WNBAで最も勝っているチームの持ち主が、シーズン終盤のこのタイミングで変わることになりました。8月21日、投資会社ドラゴニアの創業者であるマーク・スタッドが、マーク・ロアの持つ支配株を買い取り、NBAのミネソタ・ティンバーウルブズとWNBAのミネソタ・リンクスの筆頭株主になることで合意したと複数の米メディアが報じています。評価額は45億ドル。1ドル150円で換算すればおよそ6750億円という規模です。
正直なところ、第一印象は「またか」でした。今月に入ってからレイカーズが125億ドルで再売却され、その余韻が冷めないうちに今度はウルブズとリンクスです。ただ、リンクスのファンにとってこれは他人事の資本移動ではありません。オーナーが誰かという話は、そのまま来季以降の補強予算と施設投資の話に直結するからです。
45億ドルという数字と、動いた3人の役割
報じられている取引の骨格はこうです。スタッドがロアの保有分の大半を取得して支配株主になり、ロアは限定的な出資者として残ります。共同オーナーのアレックス・ロドリゲスは引き続き共同オーナーの立場にとどまり、持ち分をむしろ増やす方向だと伝えられています。そしてスタッドの妻であるエリサ・スタッドが、ティンバーウルブズのガバナー(リーグ理事会に出席する代表者)に就く見込みです。取引はリーグの承認待ちの段階にあります。
45億ドルという評価額は、NBAの球団売却としては歴代4番目の規模です。上には2025年のセルティックス(61億ドル)と、この1年で2度売られたレイカーズ(100億ドル、そして125億ドル)しかありません。リンクスはその取引に含まれる形で新しい体制へ移ります。3人が連名で出した声明の中には「私たちの優先事項は、これからも常に優勝です」という一文がありました(Yahoo Sports)。
1年余りで手放したロアと、5年前から中にいたスタッド
意外に感じる人が多いのは、ロアが支配権を握っていた期間の短さでしょう。グレン・テイラーからの段階的な譲渡が完全に決着したのがようやく昨年で、そこから1年あまりで手放す判断をしたことになります。理由として伝えられているのは、自身が手がける食品デリバリー事業ワンダーへの集中です。バスケットボールから逃げたというより、本業の勝負どころが来たという整理の方が近そうです。
一方のスタッドは、突然現れた買い手ではありません。ロアとロドリゲスが2021年にティンバーウルブズの少数株を取得した時点から出資者として名を連ねており、表に出ないまま影響力を持つ存在だったと報じられています。2012年に設立したドラゴニアは、フォーブスによれば350億ドルを超える資本を運用する規模に育ちました。つまり今回は、外部の新オーナーが乗り込んできたのではなく、内側にいた最大の資金源が正式に舵を握った、という性格の取引です。この違いは小さくありません。組織の連続性が保たれる可能性が高いからです。
リンクスにとって何が変わり、何が変わらないのか
声明では、球団CEOのマット・コールドウェル、編成トップのティム・コネリー、ウルブズのクリス・フィンチ、そしてリンクスのシェリル・リーブと引き続き協働していく姿勢が示されています。少なくとも現場の顔ぶれをいじる話にはなっていません。リンクスは30勝7敗でリーグ最高勝率を走っており、リーブは今年7月に通算380勝でWNBAの最多勝記録を更新したばかりです。ここに手を入れる理由は、普通に考えればありません。
むしろ注目したいのは、その先の投資判断です。WNBAは最低年俸が27万ドルに跳ね上がる新しい労使協定の時代に入り、球団側が負担する人件費も、練習施設やチャーター便のコストも一段上がりました。同時に、エクスパンションと球団評価額の上昇でWNBAの資産価値そのものが見直されている局面でもあります。350億ドル超を運用する投資家が筆頭に座るというのは、この環境では素直に追い風と読むのが自然でしょう。逆に言えば、投資に見合うリターンを求める視線も強くなります。リンクスにとっての本当の試金石は、オフシーズンにどこまで金を使うかです。
今後の観戦ポイント
リンクスは残りわずかなレギュラーシーズンを終えて、そのままプレーオフに入ります。2024年のファイナルでは涙をのみ、昨季の頂点はエーシズがマーキュリーを4連勝で下してさらっていきました。新しい体制が最初に迎えるのが、その借りを返す舞台だというのは出来すぎた巡り合わせです。リーグ承認の手続きがどう進むかと合わせて、10月までの数週間はコートの外からも目が離せません。

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