チェルシー・グレイに人種差別的なDMを送った人物が勤務先から即日解雇された騒動から数日──今度はナターシャ・クラウドが沈黙を破りました。米メディアFront Office Sportsの独占取材に応じた12年目のベテランは、スポーツベッティングに起因する誹謗中傷が「試合のたびに繰り返される日常」になっていると証言し、WNBAのキャシー・エンゲルバート、NBAのアダム・シルバー両コミッショナーに具体的な行動を求めました。一人の選手の告発だった問題が、リーグ全体の構造問題へと一気に広がってきた印象です。
「毎試合後に憎悪が届く」12年目のベテランが明かした実態
現地時間7月15日、シアトル・ストーム戦を前に取材に応じたシカゴ・スカイのクラウドは、負けた賭けに腹を立てたファンから届くメッセージについて「帰りの飛行機が墜落することを願っている、とまで言われました」と明かしました。汚い言葉や人種差別的な表現を浴びせられることは、もはや珍しくも何ともない「普通のこと」になっているといいます。
クラウドは、人種差別DMを公開したグレイの行動を高く評価しました。6度のオールスター選出とファイナルMVPの実績を持つ「リーグの顔」が声を上げたことで、選手たちがずっと訴えてきたエンゲルバートへの圧力になると語り、コミッショナーに選手の安全を最優先するよう迫りました。
さらに矛先はNBAにも向かいます。「パーレイを外したせいで、NBA選手が公共の場で付け回されている」と指摘し、これはシルバーも動くべき両リーグ共通の課題だと訴えました。
2018年の合法化から「異常なほど増えた」──相次ぐ被害の告発
米国でスポーツベッティングが広く合法化されたのは2018年のことです。女子バスケットボール選手へのオンライン中傷はそれ以前から存在していましたが、クラウドはベッティングの普及に伴い、ここ数年で憎悪が異常なほど増えたと証言しています。
実際、被害の告発は相次いでいます。スパークスのディアリカ・ハンビー、リンクスのコートニー・ウィリアムズも最近、怒ったベッターからの中傷に公然と反論しました。先月末にはマーキュリーのアリッサ・トーマスが、ケイトリン・クラークとの接触プレーの後に殺害予告や住所の流出といった被害を受けたとして、エンゲルバートを名指しで批判しています。
リーグ側も2025年に選手保護キャンペーン「No Space for Hate」を立ち上げ、中傷をフィルタリングする技術やリソースを選手に提供してきました。しかしクラウドのチームメイトでWNBPA(選手会)書記のエリザベス・ウィリアムズは、リーグの対応は常に「後手」だと指摘します。「人々はスポーツベッティングの陰に隠れて、それを言い訳にしているだけ」という彼女の言葉は、賭けが以前から存在した人種差別のはけ口になっているという問題の根深さを物語っています。
オールスター前の直接会談へ──「収益源」と「選手保護」の天秤
注目すべきは、選手会幹部とエンゲルバートの会談が、来週のオールスター週末を前にすでに設定されている点です。会談の要請自体はグレイの投稿より前に行われていたものですが、この数日の展開を受けて、選手側が安全対策を最重要議題の一つに据えるのは確実な情勢です。
筆者はこの問題の本質を「リーグの成長モデルの矛盾」だと見ています。ベッティング市場はWNBAの注目度と収益を押し上げる原動力であり、クラウド自身もビジネスとしての価値は認めています。しかしその恩恵を受け取る一方で、選手が浴びる憎悪から彼女たちを守るための投資は、まだ十分とは言えません。折しも労使協定(CBA)をめぐる交渉が続く中、選手の安全対策は報酬と並ぶ大きな交渉カードになる可能性があります。会談で声明以上の「具体的な一歩」が示されるかどうかが、リーグの本気度を測る試金石になるでしょう。
関連情報
WNBAオールスター2026は来週末に開催予定で、会談の結果や新たな安全対策の発表があれば当ブログでも続報をお伝えします。クラウド擁するスカイはプレーオフ圏内への浮上を目指す正念場が続いており、コートの上で彼女がどんなプレーで応えるのかにも注目です。
引用:https://frontofficesports.com/natasha-cloud-calls-engelbert-silver-address-sports-betting-threats/

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