ワールドカップ開幕を2日後に控えた9月2日、ケイトリン・クラークをめぐって少し毛色の違う話題が届きました。20年にわたってアメリカ代表の背番号12を背負い続けたダイアナ・タウラシが、ポッドキャスト番組でクラークについて語ったのです。称賛の中身が得点力でもスリーポイントの射程でもなく、コートに立った瞬間の切り替えだったところに、この人らしさが出ていると感じました。
タウラシは現役時代、クラーク以上に長く「話題の中心」に置かれ続けた存在です。その人物が同じ番号を引き継いだ24歳の何を評価したのか。ベルリンへ向かう直前のタイミングだけに、単なる先輩のリップサービスとは受け取りにくい重さがあります。
8月に刻んだ268得点103アシストという数字
まず前提として、いま代表に合流しているクラークは自己最高の状態にあります。8月の1か月間だけで268得点103アシストを積み上げ、これはWNBA史上ただ一人の到達点となりました。単月で200得点と100アシストを同時に超えた選手は、リーグ29年の歴史でクラークが初めてです。
アシスト数はシーズンを通じてリーグ1位。さらに注目すべきは「創出得点」という指標で、自身の得点とアシストから生まれた得点を合算すると、クラークは1試合あたり41.4点をフィーバーにもたらしている計算になります。これはリーグ全体で最も高い数字です。つまり彼女がコートに立っている時間、チームの得点の大半が何らかの形で彼女を経由しているということになります。
MVPレースではチームメイトのケルシー・ミッチェルやエイジャ・ウィルソンと激しく競り合っており、決着は中断明けまで持ち越されました。ただ、数字の作り方という一点で言えば、クラークの積み上げ方はほかの候補と質が異なります。得点王タイプでもなければ純粋な司令塔でもない、その両方を同時にやり切っている点が独特です。
20年間、同じ番号を背負い続けた人の視点
タウラシがクラークについて語った言葉は、番組の中でこう表現されています。「コートに足を踏み入れた瞬間、彼女にとってそのすべてが消えてしまうのです」。周囲の騒がしさを遮断する能力を、以前からずっと評価していたという趣旨でした。
この発言の重みは、タウラシ自身の経歴を踏まえると増します。オリンピック金メダル6個という史上最多記録を持ち、アメリカ代表で20年にわたって背番号12を着用してきた人物です。その番号を、いまクラークが代表で背負っています。タウラシはかつてFIBA公式の取材に対しても、この番号の継承について前向きな見方を示していました。
代表デビューとなった今年のワールドカップ予選トーナメント、プエルトリコ・サンファンでの戦いでクラークはMVPに選出されています。国際大会の初舞台でいきなり大会最優秀選手に選ばれた事実は、フル代表での適応が想像以上に速かったことを示しています。ただし予選と本大会では相手の質が違います。タウラシが評価した「切り替え」が真価を問われるのは、ここからの10日間です。
雑音の量が過去最大になるベルリンで
今回のワールドカップで、クラークが置かれる状況は例年のアメリカ代表とは違います。エイジャ・ウィルソンとケルシー・プラムが直前に離脱し、ガード陣の構成が変わりました。ベンチスタートになるのか、チェルシー・グレイと並んで先発するのか、ヘッドコーチのカーラ・ローソンは開幕直前まで明言していません。
ここで効いてくるのが、まさにタウラシが指摘した資質だと考えます。代表チームでは全員がWNBAでのエースの座を降りる必要があり、出場時間もボールを持つ回数もクラブとは比較にならないほど制限されます。フィーバーで1試合41.4点を創出してきた選手が、20分前後の出場で役割を切り替えられるかどうか。技術ではなく気質の問題であり、タウラシが20年かけて身につけたものと同じ種類の適応力が求められます。
もうひとつ、興味深い視点があります。タウラシは「彼女を突き動かしている別の何かがある」とも語りました。何が原動力なのかは本人にも分からないという言い方でしたが、これは長く頂点にいた人間だけが感じ取れる同族の匂いなのかもしれません。技術の分析ではなく、動機の質を見ているところに、この発言の面白さがあります。
9月4日、ベルリンで幕が開きます
FIBA女子バスケットボールワールドカップ2026は、9月4日から13日までドイツ・ベルリンで開催されます。16チームが参加する新方式で、アメリカはグループDに入り、初戦は現地時間9月4日12時15分に中国と対戦します。身長218センチのセンターを擁する中国は、アメリカにとって高さの面で最も厄介な相手のひとつです。
日本代表はグループAに入り、同じ9月4日の現地時間9時30分にマリと初戦を迎えます。開幕日に日米両方の試合が組まれているため、日本のファンにとっても見どころの多い一日になりそうです。
クラークが背番号12でどんな10日間を過ごすのか。タウラシの言葉が正しければ、ベルリンのアリーナに足を踏み入れた瞬間、彼女の周りにあるものはすべて消えているはずです。
引用:https://www.hitc.com/diana-taurasi-explains-what-shes-always-admired-about-caitlin-clark/

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