ニューヨークで開かれたNBA理事会後の会見で、アダム・シルバーがトレイルブレイザーズの移転リスクについて異例の踏み込んだ発言をしました。ポートランドからチームが離れる事態になれば、それは失敗だと言い切ったのです。コミッショナーがここまで直接的な言葉で一つの都市への残留を訴えるのは珍しく、それだけアリーナ交渉が緊迫していることの表れだと感じました。
40億ドルの球団売却と、期限が迫る586億円規模の改修案
トレイルブレイザーズは今年に入り、故ポール・アレン氏の遺産財団からカロライナ・ハリケーンズのオーナーであるトム・ダンドン氏へ、40億ドルを超える評価額で売却されました。以来ダンドン氏は、市が保有するモダセンターの大規模改修に向けた交渉を続けています。ジ・アスレチック紙の報道によれば、オレゴン州とポートランド市、マルトノマ郡の間では5億8600万ドル規模の枠組みが合意されているものの、市と郡との最終条件はまだ固まっていません。市議会の採決は12月に予定されており、オレゴン州が拠出を約束している3億6500万ドルは年末で期限切れとなります。合意に至れば20年間のリース延長で2050年までの本拠地継続が決まりますが、まとまらなければ現行契約が切れる2030年以降のチームの去就は極めて不透明になります。つまり残された猶予はわずか4年半ほどしかなく、40億ドル超という球団史上最高額での売却からわずか1年足らずで、次はアリーナという難題に向き合わなければならない状況です。
リーグ屈指の老朽アリーナが抱える裏方の課題
モダセンターはリーグ屈指の老朽施設とされています。シルバーは会見で、客観的などの指標で見てもリーグの中で下位に位置するアリーナだと評し、州や市に投資の必要性を訴えました。ジ・アスレチック紙によれば、老朽化が特に深刻なのは観客の目に触れない搬入口や選手用ロッカールームなどの裏方部分だといいます。さらに今シーズンからはWNBAのポートランド・ファイアも同じアリーナを本拠地としており、稼働負担は一段と増しています。NBAは現在シアトルとラスベガスへの拡張についても検討を進めている最中で、新規参入市場と既存都市の設備格差が同時に議題へ上る珍しい局面を迎えています。
移転観測がくすぶる中、シルバーが見せた圧力の掛け方
ダンドン氏のもう一つの保有球団であるハリケーンズが拠点を置くノースカロライナ州は、新アリーナ交渉が不調に終わった場合の移転先候補として名前が挙がっています。シルバー自身は「交渉の温度をもう少し下げられればと思う」と会見で語っており、両者に冷静な対応を求めた形です。独自の見立てとしては、シルバーの発言はダンドン氏だけでなく、資金拠出を渋る市や州の当局者にも同時にプレッシャーをかける狙いがあると考えられます。12月の市議会採決が不調に終われば、シアトルやラスベガスへの拡張議論とも絡み合いながら、トレイルブレイザーズの本拠地問題は来シーズン以降も尾を引く可能性が高いといえます。仮に拡張都市としてシアトルが選ばれた場合、西海岸北部での市場競合という新たな火種も生まれかねず、ポートランド側にとっては悠長に構えていられる時間はなさそうです。
12月の市議会採決に注目
年末が期限のオレゴン州の拠出約束と、12月に予定される市議会採決が今後の最大の分岐点です。合意がまとまるかどうかで、モダセンターの未来だけでなくポートランドにおけるNBA、WNBA両球団の長期的な立ち位置が決まります。開幕を控えたトレイルブレイザーズの試合とあわせて、アリーナ交渉の行方も追いかけたいところです。

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