バスケットボールの通算記録には、わかりやすいものとそうでないものがあります。通算5000得点は前者です。しかしその横に3000リバウンドと2000アシストが並んだ瞬間、その数字はまったく別の意味を持ちはじめます。8月22日(現地時間)、フェニックス・マーキュリーのアリッサ・トーマスが、WNBAの歴史で初めてその3つを同時に満たす選手になりました。しかもその夜のチームは敗れていて、順位も西カンファレンス6位です。歴史的な到達点が、勝利の余韻ではなく静かな敗戦の中で生まれたところに、この選手らしさが出ていると感じました。
33分で11得点16リバウンド10アシスト、その1本が節目でした
アトランタ・ドリーム戦、トーマスは33分の出場で11得点16リバウンド10アシスト1スティールという数字を残しました。フィールドゴールは10本中4本、フリースローは5本中3本です。それでもこの日の1本のシュートが通算5000点目となり、同時に通算3000リバウンドと2000アシストをすでに超えていたことで、リーグの歴史で誰も並んでいない位置に立ちました。
NBA公式のSNSはこの夜を「WNBA史上初めて通算5000得点・3000リバウンド・2000アシストを超えた選手です」と伝えています。あわせて、この試合が自身22度目のトリプルダブルであることも紹介されました。
試合そのものは89対99でマーキュリーが落としました。カリーア・カッパーが21本中13本、3ポイント7本中3本、フリースロー12本中9本という高効率で38得点を挙げ、デワナ・ボナーが12得点9リバウンド、ノエミ・ブロシャンが9得点3スティールと続きましたが、届きませんでした。マーキュリーはこれで13勝24敗となり、西カンファレンスではロサンゼルス・スパークスとシアトル・ストームの上、6番目の位置にとどまっています。
「得点で稼ぐ」タイプではないからこそ重い数字です
WNBAで通算5000得点に到達した選手は、これまでに30人前後います。2025年6月にはエイジャ・ウィルソンが238試合という史上最速ペースで到達し、通算得点の首位はディアナ・トーラシの10646点、2位はティナ・チャールズの8396点です。つまり得点だけを取り出せば、トーマスの5000点は上には上がある数字ということになります。
それでもこの到達が史上初になるのは、彼女が5000点を得点係として積んだわけではないからです。トーマスは両肩の腱を断裂した状態でプレーを続けてきたことで知られ、頭上に大きく振りかぶるシュートフォームすら制限されたキャリアを送ってきました。3ポイントをほとんど打たず、フリースローも安定しているとは言えない選手が、リバウンドとアシストで試合を支配しながら13年かけて5000点まで届いたわけです。その積み上げ方こそが、この記録を他の誰にも真似しにくいものにしています。
比較のために触れておくと、トーマスは単季のトリプルダブル数やアシスト数でもリーグ記録を持っています。ポイントガードではなくフォワードが、リバウンドを取ってそのまま速攻を組み立て、味方を走らせて点を取らせる。この形が定着したのは彼女がコネチカット・サン時代に磨いたスタイルで、いまではリーグ中に似た役割を担う選手が出てきました。5000・3000・2000という3つの数字は、そのプレースタイルが13年間ぶれなかったことの証明でもあります。
チームは苦しくても、記録の価値は下がりません
ここからが個人的に気になる点です。今季のマーキュリーはプレーオフ争いから大きく後退しており、トーマス自身も長く続いていた連続プレーオフ出場が途切れる状況に置かれています。歴史的な記録が、ポストシーズンの熱狂ではなく順位の決まりかけた時期に生まれたのは惜しいところです。
ただ、こういう記録はチーム成績とは切り離して評価されるべきものだと思います。マーキュリーは今季、ケルシー・プラムをめぐる動きや、ディアナ・トーラシの背番号3を掲げるセレモニーなど、話題そのものは多い一年を過ごしてきました。その中で毎試合コートに立ち、16リバウンド10アシストを平然と積む選手がいるという事実は、来季以降のチームづくりを考えるうえで小さくない資産です。
もうひとつ考えたいのは、この記録が次に誰が並ぶのかという問いを立てにくいことです。5000点だけなら数年で複数の選手が到達するでしょう。3000リバウンドも、エイジャ・ウィルソンのような選手なら射程に入ります。しかし2000アシストをそこに重ねられるビッグは、現時点でほとんど見当たりません。記録の寿命という意味では、かなり長く残るタイプの数字だと見ています。
次の試合と、シーズン終盤の見どころ
マーキュリーの次戦は8月25日、ホームでワシントン・ミスティクスを迎える一戦です。ティップオフは東部時間の午後10時で、日本時間では26日の昼前にあたります。プレーオフの可能性が細くなった今、注目はトーマスがこの終盤戦でどこまで数字を伸ばすか、そしてカッパーやブロシャンといった選手が来季につながる形を残せるかに移ります。
シーズン全体では、アトランタ・ドリームがこの試合の結果でプレーオフ進出を決め、上位争いが最終局面に入りました。西ではまだ順位の入れ替わりが残っており、マーキュリーが上位陣の行方に影響を与える立場になる試合も出てきます。記録の夜を過ぎたトーマスが、そこでどんな試合をするのか。個人的には、勝敗が自分のポストシーズンに直結しなくなった状態でも同じ数字を並べてくるなら、それこそが13年分の答えになると思っています。

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