8月23日、バンクーバーのロジャーズ・アリーナで行われたエーシズ対テンポは、88対78でエーシズが勝ちました。ところが試合後にラスベガス周辺で語られていたのは、スコアではありません。第3クォーター、誰にも触れられていないのに崩れ落ちたナリッサ・スミスの左ひざです。勝ったのに負けたような後味という表現が、これほど当てはまる夜も珍しいと思います。
誰にも触られていないのに、左ひざが折れました
きっかけはジュエル・ロイドのスティールでした。エーシズはそのままトランジションに移り、ジャッキー・ヤングがゴールへカットしていたスミスへパスを送ります。そのパスを収めようとした着地が不自然になり、スミスは着地と同時に左ひざを押さえてコートに倒れ込みました。トレーニングスタッフの検査を受けたあと、両脇を支えられてロッカールームへ。左足にまったく体重をかけられない状態だったと地元紙は伝えています。接触が一切ない、いわゆるノーコンタクトの負傷という一点だけで、見ている側の血の気が引く種類の映像でした。
この日のスミスは19分の出場でフィールドゴール4本中4本成功、8得点8リバウンド3スティール1ブロック。いつも通り静かに、そして効率よく仕事をしていた最中の出来事です。負傷の程度は試合終了時点で判明しておらず、エーシズは追加検査の結果を待つ立場に置かれました。エイジャ・ウィルソンは「彼女には神の御手が置かれています」と語り、ベッキー・ハモンの口癖である「マン・ダウン、マン・アップ」を引きながらチームの姿勢を説明しています。
63.3%という数字が抜ける重さ
スミスは今季37試合に出場し、平均11.8得点6.4リバウンド。数字だけを並べれば主役級ではありません。ただ、フィールドゴール成功率63.3%はリーグ全体のトップです。エーシズのオフェンスは、ウィルソンにダブルチームが寄った瞬間にゴール下で確実に決め切る役割を彼女に預けてきました。放ったシュートの3本に2本が入る味方がいることと、いないことでは、ウィルソンにかかるディフェンスの重さがまったく変わります。得点ランキングに載らないタイプの選手が抜けたときほど、チームの構造は静かに歪むものです。
しかも今のエーシズは、フロントコートの余裕がある状態ではありません。ウィルソン自身、この日は腰の違和感で試合前にquestionable扱いとなり、出場が確定したのは直前でした。その状況で27得点7リバウンド7アシストを記録し、ヤングも21得点7アシストと3試合連続の20得点超え。12スティールで相手の15ターンオーバーを誘い、そこから17得点を奪う守備も機能しました。内容は悪くありません。それでも、勝った直後にベンチの空気が沈むという光景が現実に起きています。
残り5試合、そして9月4日のベルリン
この勝利でエーシズは26勝13敗となり、リーグ3位を維持しました。24勝13敗のドリーム、25勝14敗のフィーバーとは1ゲーム差。レギュラーシーズンは残り5試合しかなく、プレーオフのシード順を左右する数字がここに詰まっています。相手のテンポは11勝26敗で、マリーナ・マブリー、ブリトニー・サイクス、ニアラ・サバリー、アニーサ・モロー、マリア・コンデという得点上位5人を欠いていました。この5人でチーム平均87.5得点の8割を占めていたわけですから、条件としてはエーシズに大きく傾いていた一戦です。それでも前半は4点差。ハモンが「自分たちのベストバージョンをまだ探している最中です」と語ったのは、決して謙遜ではないでしょう。
スミスの状態が長期離脱を意味するのであれば、上位シードを争う残り5試合の設計を組み直す必要が出てきます。ゴール下の枚数をチェイニー・パーカー=タイアスやブリアナ・ターナーで埋めるのか、それともスモールラインナップに舵を切るのか。ハモンが次にどのカードを切るかは、そのままプレーオフの絵図につながります。
今後の試合情報
エーシズは金曜に、ホームのミシェロブ・ウルトラ・アリーナで再びテンポと対戦します。今季のシリーズ最終戦であり、リーグがFIBAワールドカップのために中断へ入る前の最後の一戦でもあります。ワールドカップは9月4日から13日までドイツ・ベルリンで開催され、エーシズからは山本麻衣が日本代表として参加します。スミスの続報は、この中断前後で最も注目されるニュースの一つになりそうです。

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