ケイトリン・クラーク

「WNBAの経済エンジンはケイトリン・クラークです」──1984年のジョーダンと並べた殿堂入りリーバーマン、11年22億ドルはなぜ動いたのか

 

現地時間8月22日、殿堂入りのナンシー・リーバーマンがEssentiallySportsの番組で、ケイトリン・クラークについて「WNBAの経済エンジン」という表現を使いました。称賛の言葉はこれまで何度も飛び交ってきましたが、今回は視聴率でも人気投票でもなく、リーグそのものの収益構造に踏み込んだ話です。リーバーマンはさらに、1984年のマイケル・ジョーダン、そしてタイガー・ウッズという2つの名前を持ち出しました。ここまで来ると、もう一人の人気選手の話ではありません。ひとつの競技がどうやって金額の桁を変えるのか、という話です。

数字が示す「クラーク以後」のWNBA

まず、コート外で起きたことを数字で確認しておきます。クラークがルーキーだった2024年、WNBAの視聴者数は前年比170%増を記録しました。2023年に1試合平均およそ44万人だったものが、120万人近くまで跳ね上がった計算です。この勢いは2年経っても衰えていません。今季7月のフィーバー対エーシズはNBCとPeacockの合計で平均264万人を集め、その時点での今季最多となりました。8月のドリーム戦はESPNで平均260万人、瞬間最高は400万人に達し、ケーブル放送されたWNBAの試合としては史上最多視聴という記録が生まれています。

そして経営面では、11年22億ドルというメディア権契約と、2026年5月22日に成立した新しい労使協定があります。最低年俸をはじめとする待遇の大幅な引き上げは、この2つがあってはじめて成立したものです。リーバーマンは6月の時点でも「彼女がいなければ22億ドルの労使協定は実現していません」と語っており、今回の発言はその延長線上にあります。

1984年に起きたことと、いま起きていること

リーバーマンが引き合いに出したのは、ジョーダンがNBA入りした1984年です。年俸が上がり、アリーナが埋まった。ウッズが登場したときのゴルフも同じで、ギャラリーが膨れ上がった。つまり彼女は、突出した一人が競技全体の経済規模を押し上げる現象そのものを指しているわけです。「彼女はいま、どの選手よりも金銭的な針を動かしています」という言い方には、成績評価とは別の物差しが持ち込まれています。

面白いのは、リーバーマンがテイラー・スウィフトの名前まで出したことです。スポーツの外側にいる存在と並べることで、クラークの集客力がバスケットボールファンだけのものではないと言いたいのでしょう。実際、フィーバーの試合が全米中継のたびに記録を塗り替えている状況は、従来の女子バスケットボールの枠組みでは説明がつきません。

「一人の功績」で片づけていいのか

ただ、この見立てをそのまま受け取るべきかというと、慎重になったほうがよさそうです。クラークは労使交渉のテーブルに直接ついていたわけではありませんし、リーグの成長を一人の名前に集約するのは、他の選手が積み上げてきたものを見えなくしてしまいます。エンジェル・リース、ペイジ・ベッカーズ、そして今季のオリビア・マイルズと、単独で客を呼べる選手はすでに何人もいます。新規参入した球団が初年度から満員の会場をつくっている事実も、クラーク一人では説明できません。

その意味で、リーバーマンの発言は「クラークがすごい」という話であると同時に、リーグ側への問いかけでもあります。爆発的に増えた収入をどう分配し、どう次の世代に引き継ぐのか。クラークが引っ張ってきた数字は、いずれリーグの制度設計の話に変換されなければ意味がありません。リーバーマンは今回、クラークをMVP争いの候補にも挙げていますが、個人賞よりもこちらの議論のほうが長く残るはずです。

今後の注目ポイント

レギュラーシーズンは残りわずかで、フィーバーはすでにプレーオフ進出を決めています。そして9月にはベルリンでFIBA女子ワールドカップが開幕し、クラークはアメリカ代表として初の世界大会に臨みます。国内で起きた経済現象が、国際大会という舞台でどこまで通用するのか。リーバーマンの言葉が正しかったかどうかは、この秋にひとつの答えが出るのかもしれません。

引用:https://www.profootballnetwork.com/wnba/economic-engine-wnba-hall-of-famer-caitlin-clarks-michael-jordan-comparison/

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