オラディポの二つの夢と3年5か月の空白、NBAのGMに宛てた手紙に残る伏線

 

オフシーズンのニュースは契約と金額の話ばかりになりがちですが、9月1日にプレーヤーズ・トリビューンへ掲載された一通の手紙は、まったく別の場所から届きました。書き手はビクター・オラディポ、34歳。宛先はNBA全球団のゼネラルマネージャーです。移籍情報でもリークでもなく、本人が実名で「もう一度チャンスがほしい」と書いた文章が、この日いちばん読まれたNBAの記事になりました。読み終えたあとに残るのは、悲壮感ではなく、驚くほど穏やかな覚悟です。

3年5か月の空白と、42試合という壁

オラディポが最後にNBAのコートに立ったのは2023年4月、ヒートでのことでした。この試合で左膝の膝蓋腱を断裂し、そこから公式戦の出場はありません。今日まででおよそ3年5か月の空白です。

その前には2019年に右膝の大腿四頭筋腱を断裂しています。ESPNによれば、この最初の大怪我以降、彼は1シーズンで42試合を超えて出場したことが一度もありません。ドラフト全体2位という肩書きと、彼が実際に積み上げられた試合数の落差は、数字で見るとかなり残酷です。

一方で、本人はすでに動いています。7月のラスベガス・サマーリーグ期間中、各球団のフロント関係者を招いて非公開のプロデーを実施しました。健康状態への疑念を、言葉ではなく実技で潰しにいったわけです。そのうえで今回の手紙が出てきた順番には、意味があると思います。

母の夢から始まったキャリアと、頂点だったインディアナ

手紙は二つの夢の話で構成されています。ひとつは母親の夢です。1992年、双子を身ごもっていた母親は、ナイジェリア出身の偉大なセンターであるハキーム・オラジュワンからサインボールを受け取る夢を見ました。ナイジェリア移民の家庭で、教育こそが道だと信じていた両親のもとで、それは奇妙な予感として残り続けます。そして2013年のドラフト当日、全体2位でマジックに指名された直後、控室へ向かう廊下で母親は本物のオラジュワンと出会い、サインボールを手渡されました。デビッド・スターン最後のドラフトに、彼が初めて読み上げた指名選手として招かれていたからです。

キャリアの頂点は間違いなくペイサーズでの1年目でした。初のオールスター選出、MVP投票での得票、最優秀成長選手賞。チームも東5位に入り、2018年のプレーオフ1回戦でキャバリアーズを追い詰めます。3勝2敗で迎えた本拠地の第6戦、彼はトリプルダブルを記録して第7戦へ持ち込みました。手紙の中でも、おそらくキャリア最高の試合だったと本人が振り返っている夜です。

しかしその後は、断裂、復帰、バブルでの違和感、そして自己不信の連鎖でした。2021年1月のトレードについて、彼は泣くしかなかったと書いています。2023年の膝蓋腱断裂を「形を変えた祝福だった」と表現しているのが印象的で、失ったものを取り戻そうと急ぎすぎていた自分を止めるための出来事だった、という解釈です。そこからの3年間はリハビリとジム、そして本人の言葉を借りればセラピーの時間でした。

二つ目の夢は、4歳半の娘に向けられている

手紙の後半で語られるもうひとつの夢は、娘のナオミ、通称ノミについてのものです。ただしそれは、娘が何を成し遂げるかという夢ではありません。娘にどんな人間でいてよいと感じてほしいか、という話です。

彼は、21歳でスターンと握手した自分でも、25歳でレブロンと撃ち合った自分でもなく、いまの34歳の自分をこそ娘に見せたいと書いています。山から蹴り落とされ、登り直しては また落とされ、それでも登るのをやめなかった版の父親。笑われているかもしれないけれど、信仰と目的を手放さなかった版の父親です。そのうえでGMたちに向けて「自分の体はようやく整ったと信じています」と書き、勝てるバスケットボールがまだ自分の前にあること、ロッカールームに価値をもたらせることを続けて訴えました。

筆者がこの手紙をうまいと思うのは、売り込みの体裁を取りながら、実際には自己評価が驚くほど正確な点です。エースとして使ってくれとは一言も書いていません。求めているのは「証明する機会」であり、想定しているのは役割の限られたロースター枠です。34歳でオールスター2回、通算の実績は十分。契約規模を選ばないベテランで、健康さえ確認できれば拾う価値はある、という判断材料をきちんと揃えてきました。

現実的な行き先と、これからの見どころ

制度上、いまの時期に残っている入り口はトレーニングキャンプ招待、いわゆるエグジビット10やキャンプ契約です。各球団のキャンプは9月末に始まりますから、時間はあまり残されていません。一部の米メディアでは、古巣であるヒートが受け皿になり得るという論考も出ていますが、現時点で契約の合意は報じられていません。

もし彼がどこかのキャンプに現れたら、それは単なる復帰ニュース以上の意味を持ちます。手紙の中でオラディポは、チャンスをくれる球団があるかどうかは自分ではなくあなたたち次第だ、とはっきり書いています。次の一手は30球団の側にあるということです。自分のバスケットボールの物語は最初のページから最後のページまでラブストーリーだ、という結びが実際にどう回収されるのか、この秋のキャンプ情報は例年より少しだけ楽しみになりました。

引用:https://www.theplayerstribune.com/victor-oladipo-nba-basketball-letter-to-gms

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