アメリカの30連勝とイタリアの32年、ベルリンで交錯する20回目の執念

 

FIBA女子バスケットボールワールドカップ2026が、ドイツ・ベルリンでいよいよ開幕します。開幕を前にFIBAが公開した数字の一覧を眺めていて、思わず手が止まりました。アメリカの連勝が30で止まっている、いや、止まっていないのです。20年間ひとつも負けていない国が今日また試合を始めるという事実は、この競技の現在地をこれ以上ないほど簡潔に説明しています。同時に、73年の歴史で優勝国がわずか4か国しかいないという数字も並んでいて、この大会が「勝てる国」と「挑む国」にくっきり分かれてきたことがわかります。

30という数字に詰まったアメリカの20年

アメリカが最後にワールドカップで敗れたのは2006年の準決勝、相手はロシアでした。そこから始まった連勝は今回の初戦を迎える時点で30に達しています。連勝の1勝目は同じ2006年大会の3位決定戦、ブラジル戦でした。つまり金メダルを逃した悔しさの直後から、アメリカは一度も土をつけられていないことになります。

FIBAは公式サイトで、この20年を「選手は入れ替わってきましたが、レガシーは強くなる一方でした」と表現しています。実際、この間にスー・バード、ダイアナ・タウラシ、ブリアナ・ステュワートと主役は移り、今大会にはケイトリン・クラークやペイジ・ベッカーズといった初出場組が加わりました。人が入れ替わっても勝ち続ける、という状態を20年維持している国は他にありません。今回アメリカが優勝すれば、通算12度目の世界一となります。

ただし、盤石という言葉で片づけるには気になる材料もあります。2024年のパリ五輪決勝は67対66、フランス相手にわずか1点差の勝利でした。世界との距離が縮まっているのは数字が示す通りで、30という連勝記録は誇りであると同時に、毎試合ぶら下がる重りでもあります。

73年で優勝はたった4か国、狭すぎる門

第1回大会が開かれたのは1953年のチリ、屋外コートでした。そこから73年を数え、今回のベルリンは記念すべき第20回大会にあたります。19大会が終わった時点で、優勝経験を持つ国はアメリカ、ソビエト連邦、ブラジル、オーストラリアの4か国だけです。しかもアメリカとソ連の2か国で19大会中17回を占めており、残る2回はブラジルの1994年とオーストラリアの2006年だけでした。

この寡占ぶりは、逆に言えば3か国目、5か国目の王者が生まれた瞬間の価値がとてつもなく大きいということでもあります。オーストラリアがローレン・ジャクソンとペニー・テイラーを擁して頂点に立った2006年は、アメリカを準決勝で破ったロシアを決勝で退けての戴冠でした。歴史が動くときには、必ず誰かがアメリカを止めているわけです。

継続という点で興味深いのが韓国です。1964年の初出場から17大会連続で本大会に出続けており、この62年におよぶ連続出場記録はアメリカと並ぶ最長タイです。一方で、今大会に出場する国の中で最も長く舞台から遠ざかっていたのはイタリアで、実に32年ぶりの復帰となります。前回出場した1994年オーストラリア大会では11位に終わりましたが、2025年のユーロバスケットでは銅メダルを獲得しており、当時とは別のチームとしてベルリンに乗り込んできます。

動くかもしれない記録、動きそうにない記録

今大会で最も現実味のある記録更新は、ブリアナ・ステュワートの4度目の優勝でしょう。大会史上4度の優勝を経験した選手はスー・バードただ一人で、2002年、2010年、2014年、2018年に頂点を味わっています。ステュワートは直近3大会を制しており、ベルリンで金メダルを取ればバードに並びます。そのバードが今大会にアンバサダー兼USAバスケットボール女子代表のマネージングディレクターとして帯同しているのは、話としてできすぎているほどです。

逆に、当分動きそうにない記録もあります。大会史上唯一のトリプルダブルは1994年のエリカ・ドブロビツォバによるもので、スペイン戦の24得点10リバウンド10アシスト。30年以上、誰も並んでいません。1試合46得点というホルテンシアの得点記録も1983年から動かず、彼女の通算平均25.1得点という数字とあわせて、現代の緻密なディフェンス下では相当に高い壁です。

個人的に注目しているのは、中国が2022年大会でプエルトリコ相手に記録した41アシストという数字です。それまで1試合の最多アシストは33で、40の壁は誰も超えていませんでした。長身を並べる印象の強い中国が、実はボールを動かすチームでもあることの証明です。今大会の中国はさらに高さを増しており、初戦でいきなりアメリカと当たります。連勝が30で止まるとしたら、その最初の機会が開幕日に来てしまうという巡り合わせは、なかなかできすぎた組み合わせです。

なお、大会の注目度を測る指標としてFIBAはSNSのフォロワー数も挙げていて、クラークのインスタグラムが400万、エンジェル・リースが520万と紹介されています。二人ともワールドカップは初出場です。

日本の初戦と観戦情報

日本はグループAに入り、初戦でマリと対戦します。同組にはドイツとスペインという欧州の強豪が控えており、9月6日にドイツ、9月8日にスペインとの対戦が組まれています。日本戦は地上波やCS、ネット配信での視聴が予定されていますので、放送時間は各局および配信サービスの最新告知を確認してください。

30連勝の話も、73年で4か国という話も、日本にとっては遠い世界の数字に見えるかもしれません。ただ、こうした記録はすべて「誰かが止めた日」から始まっています。2006年のロシアがそうだったように、歴史が動く夜は前触れなくやってきます。まずはマリ戦、その入り方に注目したいと思います。

※FIBA女子バスケW杯2026

引用:https://www.fiba.basketball/en/events/fiba-womens-basketball-world-cup-2026/news/by-the-numbers-the-must-know-womens-world-cup-stats-and-facts

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