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「これはただのにらみ合いだ」——デューレンとピストンズが譲らない5年契約の執念

 

9月に入っても、東カンファレンス1位チームの主力センターが無所属のままです。ピストンズとジェイレン・デューレンの契約交渉が膠着したまま、トレーニングキャンプの月を迎えました。オールスターに選ばれ、オールNBAサードチームにも名を連ねた22歳が、ここまで長く宙ぶらりんにされる例はほとんど記憶にありません。金額の差は決して埋まらないほど大きくないのに、双方が一歩も動かない。この構図こそが、いまのNBAの財政ルールを象徴しているように見えます。

5年1億7500万ドルと2億ドル、隔たりは年500万ドル

ESPNのティム・マクマホンが伝えたところによると、ピストンズが提示しているのは5年で年平均3500万ドル前後の契約です。対するデューレン側は、代理人のチェイフィー・フィールズを通じて年平均4000万ドル超を求めています。5年総額に直せばおよそ1億7500万ドル対2億ドル。差は年あたり500万ドル、総額で2500万ドル程度です。

この3500万ドルという水準が、どれほどの金額なのかは市場を見ればわかります。来季3500万ドル超を稼ぐセンターは、ニコラ・ヨキッチ、ジョエル・エンビード、カール=アンソニー・タウンズ、ドマンタス・サボニス、ルディ・ゴベア、アルペレン・シェングンの6人だけです。3000万ドル超まで広げても、そこに加わるのはサイン&トレードでレイカーズへ移り4年1億3000万ドルを手にしたウォーカー・ケスラーくらいしかいません。つまりピストンズの提示は、リーグのセンター市場では明確にトップグループの値段です。

デューレン自身の数字も申し分ありません。昨季は22歳にして平均19.5得点10.5リバウンドを記録し、ピストンズの60勝を支えました。ただしプレーオフでは平均10.2得点8.5リバウンドと落ち込んでおり、球団側が最大級の投資をためらう材料はここにあります。

ローズルールが生んだ「最大値」の呪縛

話をこじらせているのは、オールNBA入りによってデューレンがローズルールの資格を得たことです。ルーキー契約明けの選手の上限は通常サラリーキャップの25パーセントですが、オールNBAなどの条件を満たすと30パーセントまで引き上げられます。デューレンの場合、30パーセントなら5年2億8700万ドルという計算になります。

しかしピストンズは、30パーセントどころか25パーセント(5年2億3900万ドル)にも届かない水準で踏みとどまっています。2022年ドラフト組で25パーセント上限に達したのは、チェット・ホルムグレン、パオロ・バンケロ、ジェイレン・ウィリアムズの3人だけで、いずれも今季4120万ドルを受け取ります。興味深いのは、ホルムグレンが昨季オールNBAサードチームに選ばれながら、そもそも30パーセントへの上乗せ条項を含まない延長契約に同意していたことです。エスカレーター条項を入れたウィリアムズとバンケロも、結果として条件を満たしませんでした。

背景にあるのは、新労使協定のエプロン規制です。近年、ボストンやオクラホマシティといった優勝経験チームですら、財政上の理由で主力を手放してきました。バスケットボール運営部門を率いるトレイジャン・ラングドンは、オーサー・トンプソンの延長交渉も同時に抱えています。ピストンズは今季、ぜいたく税ラインまで3650万ドルの余裕を残していますが、それはデューレンの決着次第で一気に消えます。若い中核を長く束ねるには、いま上限を払わないという判断が必要になる、という理屈です。

クオリファイングオファーという「核ボタン」

デューレンにも切り札はあります。1年967万ドルのクオリファイングオファーにサインすれば、来オフに完全なフリーエージェントになれます。ただしこれは、保証された1億7000万ドル以上を捨てる賭けです。1998年以降、クオリファイングオファーを選んだ1巡目指名選手は21人しかおらず、そのいずれもデューレンほどの金額を手放してはいません。

比較対象としてよく挙がるのが、2014年9月に550万ドルのクオリファイングオファーへサインし、翌夏バックスと3年5000万ドルを結んだグレッグ・モンローです。ただし当時のピストンズは、アンドレ・ドラモンドとの併用に懸念を持ち、長期の好条件を提示しませんでした。いまのデトロイトはケイド・カニングハム、トンプソンと並ぶ中核としてデューレンを見ています。状況はまるで違います。

だからこそ、交渉に関与していないある代理人はESPNに対し「これはただのにらみ合いだ」と語りました。落とし所は年3500万から3800万ドルのあたりだ、という見立てです。筆者も同感で、この差額でシーズンを棒に振るインセンティブは、どちらの側にもほとんどないように思えます。むしろ注目すべきは、オールNBAに選ばれた若手が最大契約を勝ち取れなくなったという事実そのものです。エプロン時代のNBAでは、実績が自動的に金額へ変換されなくなりました。

今後の見どころ

キャンプ開始までに決着するのか、それとも開幕まで引っ張るのか。ピストンズが他球団からのサイン&トレード打診をきっぱり断っている以上、行き先の選択肢は事実上ありません。ラングドンがトンプソンの延長とどう順番をつけるかも、金額に影響します。デトロイトは昨季60勝を挙げた東の1位チームで、今季も上位争いの中心にいます。センターが揃わないままキャンプが始まれば、そのこと自体がシーズン序盤の不安要素になります。決着の一報が出たら、金額よりも年数と条項に注目したいところです。

引用:https://www.espn.com/nba/story/_/id/49777992/nba-free-agency-detroit-pistons-jalen-duren-contract-standoff

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