日本のバスケットボール界から、また一つNBAへの扉が開きました。男子日本代表でアシスタントコーチを務める吉本泰輔が、フィラデルフィア・セブンティシクサーズのアシスタントコーチ兼ヘッド・ビデオコーディネーターに就任したことが、8月23日までに明らかになっています。選手としての日本人NBA挑戦が話題になることは増えましたが、コーチングスタッフとしてこれだけのポジションに就く例はまだ多くありません。しかも赴任先は、この夏に一気に注目度が跳ね上がったチームです。
エンビード、マクシー、ジェイレン・ブラウン、そしてレブロン
吉本が加わるシクサーズは、ジョエル・エンビードとタイリース・マクシーという既存の看板に加え、オフシーズンにボストン・セルティックスからジェイレン・ブラウンが移籍しました。さらにロサンゼルス・レイカーズからレブロン・ジェームズも合流しており、2026-27シーズンのイースタン・カンファレンスで最も語られるロスターの一つになっています。
肩書きはアシスタントコーチ兼ヘッド・ビデオコーディネーターです。ビデオコーディネーターはNBAでは映像分析の中核を担う役職で、対戦相手のセットプレーの整理、自チームの傾向の可視化、コーチ陣が試合中に使う資料の準備までを受け持ちます。それをアシスタントコーチと兼務するということは、分析した内容を自分でコートに落とし込む立場も与えられたということです。スター選手が並ぶチームほど、ローテーションやマッチアップの根拠を数字と映像で示せる人材の重みは増します。
大阪から渡米、ブルズ・ウルブズ・ニックスで積み上げた15年
1981年5月23日生まれ、大阪府出身の吉本は、大商学園高校を卒業した2001年に渡米しました。短期大学、そしてジョンソン&ウェルズ大学で選手としてプレーし、卒業後はフォーダム大学大学院を経てNBAスタッフとしてのキャリアを歩み始めています。
2011年からはシカゴ・ブルズで5シーズンにわたってビデオコーディネーターなどを務め、ミネソタ・ティンバーウルブズを経て2020年にニューヨーク・ニックスへ加入しました。ニックスでは当時のトム・シボドーヘッドコーチのもとで特別補佐を務め、2022年からはアシスタントコーチに昇格しています。特筆すべきは、2021年から4年連続でニックスのサマーリーグチームのヘッドコーチを任されたことで、日本人がNBAサマーリーグで指揮官を務めたのはこれが初めてでした。
2025-26シーズンはデンバー・ナゲッツ傘下のGリーグ、グランドラピッズ・ゴールドでアシスタントコーチを務め、2026年2月には男子日本代表のアシスタントコーチにも就任しています。渡米から25年、ビデオルームの裏方から始まって、優勝候補のベンチに座るまで積み上げてきたキャリアです。
日本代表にとっての「NBAの現場」という財産
ここからは筆者の見立てです。この人事が日本にとって重要なのは、単に「NBAで働く日本人が増えた」からではありません。吉本は現時点で日本代表のアシスタントコーチでもあり、NBAの最前線で使われている分析手法や準備のプロセスが、代表チームの現場に直接持ち込まれる回路ができたことになります。
日本代表はワールドカップ予選やロサンゼルス五輪を見据えた強化の途上にあり、対戦相手の情報量と処理速度で先進国に差をつけられている部分は少なくありません。レブロンとエンビードという二人のMVP経験者を同時に抱えるチームで、ローテーションと役割分担がどう設計され、どんな映像がロッカールームで共有されるのか。その内側を知る人物が代表スタッフにいることの価値は、数字に表れにくい形でじわじわ効いてくるはずです。
同時に、日本の指導者にとっての現実的なキャリアパスが一つ可視化されたことも見逃せません。選手として一線級でなくても、映像分析という入口からNBAのベンチに到達できる。高校卒業後に単身で渡米した一人の道のりが、そのまま次の世代への地図になります。
日本代表とシクサーズ、これからの日程
男子日本代表はFIBAバスケットボールワールドカップ2027アジア地区予選のWindow4を控えており、初戦のサウジアラビア戦は日本時間8月27日深夜にABEMAで無料生中継される予定です。NBAの2026-27シーズンは10月に開幕し、シクサーズはレブロン、エンビード、マクシー、ジェイレン・ブラウンという顔ぶれで新シーズンに臨みます。日本代表の試合とシクサーズの試合、その両方に同じ日本人コーチの仕事が映り込む一年になりそうです。
引用:https://basketballking.jp/news/world/20260824/629167.html

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