「本来の役割ではない」——アメリカ代表コリアーが引き受けた3番という覚悟

 

ベルリンで開幕したFIBA女子バスケットボールワールドカップ2026で、アメリカ代表の顔ぶれを見て少し違和感を覚えた方も多いのではないでしょうか。ミネソタ・リンクスでリーグ屈指のフォワードとして君臨するナフィーサ・コリアーが、中国との初戦でペリメーター寄りの役割を任されていたからです。本人もその起用について率直に語っており、超大国の5連覇挑戦は「役割を手放す」という地味なテーマから始まったように見えます。今大会が自身初のワールドカップとなるコリアーが、慣れない場所でどんな仕事をしたのか。開幕戦のスタッツと発言から読み解いていきます。

中国戦の先発、そして24本のリバウンドを支えた6本

アメリカは9月4日、ベルリンのマックス・シュメリング・ハレで行われたグループDの初戦で中国を94-61と圧倒しました。コリアーはこの試合に先発として出場し、6リバウンドを記録しています。単独の数字だけを見れば派手さはありませんが、注目すべきはフロントコート全体の働きです。ブレアナ・ステュワート、コリアー、アリーヤ・ボストン、エンジェル・リースの4人が合計24リバウンドを集め、221センチのチャン・ズーユーやハン・シューを擁する中国の高さに真正面から対抗しました。

そのうえでコリアーは、通常のポジションより外側に置かれています。中国の長身インサイド陣をペイントに近づけないための配置で、本来はゴール下からトランジションまで自由に動き回るタイプの選手が、外で相手を待ち構える形になりました。33点差という結果だけを見れば楽勝に映りますが、その裏側には相手の身長差にどう合わせるかという細かい設計があったわけです。

エイジャ・ウィルソン不在という前提と、46パーセントという伏線

この配置転換には理由があります。アメリカはコンディション管理を理由にエイジャ・ウィルソンが代表を離れており、インサイドの序列が大会前から組み替わっていました。ウィルソンが抜けた穴を誰かが埋めれば、その分だけ玉突きで別の誰かが慣れない場所に立たされます。今回はその役がコリアーに回ってきた、という構図です。

もっとも、これは単なる苦し紛れの配置ではないと考えられます。コリアーは今季リンクスで3ポイントを46パーセントの確率で沈めており、外に置かれても攻撃面での価値は落ちません。むしろ、インサイドで相手の長身選手と体をぶつけ合うよりも、外に引き出してから勝負を仕掛けたほうがミスマッチを作りやすい場面もあります。守備で高さに対応しつつ、攻撃では外角の脅威として機能する。指揮官の狙いはそのあたりにあるのでしょう。

コリアー本人はこの点について、代表チームに来たらWNBAでの役割は手放し、今のチームにとって最善のことをする必要がある、という趣旨を語っています。そのうえでYahoo Sportsに掲載されたコメントでは「ここにエゴはありません」と明言しました。リーグでMVP級の評価を受ける選手が、ワールドカップという舞台で自分の得意な形を一度手放す。この割り切りの早さこそ、アメリカが長年勝ち続けてきた理由なのかもしれません。

5連覇の可否を決めるのは、スターの得点ではなく適応力

アメリカは今大会、5大会連続の優勝がかかっています。開幕戦ではケイトリン・クラークが11アシストを記録してアメリカ勢のワールドカップデビュー戦最多を更新し、ターンオーバーゼロでの2桁アシストは大会史上初という記録も残しました。ペイジ・ベッカーズも同じくデビュー戦を戦っており、話題はどうしても若い世代に集まりがちです。

ただ、こうした短期決戦で最後にものを言うのは、スターの爆発力よりもチーム全体の適応力だと筆者は考えています。ワールドカップは準備期間が短く、相手ごとに求められる形が毎試合変わります。今回のコリアーのように、リーグでの立ち位置と違う仕事を即座に受け入れられる選手が何人いるか。それがそのまま、相手の高さや速さに合わせて布陣を変えられる幅につながります。逆にいえば、役割の変更に不満が出た瞬間、この種の寄せ集めチームは一気に脆くなります。開幕戦で見えた「エゴはない」という空気は、数字以上に重い意味を持つはずです。

加えて、コリアーが外でプレーする時間が増えれば、リースやボストンといったインサイド陣に与えられる出場機会も変わってきます。ウィルソン不在という前提が、結果的に若手の経験値を押し上げる可能性もあり、この配置がどこまで続くのかは注目に値します。

グループDの残り2戦と、ベルリンのこれから

アメリカはグループステージで、日曜にイタリア、月曜にチェコと対戦します。中国との初戦で見せた配置がそのまま維持されるのか、それとも相手のサイズに応じてコリアーが本来のインサイドに戻るのか。ここは大きな見どころです。相手の高さが中国ほどではない試合でどう動くかを見れば、この起用が緊急対応だったのか、それとも大会を通じた設計だったのかが見えてきます。

大会はベルリン・アレーナとマックス・シュメリング・ハレの2会場で開催され、グループステージは9月7日まで、準々決勝は9月10日、決勝と3位決定戦は9月13日に行われます。優勝チームには2028年ロサンゼルス五輪の出場権が直接与えられるため、どの国にとっても負けられない戦いが続きます。日本代表もグループAでマリを102-97で下して好発進しており、決勝トーナメントに向けた展開から目が離せません。

※FIBA女子バスケW杯2026

引用:https://sports.yahoo.com/articles/obviously-not-role-napheesa-collier-122351220.html

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