WNBAはいま、順位表とはまったく別の場所で大きな議論の渦中にあります。ミネソタ・リンクスのシェリル・リーブHCが現地8月1日の練習後、インディアナ・フィーバーのソフィー・カニンガムを支持する集会について、長い時間を割って自身の考えを語りました。印象的だったのは、デモの参加者を頭ごなしに否定する言葉が一つも出てこなかったことです。リーグ最高勝率のチームを率いる指揮官が、シーズン屈指の好カードの前日にここまで踏み込んだ。その事実そのものが、この話題の重さを物語っています。
24勝6敗の首位指揮官が、大一番の前日に語ったこと
リンクスは24勝6敗でリーグ最高勝率。迎え撃つ形になったフィーバーは19勝10敗で、勝率はリーグ4番目です。本来なら戦術と個人技だけで十分に語り尽くせる首位対4位の直接対決でした。ところが土曜の練習後の会見は、その多くがコートの外の話題に費やされることになります。
リーブはまず、集会そのものを否定しませんでした。自分が見た限りデモは平和的に行われていると認めたうえで、誰にでも平和的に集まる権利があるはずだ、という趣旨の発言をしています。さらに「私たちの安全な場所が脅かされていると感じるべきではないと思います」と述べ、WNBAが長年かけてつくってきた空気は簡単には揺らがないという見方を示しました。リーグの運営側についても、全員にとって安全な場であり続けるよう目と耳を働かせているはずだ、と信頼を口にしています。
一方で、カニンガムが使った表現には明確に異を唱えました。「生物学的な男性」という言い回しや、それに付随して広まっている「女子のロッカールームに男性がいる」といった語り口が、トランスジェンダーの女性をあたかも加害者であるかのように印象づけてしまう、という指摘です。ただしリーブは、思春期を過ぎた年代や五輪レベルの競技、奨学金が絡む場面では議論が一気に複雑になることも認めており、そこは常識のある人間同士が集まって共通の地点を探すべきだ、という立場を取りました。
発端は7月のESPN記事、そしてシアトルとポートランドで起きたこと
きっかけは7月に公開されたESPNのカニンガム特集記事です。そのなかで彼女が、スポーツの現場にいる若い女の子たちを守りたいという趣旨の発言をしたことが広く拡散し、賛否が一気に噴き出しました。以降、フィーバーの遠征先には彼女を支持する小規模な集会が現れるようになります。火曜のシアトル、金曜のポートランドに続き、今回のミネソタが3か所目でした。
摩擦はすでに実害の形でも表面化しています。シアトル・ストームでは、XXとXYの染色体をあしらったシャツを着ていた10代の少女2人に共同オーナーが暴言を吐いたとされ、リーグから罰金と出場停止の処分が下されました。球団も「ストームの試合に来るすべての人が歓迎されていると感じられるべきだ」という趣旨の声明で謝罪しています。
カニンガム自身は金曜、一連の集会について自分が主催したわけではないと説明したうえで、声を上げた人たちを称えました。同時に、自分がトランスジェンダーの人々を憎んでいるという受け取られ方については、そんなことは一度も言っていないと否定しています。チームにとって迷惑になっているのではないかという懸念についても、本人は気にしていないという姿勢です。
リーブが本当に問題にしたかったもの
ここからがこの会見のいちばん面白い部分だと感じました。リーブは、トランスジェンダー選手の問題を女子スポーツ最大の課題として扱う枠組みそのものに疑問を投げかけたのです。何年も女性のアクセスを阻んできた施設の格差、ユニフォームやロッカールームの扱い、そうした構造的な不均衡のほうがはるかに多くの人に影響している、という主張でした。全米50州で男女平等憲法修正条項が成立していない現状にも触れています。
もう一つ重要なのは、リーブがずいぶん前からリーグ側にスタンスの明示を求めていたと明かした点です。全米規模の論争になってから後手で対応するのではなく、事前に立ち位置を決めておくべきだと働きかけていたというのです。ミネソタで17年、4度の優勝を積み上げてきた指揮官の言葉として、これは重い。裏を返せば、いまWNBAには公式な線引きが存在せず、その空白を現場の選手と監督が個人の言葉で埋めさせられている、ということでもあります。集会がフィーバーの遠征先を追いかけるように増えている以上、この構図が自然に収まる見込みは薄いでしょう。
リーブは最後に、意見が違っていても全員にとって安全な場所であってほしい、という趣旨で話をまとめました。どちらの立場を取るにせよ、リーグが自らの言葉で基準を示さない限り、この議論は当面それぞれの試合会場に持ち込まれ続けることになりそうです。
8月2日、ミネアポリスの一戦
問題の試合は現地8月2日、ミネアポリスで行われます。リーグ最高勝率のリンクスと、勝率4位のフィーバーという構図は、プレーオフのシード争いという観点でも見どころ十分です。加えてこの日は日本時間8月3日午前4時にトレード期限が締まるタイミングでもあり、コート内外の両方から目が離せない一日になります。
引用:https://sports.yahoo.com/articles/cheryl-reeve-wnba-must-safe-091603939.html

WNBA FAN BLOG運営者/バスケットボールジャーナリスト
WNBA・NBAをこよなく愛し、バスケットボール歴30年以上。特にWNBAの魅力を日本に広げるため、2025年5月に WNBA FAN BLOG をスタートしました。試合結果や選手情報だけでなく、独自の視点による戦術分析や選手インタビュー、海外ニュースの速報翻訳まで幅広くカバーしています。
現在、日本国内では数少ないWNBA専門メディアとして、最新ニュースをどこよりも速く正確にお届けすることをミッションにしています。
得意分野
試合分析・戦術解説
選手のデータ分析(EFF、PER など)
海外ニュース速報翻訳(英語 → 日本語)
サイト目標
日本最大の WNBA 情報ポータルサイト構築
日本のバスケットボールファンコミュニティ作り
関連 SNS アカウント
X(Twitter):@WNBAJAPAN
フォローしてWNBA の最新情報をキャッチしてください!



