ラッセル・ウェストブルック

「全員に席を用意すること」——ウェストブルックがProject Bの共同創業者に就いた舞台裏

 

引退から間もない元MVPが、次に選んだのはコートの外の椅子でした。ラッセル・ウェストブルックが9月2日、2027年開幕を目指す新リーグProject Bに共同創業者兼チーフ・ストラテジー・オフィサーとして加わったことが明らかになりました。単なるアンバサダー就任ではなく、リーグの株式を保有し、取締役会にも名を連ねるという踏み込み方です。18年間コートで暴れ回った男が、女子バスケットボールを主軸に据えたリーグの経営側に回る。この構図そのものが、いまの女子バスケを取り巻く資本の動きを象徴しているように思えます。

肩書きは「共同創業者」、しかも株式と取締役の席つき

今回の発表で目を引くのは、ウェストブルックに与えられた立場の重さです。チーフ・ストラテジー・オフィサーという実務ポストに加え、リーグのエクイティ(株式)を保有し、取締役会のメンバーにもなると報じられています。これまでProject Bが発表してきた経営陣の中でも、知名度という点では突出した人選です。

37歳のウェストブルックは、この夏に18年間のNBAキャリアに区切りをつけたばかりです。2016-17シーズンのMVP、得点王2回、オールスター選出9回、そして通算209本というトリプルダブルの歴代最多記録。7球団を渡り歩いた末に積み上げた数字は、リーグの歴史に残る類のものです。その男が引退から数か月で「経営」の側に現れたわけですから、話題にならないほうがおかしいでしょう。

本人は声明で「キャリアのどの段階でも、私にとって最も価値があったのは、全員に席が用意されているかを確かめることでした」と語っています。選手を単なる労働力ではなく、株主であり意思決定者として扱う——というのがProject Bが繰り返し掲げてきた設計思想で、ウェストブルックの言葉はそこに寄り添う形になっています。

オグミケの1人目から始まった、2年がかりの選手集め

Project Bは2023年、元FacebookとGoogleの幹部だったグレイディ・バーネットと、Skype共同創業者のジェフ・プレンティスが立ち上げた組織です。チーフ・バスケットボール・オフィサーには元WNBA選手のアラナ・ビアードが就き、カンデス・パーカーやスティーブ・ヤング、ノバク・ジョコビッチらが投資家・アドバイザーとして名を連ねてきました。

選手の獲得は2025年11月、ネカ・オグミケの契約から動き出しました。そこからアリッサ・トーマス、ジョンケル・ジョーンズ、ジュエル・ロイド、ケルシー・ミッチェル、ソフィー・カニンガム、カミラ・カルドソ、ユステ・ヨツィーテと続き、2026年に入ってからもアジー・ファッド、アワ・ファム、レオニー・フィービッチ、李夢、そして日本の山本麻衣が加わっています。WNBAの主力からヨーロッパの若手まで、獲得の網が明らかに広い。

競技フォーマットは、男女それぞれ6チーム、1チーム11人のロスターで5対5。シーズンは2027年1月に始まり4月に終わる短期集中型で、2週間単位のトーナメントをヨーロッパ、アジア、南米などで巡回開催します。開催都市はバレンシア(2027年3月12〜21日)と東京(2027年3月26日〜4月4日)が先行して確定しており、日本のファンにとっては他人事ではありません。

一方で、資金源をめぐる議論もついて回っています。サウジアラビアの政府系ファンドが関与しているとの報道に対し、リーグ側は投資家ではなく運営パートナーだと説明してきました。新興リーグにとって、この説明が今後どこまで受け入れられるかは無視できない論点です。

WNBAのオフシーズンを、誰が取るのか

ここからは筆者の見立てになりますが、ウェストブルックの起用は「認知度」以上に「交渉力」を買った人事ではないかと考えています。Project Bが女子選手に提示していると伝えられる年俸は100万ドル超で、これはWNBAの現行水準を大きく上回る規模です。そこにエクイティ、つまり将来の企業価値の分け前まで乗せる。カネの話を選手に納得させる場面で、実際にリーグと交渉し続けてきた元スーパースターの存在は効きます。

そしてタイミングが絶妙です。WNBAは労使交渉と選手待遇の議論が続き、オフシーズンにはUnrivaledやヨーロッパのクラブが同じ選手たちを取り合っています。Project Bの1月〜4月という日程は、WNBAシーズンの外側にきれいに収まる設計で、正面衝突を避けながら選手の年間収入を上乗せする形になっています。裏を返せば、選手の身体をどこまで使うのかという負荷の問題は、確実に議論の的になるはずです。

もう一つ気になるのが男子部門です。Project Bは男女両方の展開を掲げており、男子側の選手発表も進められてきました。引退直後のウェストブルックが戦略責任者として入ることで、この男子部門の設計が加速する可能性は十分にあります。女子リーグとして語られてきたProject Bが、どこかで「グローバルなバスケットボール興行」へと看板を掛け替えていくのか。そこは注視したいところです。

当面の視線はベルリンへ

なお、ウェストブルックが加わったProject Bの選手たちの多くは、いまベルリンにいます。FIBA女子バスケットボールワールドカップ2026が9月4日から13日までドイツ・ベルリンで開催され、16か国が参加します。日本代表はグループAでマリ、ドイツ、スペインと同組です。Project Bと契約した選手が世界の舞台でどんなプレーを見せるのか、その一つひとつがそのまま新リーグの宣伝材料にもなっていく——そんな構図が、今大会には重なっています。

2027年3月末には東京での開催も控えています。新しいリーグの実像を、日本のファンが自分の目で確かめられる日は、思っているより近いのかもしれません。

引用:https://fieldlevelmedia.com/news/project-b-adds-russell-westbrook-as-co-founder/

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