日本時間8月10日未明、ブルックリンのバークレイズ・センターでリバティがエーシズを111対71で下しました。40点差の圧勝です。ところがこの夜、試合後に最も大きく語られたのは点差ではありませんでした。試合前のスターティングメンバー紹介で、自軍のヘッドコーチに向けてブーイングが飛んだのです。浴びたのは40歳のクリス・デマルコ。ホームで、しかもこれから40点差で勝つチームの指揮官が、自分たちのファンからブーを受けました。勝ったのにブーイングという順番の逆転は、WNBAでもそう頻繁に見られるものではありません。順位表には出てこないニューヨーク特有の温度が、はっきり表に出た夜だったと感じます。
ブーイングの直後に始まった、40点差の試合
ブーイングを最初に伝えたのはClutchPointsの記者クリス・パーシアイネンでした。数は多くないものの強烈なブーイングがスターター紹介の間にデマルコへ向けられ、公平かどうかは別として、このコーチがベトニージャ・レイニー=ハミルトンの在籍の終わり方をめぐる球団側の対応の「顔」になってしまったという趣旨をXに投稿しています。ファンは自分たちの声をはっきり聞かせた、という書き方でした。
試合が始まると、内容は一方的でした。リバティは第1クオーターを9点リードで終えると、そのまま主導権を渡しません。第4クオーターは37対20で、この12分間だけで17点を積み増しています。ブレアナ・ステュワートは23分の出場で14得点4リバウンド4アシスト、スティールとブロックも1つずつ記録しました。最大の得点源はベンチから出たマリーン・ヨハネスで、3ポイント7本を含む27得点はこの試合最多です。ただし前提として、エーシズはエイジャ・ウィルソン、チェルシー・グレイ、ジャッキー・ヤングの主力3人をそろって休養させていました。40点差という数字を、そのまま実力差として読むわけにはいきません。
その試合後、デマルコに向けられたブーイングについて質問が出ます。隣にいたステュワートが先に発した言葉が、この日いちばん拡散しました。「ようこそニューヨークへ」。WNBA担当のマイルズ・アーリックが伝えた4語です。デマルコ自身は、ファンはチームを愛していて成功を望んでいる、自分たちもファンを愛している、リバティがランを決めたときの館内の熱はすごい、という受け止め方を示しました。批判をかわすでもなく、ファンを責めるでもない返し方でした。
20勝13敗でも矛先が向くという、リバティの特殊な事情
リバティはこの勝利で20勝13敗、直近8試合で7勝と明確に上向いています。にもかかわらずブーイングが起きたという事実が、この球団に置かれた基準の高さを物語っています。
背景にあるのはレイニー=ハミルトンの去り方です。長くリバティを支え、2024年に球団史上初のWNBA制覇を経験したロースターの一員でしたが、今季は出場のない試合が積み上がり、最終的に球団はウェーバーにかけました。そこを拾ったのが、球団タイ記録の連勝で勢いに乗るミスティックスです。ファンから見れば、優勝の記憶を共有する選手が戦力外になり、そのまま東部の上位チームへ移っていったことになります。誰かが説明責任を負う役として立たされるなら、日常的にマイクの前に座るヘッドコーチがその位置に来るのは、構造的にほぼ避けられません。パーシアイネンが「公平かどうかは別として」と添えたのは、まさにそこを見ていたのだと思います。
ブーイングは勝ち星では消えないのではないでしょうか
ここが今回いちばん考えさせられた点です。40点差で勝っても、ブーイングの理由は解消していません。ファンが不満を持っているのは負けたことではなく、ベテランの扱われ方だからです。だとすればプレーオフで結果を出すことは必要条件ではあっても、十分条件にはなりません。ロースターの決定は本来フロントの領域ですが、ヘッドコーチが表に出る回数が多いリーグ構造では、判断の重さがそのままベンチに乗ってきます。この夜の光景は、拡大するWNBAで指揮官が背負う役割が、戦術やローテーションの外側にまで広がりつつあることを示していたのではないでしょうか。
もう一つ気になるのは、この件が長く残るタイプの記憶になりやすいことです。ブーイングは映像と一緒に流通します。デマルコがこの先どれだけ勝っても、レイニー=ハミルトンの名前と並べて語られる場面は出てくるはずです。それを消せるのは、おそらく秋のプレーオフでの結果だけでしょう。
火曜は敵地でフィーバー戦、クラークとの再戦です
リバティの次戦は火曜、敵地でフィーバーと対戦します。土曜に今季8個目のテクニカルファウルを受けて自動的な1試合の出場停止が発生していたケイトリン・クラークは、WNBAがそのテクニカルを取り消したため、この試合に出場できる状態です。全米中継の看板カードとしては、これ以上の展開はありません。一方のレイニー=ハミルトンはミスティックスでの再出発に向けて調整中で、デビューの時期についてはまだ暫定的な見通しが示されている段階です。移籍先のユニフォームで彼女がコートに立つ日、バークレイズのブーイングがどう語り直されるのか。そこも含めて、この話はまだ終わっていません。
引用:https://sports.yahoo.com/articles/liberty-chris-demarco-puts-positive-222636824.html

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