルでした。
一方のヨキッチは、ナゲッツがこの夏にペイトン・ワトソンを放出したことで、周囲の若手が入れ替わる状況に置かれています。代表の舞台でこれだけの数字を出せる状態を維持していること自体が、デンバーにとっては何よりの安心材料でしょう。31歳を迎えた今も、支配力に衰えは見えません。
2人はこのまま別れるわけではありません。セルビアとフランスは8月23日にオルレアンで再戦する予定です。今度はフランスのホームであり、ウェンバンヤマにとっては主将として最初の借りを返す場になります。ベオグラードで見せた守り方をセルビアが繰り返すのか、それともフランスがスクリーンの掛け方を変えてくるのか。戦術的な読み合いという意味でも、続編のほうが面白くなりそうです。
今後の観戦情報
FIBAの公式サイトや各国協会の発表では、今回のウィンドウの日程と放送予定が随時更新されています。日本のファンにとっては時差の関係で深夜から早朝の配信になりますが、ヨキッチとウェンバンヤマが同じコートに立つ機会はシーズン中でも年に数試合しかありません。8月23日のオルレアンでの再戦は、追いかける価値のある一戦だといえます。

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