WNBAの東カンファレンス週間最優秀選手に、アトランタ・ドリームのエンジェル・リースが2週連続で選ばれました。対象週の彼女は1試合平均14.0得点17.7リバウンド3.7アシスト。数字だけを眺めれば異論の出にくい選出に見えます。ところが発表直後からSNSは荒れました。同じ週にインディアナ・フィーバーのケイトリン・クラークが37得点10アシストと34得点12アシストを並べていたからです。得点かリバウンドか、派手さか支配力か。この賞は毎年どこかで揉めますが、今回は「なぜ2週連続なのか」という問いまで乗ってしまいました。
26リバウンドという桁違いの一週間
まずリースの中身を確認します。ロサンゼルス・スパークスとの78対71の勝利では、1試合26リバウンドを記録しました。これは2003年5月にシャミーク・ホールズクローが打ち立てた24を23年ぶりに塗り替えるWNBAの新記録です。さらにシーズン458本目のリバウンドで、エイジャ・ウィルソンが持っていたシーズン最多リバウンドの記録も更新しました。
加えて、今季29個目のダブルダブルもシーズン新記録です。1試合のリバウンド、シーズンのリバウンド、シーズンのオフェンスリバウンド、シーズンのダブルダブル。ドリーム移籍1年目にして、リースはこの4つでリーグの歴史を書き換えたことになります。週の締めくくりとなったミネソタ・リンクス戦では15得点11リバウンドを記録し、チームは89対81で首位を撃破しました。
一方のクラークも常軌を逸した数字を残しています。シカゴ・スカイ戦の37得点10アシストは3ポイントが12本中8本成功というキャリアハイの精度で、続く試合では34得点12アシスト5リバウンド3スティール。30得点10アシスト以上の試合数はWNBA史上最多の4回に達しました。しかも同じ週に、シーズン800得点300アシストという史上初の領域と、300アシスト100本の3ポイントという史上初の組み合わせに同時に到達しています。どちらを選んでも文句が出る週だった、というのが実際のところでしょう。
東の1枠を奪い合う不運
この論争を難しくしているのは、週間最優秀選手が東西各1名しか選ばれない仕組みです。リースもクラークも東カンファレンス。つまり2人は毎週、同じ1枠を取り合う関係にあります。西でエイジャ・ウィルソンが選ばれても誰も驚きませんが、東では必ずどちらかが落ちる構図が続いてきました。
歴史を振り返ると、リースの受賞はキャリア通算4度目で、ドリームでは2度目です。球団史では東の週間最優秀選手を2週連続で獲得した4人目にあたり、今季のドリームからはライン・ハワードに続く2人目の選出となりました。移籍1年目の選手がこれだけ短期間で球団の記録帳に名前を並べるのは、決して当たり前のことではありません。
興味深いデータもあります。Polymarket Hoopsによると、今季ここまで週間最優秀選手を連続週で受賞したのはクラークとリースの2人だけです。つまり2人は対立の象徴として語られながら、リーグで最も安定して支配的だった2人という点では完全に一致しているわけです。ファンの反応が過熱するのも無理はありません。SNSでは「WNBAの偏りが出ている」という趣旨の投稿が拡散しました(Yahoo Sports)。
評価軸の空白が生む毎週の火種
ここからは私見です。この手の炎上が繰り返される根本には、週間最優秀選手の評価軸が公開されていないという構造的な問題があると考えています。得点か、効率か、チームの勝敗か、記録性か。基準が示されないまま結果だけが発表されるので、支持する選手が落ちたファンは「意図がある」と受け取ってしまいます。NBAでも同種の議論はありますが、WNBAはクラークとリースという物語性の強い2人を抱えているぶん、火の回りが桁違いに速いのが実情です。
もっとも、記録という物差しで見ればリースの選出は説明可能です。23年破られなかった1試合リバウンド記録の更新は、1週間の出来事としては最上級のインパクトを持ちます。クラークの数字が霞むわけではなく、たまたま歴史的な週が重なった、と整理するのが公平でしょう。むしろ注目すべきは、24歳のリースがドリーム移籍1年目でここまでリバウンドを支配している点です。今季のリーグは、得点で語られるクラークと、ボード支配で語られるリースという、まったく異なる2つの物語を同時に走らせています。
この論争が休止する9月
そしてこの議論は、いったん強制的に止まります。WNBAはFIBA女子バスケットボールワールドカップ2026のためにスケジュールを中断し、大会は9月4日から13日までドイツ・ベルリンで開催されます。クラークとリースはともにアメリカ代表に名を連ねており、賞を奪い合った2人が同じユニフォームで金メダルを目指すことになります。
代表ではエイジャ・ウィルソンとケルシー・プラムが健康上の理由で不参加となり、若い顔ぶれの比重が増しました。その中でリースのリバウンド力とクラークの創造性がどう噛み合うのかは、W杯最大の見どころのひとつです。SNSの言い争いよりも、ベルリンでの共闘のほうがはるかに面白い結末を用意しているかもしれません。9月4日の初戦、まずは2人が同じコートに立つ姿から確かめたいところです。
引用:https://sports.yahoo.com/articles/caitlin-clark-snubbed-angel-reese-103958843.html

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