WNBAが9月17日、FIBA中断期間を終えてレギュラーシーズン最終盤に戻ってきます。その直前に、ラスベガス・エーシズの主砲エイジャ・ウィルソンの背中の状態と、彼女がベルリンの世界一決定戦を見送った判断をめぐる議論に、チーム側が正面から答えました。欠場そのものよりも、その判断がどう受け止められたかのほうがはるかに大きな騒ぎになりました。そこにこのリーグの現在地が映っている、というのが第一印象です。
背中の異変と、最後の30分が語っていたこと
ウィルソンとフェニックス・マーキュリーのケルシー・プラムがアメリカ代表を離れることをUSAバスケットボールが発表したのは8月31日でした。代役にはワシントン・ミスティクスのキキ・イリアフェンとソニア・シトロンが入り、シトロンにとっては代表デビューの舞台となりました。プラムは2026年シーズンの残り試合も欠場しています。
ウィルソンについては、しばらく万全ではなかったと関係者がESPNのアレクサ・フィリッポウに明かしており、過密な世界大会の日程が状態を悪化させかねないという懸念がありました。実際に発表前の1週間で、彼女は背中の問題によりエーシズの負傷者リポートに2度掲載されています。ただし試合を欠場してはおらず、中断前最後の試合でも30分プレーしました。この「リポートには載るが休まない」という数字の組み合わせが、後の議論の火種になります。
さかのぼれば、コミッショナーズカップ決勝でニューヨーク・リバティに85対93で敗れた一戦を右脚の負傷で欠場し、7月3日のシカゴ・スカイ戦、7月5日のインディアナ・フィーバー戦も続けて欠場していました。今季の彼女は、すでに何度も体と相談しながらコートに立っていたわけです。
「不安なのでは」という批判と、コーチが持ち出した比較対象
騒ぎが大きくなったのは、元ESPNのリンダ・コーンが、欠場の背景は健康問題ではなく「不安」ではないかと自身の番組で示唆してからでした。背中が痛いなら直近7試合のうち6試合で30分超を戦えたのはなぜか、という趣旨の指摘です。これに対してマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの娘であるバーニス・キングが、公の謝罪と撤回を求めるべきだと反発し、議論はバスケットボールの外側まで広がりました。
エーシズを率いるベッキー・ハモンの反論は、論点をずらさず一直線でした。ウィルソンには健康上最善と思う判断を下す権利があるとしたうえで、「男子はいつもこうしています」と述べ、いま行われている男子の世界大会の代表メンバーを言えるかと問い返しています。レブロン・ジェームズが最後にFIBAワールドカップに出たのは2006年の日本大会、ステフィン・カリーは2014年が最後です。男子のスター選手が休養と五輪を優先するのは既定路線で、誰もそれを咎めません。同じ選択を女子のMVPがすると「不安」と言われる。ハモンが突いたのはその非対称性でした。
ウィルソンは2022年のワールドカップで大会MVP、2024年のパリ五輪でも最優秀選手に選ばれた、代表での実績が最も厚い選手の1人です。その経歴を持つ選手だからこそ、1回の欠場が「逃げ」と読み替えられてしまう。皮肉な構図だと思います。
残り4試合、エーシズが取り戻したいもの
球団側の姿勢もはっきりしています。GM兼社長のニッキー・ファーガスは、このリーグには相当な消耗があり選手に多くの期待がかかると前置きしたうえで、最も大切なのは選手の健康だと語りました。8月27日にナリッサ・スミスの今季絶望が正式に決まったことで、ウィルソンがインサイドで受ける守備の圧力はさらに増す見通しでした。そこで8月29日に201センチのカラーニ・ブラウンを獲得しています。
ここが今後の焦点だと考えます。エーシズの課題は、ウィルソンが出られるかどうかではなく、彼女に頼る時間をどれだけ削れるかです。8月20日のコネティカット・サン戦に勝つ前、6試合で2勝しかできていなかった時期のように、彼女の可動域が落ちた瞬間にチーム全体が沈む構造のままでは、プレーオフの短期決戦は戦えません。ブラウンの加入とスミス不在を、ローテーションの再設計という形で消化できるかどうか。中断明けの4試合は、順位を守る戦いであると同時に、その実験の時間でもあります。
ハモンは、再開後の残り4試合でウィルソンがチームを助けられる状態にあると見込んでおり、その4試合を勝ち切れば3番手のシード維持が視野に入る位置にいます。ダウンタイムの間も目を離さずに見ていると話しており、起用は慎重に進むはずです。
再開後の見どころ
WNBAは9月17日に再開し、エーシズはレギュラーシーズンの残り4試合に臨みます。注目したいのは、ウィルソンの出場時間が中断前の30分台からどこまで抑えられるか、そしてブラウンとのフロントコート併用がどれだけ機能するかです。放送予定や日程は、リーグ公式サイトとエーシズ公式サイトで確認できます。順位表は最終週まで動きますので、シード確定の行方とあわせて追うと面白いはずです。

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